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Valkyrie of Moonlight~月明りの剣と魔法の杖~   作者: 剣世炸
Episode8「聖遺物を求めて」
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第55話~ロザンとの出会い~

 アコード達と別れた私、レイス、リーサの3人は、私の生家が燃やされた後、両親が仮住まいとしていた、裏山の中腹にある物置小屋へと向かっていた。

「ちょっといいか?」

「レイス、どうしたの?」

 小屋へと向かう山中で、レイスが私に問いかけ、その姿を見たリーサも、軽く首を傾げる。

「アルモのご両親は今もご健在で、三日月同盟(Crescent Alliance)サプコッタ支部の部員、ということで間違いないか?」

「まぁ、大筋はそういうことかな………私の両親は、サプコッタ支部に属してはいるけど、指揮命令系統的には、本部からの指示を受けていたみたい。実際に父は、本部にいた予言の巫女の神託で、赤ん坊だった私と、月明りの剣を見つけ出したそうなの」

「本部直属の遊撃部隊、といったところなのでしょうか?」

「リーサの言う通りね。ただ、現本部が、総帥になったザイールだけで運営されている今、両親がどこの所属で、どういう動きをしているのかは、見当がつかないわね…」

「アルモの精神感応テレパシーで連絡を試みることはできないのか?」

「!!!」

 私はレイスの提案に、目から鱗が落ちた。

「確かに、精神感応テレパシーを使えば、この周辺に父さんと母さんがいれば状況を確認できるし、応答がなければいないことになるわ!なんで、アコード達と離れる前に、そのことに気が付かなかったのかしら…」

「離れてしまったものを後悔しても、仕方ありませんわ。それよりも、レイスの意見をすぐに実行した方がよろしいのではなくって!?」

「そうね!早速やってみることにするわ」

 私は右手の中指と薬指をくっつけ、右の蟀谷に指先を当て、意識を集中させた。

 すると………

“ジジッ………ジジッ………”

 いつもなら、キィーンという高音と共に意識世界の海原が広がって、通信を試みる対象を探すビジョンが見えてくるのだが、今回はどういった訳だか、その意識世界が広がらず、いつもの高音も聞こえてこない。

 意識の集中ができていないと感じた私が集中しようとし過ぎて、眉間にしわが寄る。

 それを見たレイスとリーサが、心配そうに私の顔を覗いている。

「アルモ………どうしたんだ!?」

「ご両親が、見つかりませんの?」

“ジジジジジジ………ジジジジジジ………”

“プツン………”

 高音に変わる雑音が急に強くなり、次の瞬間には、私は精神感応テレパシーの詠唱を中断させてしまった。

「ハァ………ハァ………」

「アルモ!大丈夫か!?」

「アルモさん……」

「………とりあえずは大丈夫だけど…」

「一体、何があったんだ!?」

「いつもの精神感応テレパシーの様子ではありませんでしたわね…」

「多分、私の精神感応テレパシーは、妨害されているわ」

「えっ!?」

「妨害………なるほど。教団の将軍なら可能、という訳か…」

「レイス、アルモ。分かるように、説明してくださいまし!」

「魔法にはいろいろな系統のものが存在するのだけれど、他者の魔法を妨害するものが存在するわ。今まで、将軍たちとの戦いで出くわしたことはないのだけれど…」

「我々の動きを、今回は先読みされている…」

「そう見て、間違いないと思うわ」

「つまり、私たちの動きが先読みされていて、この一帯に、私たちの魔法を妨害するような魔法が張り巡らされている、ということですの?」

「その通りよ」

「…ということは、アルモの精神感応テレパシーによって…」

「ええ。相手に私たちの位置が、間違いなく特定されたわ」

 私の言葉が終わるか終わらないかのところで、その場にいる全員が自らの得物を構え、臨戦態勢を整える。

 そして、次の瞬間…

“ザザッ…”

“ギィン!!!”

 後方から殺気を感じ取ったレイスが、まだ見ぬ相手の切っ先を先読みし、自らの得物でかろうじて攻撃を防ぐ。

 そして、私の後方からも殺気は感じ取れたものの、レイスに向けられたそれよりも格段にスピードが早かったためか、私は敵の攻撃を防ぐことはできなかった…はずだった。

“ガギィン!!”

 私の得物が敵の切っ先から明後日の方向を向いていたその時、私の背後に回り込み、それを防ぐ人影が、超スピードで私の体に振り下ろされる武器の攻撃を防いでいたのだ。

“ガギィン!!”

 更に、一人では敵の攻撃を支えきれなくなりそうになっているレイスに、くないという飛び道具を逆手持ちしたリーサが加勢に入り、今にもレイスに触れそうになっている敵の得物を押し返そうとする。

「我の攻撃を、防いだだと!?」

「ぐぬぬぬぬぬ!!」

“シュゥゥゥゥゥ…”

 不意の一撃を私たちに避けられ、致命傷を負わすができなかった見えない敵が、透明化の魔法を解いたのだろう。徐々に、敵の全容が明らかとなっていく。

 更に、敵の攻撃から私を守ってくれた人影が、私に向かって口を開く。

「やはり、君だったか。アンジャナ!!会いたかった………」

「あなたは…一体!?」

「貴様!!我の攻撃を防ぐとは、何者ぞ!?」

 透明化の魔法が完全に解け、私のことをアンジャナと呼んだ青年に、ワイギヤの将軍、メルクーリュスのクビラが言い放つ。

「私はロザン。灰色の大地の者だ!!」


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