第53話~到着~
「…ご報告いたします」
「どうした?急報か?」
「セレスタ大陸に侵攻していたインドゥーラ将軍が、アルモら反逆者共によって打ち倒されたとのこと」
「…やはり、な………」
「…将軍!?」
「いや…何でもない。本部の守りは、五虎将を残せば良いから………メキラ将軍とアンディラ将軍に伝令!!水銀将軍クビラと共に、反逆者共を倒しに行くとな!!」
「御意!!」
“シュ…”
伝令がクビラの前から姿を消す。
「反逆者共よ!今度こそ、そなたたちの首、もらいうける!!」
“バサッ”
その場に立ち上がりマントを翻すと、クビラは自室から姿を消した。
***
“アルモ様、アコード様、そしてお仲間の皆さま、間もなくサプコッタ大陸に到着します”
居住区に設けられた各々の居住スペースで、思い思いのことをしていた俺たちに、ステラによる館内放送が鳴り響いた。
数分後、仲間全員がコックピットに集まり、所定の席に座ると、それまで漆黒の翼の先端映像を流していたモニターに、メイド服姿のいつものステラが映し出された。
「ステラ、サプコッタ大陸の様子についての検索結果を報告してくれ」
“はい、アコード様。サプコッタ大陸の三日月同盟支部にアクセスをしたところ、反応がありませんでした。支部の機能が何らかの形で麻痺しているか、あるいは支部そのものが消滅してしまっているのか…”
「アルモ。ご両親は、いまだにサプコッタ大陸に?」
「ええ。そのはずだけれど………よくよく考えたら、私、父からも母からも、サプコッタ大陸の支部の話は、一回も聞いたことがなかったわ…」
「もしかしたら、そもそも現代の三日月同盟において、サプコッタの支部は存在していないのかも…」
“サリット様のおっしゃる通りかも知れません。クレス様とワイギヤ様の時代に存在したサプコッタ支部の位置と、皆さんがスレスタ大陸で動かれていた時にサプコッタ大陸に飛ばした小型偵察機が持ち帰った映像の解析結果を照合したところ、過去に支部の存在していた場所は、現在は湖の底に沈んでいることが判明しています”
「小型偵察機?」
“はい。この船にも施されているステルス機能を有し、撮影機能を搭載した、手の平サイズの偵察機です。離れた場所を撮影し、映像データとして持ち帰ることができます”
「離れた場所を、私たちの目の代わりとして見ることができる、と解釈すればよろしくて?」
“リーサ様のおっしゃる通りです”
「いつの間に、そんなものをこしらえたんだ!?」
“元々、この船に常備されていたものなのですが、使うには整備が必要で、皆様がスレスタ大陸に行ってらっしゃった間に整備を完了させ、サプコッタの地へと送り出していたのです”
「なるほどね………」
「湖………湖………ね」
「アルモ?どうしたんだ!?」
「ステラ、過去に支部が存在していた座標を、地図に示してもらえる!?」
“お安い御用です!”
モニターに映っていたステラが消え、代わりに世界地図と共に、赤い点滅によって、サプコッタ大陸の位置が示される。
「!!間違いないわ。その湖は、私の生家のすぐ近くにあるものだわ!」
「となると、アルモのご両親が、何かサプコッタの支部について、情報を知っているやも知れないな…」
「生家は父さんたちとクビラが戦った際に燃えてしまったけど、まだ近くに居を構えているはず。サプコッタ大陸に到着したら、私の瞬間移動で元生家があった辺りまで移動しましょう!」
「ステラ。聞いた通りだが、アルモの瞬間移動は、魔力と共に体力の消耗も激しい魔法だ。いざという時、アルモが戦えないのはまずい。このまま漆黒の翼で座標軸の近くまで移動する場合、あとどの位を要する?」
“全速力で飛んで、1日程度が必要かと思われます”
「座標軸の位置が、スレスタ大陸に近かったことが幸いしたな、アコード」
「ああ。それなら、アルモの瞬間移動を使わず、このまま漆黒の翼で近くまで移動した方が、後々のことを考えれば良いだろうな。アルモも、それで良いか?」
「君がそう言うなら、私に異存はないわ」
「他の皆も、それで良いか?」
俺の言葉に、仲間全員が頷く。
「ステラ。このまま、その座標軸まで漆黒の翼を飛ばしてくれ」
“アコード様、かしこまりました。皆さま、到着まで居住区でお過ごしください”
しばらくしてサプコッタ大陸に差し掛かった漆黒の翼は、ステルス機能を発動して周囲の風景と同化し、周囲からは見えなくなった。
そしてその翌日、俺たちはアルモの生家が近くにあったという湖の畔に到着していたのだった。