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Valkyrie of Moonlight~月明りの剣と魔法の杖~   作者: 剣世炸
Episode8「聖遺物を求めて」
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第51話~統一~

“ギィン!!”

「何…だって!?」

 月明りの剣を地面に放り出し、分身と再び一つになったインドゥーラ本体からの強撃を覚悟した私だったが、その攻撃は二人の女性によって防がれていた。

「レイス!!それに、リーサも!」

「クレスの子孫ともあろう者が、情けない姿だな!」

「レイス、仕方ありませんわ。誰しも、愛する者を盾にされてしまっては、無力になるというもの。いくら英雄の子孫だからといって、アルモさんも人の子なのですわ」

「ごめんなさい…」

“ザザッ”

“カチャリ”

「でも…」

 インドゥーラの分身が消え、アコードの元に彼の親友2人がいることを確認した私は、放り出した月明りの剣を手早く拾い上げると、目の前に構えた。

“ザザッ”

 私の姿を確認した2人も、私の両サイドに飛び退き、インドゥーラと距離を取った。

「ほぼ全魔力を消費して出した分身アヴァターを戻したのが運の尽きだったようね。丸腰の私を本体だけで葬り去っていれば、私の仲間の援軍にも対処できたでしょうに。お生憎様だったわね!」

“ザザッ”

 私が地面を蹴ると同時に、レイスとリーサも一歩遅れて飛び出した。

「魔力がないとは言え、我はワイギヤ教軍の将軍であるぞ!!罪人共に負けるはずがなかろう!!」

 インドゥーラは、目の前に光のヴァジュラを構えると、私たち3人の攻撃に備えて身構えた。

 だが、その時だった。

“ピキッ…”

「な………い…っ…た………い………」

 光のヴァジュラを目の前に構えたまま、インドゥーラの動きが、見えない力によって拘束されているかの如く、ピタリと止まった。

 振り返ると、リーサが私の後ろを走りながら、握りしめた左手の中に、右手の人差し指を差し込んでいるように見える。

 明らかにリーサの仕業と判断した私は、インドゥーラに突撃するのをやめ、その場で立ち止まった。

 それを見て、レイスとリーサも歩みを止める。

「金縛りの術。成功ですわ!」

「リーサ…君は、また私の知らない忍術を…」

「あら、いいじゃありませんか!好きな相手には、手の内は見せないものですわよ」

「………金縛りの術とは、相手の動きを封じる術、ということかしら!?」

「ええ、その通りですわ。ですが…」

 リーサの顔を見ると、右の蟀谷こめかみから一筋のしずくが滴り落ちる。

「…あまり長い間は、術の発動が難しい、ということだな…」

「ええ、レイス。ですから………」

「分かったよリーサ。アルモ!!」

「ええ!!」

“ザザッ”

“ザザッ”

 私とレイスが、その場の地面を同時に蹴り上げる。

「………やっ……………や………め………」

“ギィン”

“ブゥン!!”

 私の月明りの剣と、レイスの一撃が、金縛りにあっているインドゥーラを確実に捕らえた。


***


“ザッザッザッ…”

“ピタッ”

 後の世で『バルデワ戦役』と呼ばれることとなる、セレスタ軍と(インドゥーラ率いるワイギヤ教軍が裏で糸を引いていた)ザパート連合公国軍の戦いを生き残った両軍の兵は、この戦いで命を落とした騎士たちの弔いの作業を終え、月明りの鎧が安置されていた、セレスタ大陸中央部に集結していた。

“パカラッパカラッパカラッ…”

 毅然と整列した兵士の前を、白馬に跨った一人の騎士と女性が悠然と闊歩し、中央部に到達すると先に騎士が飛び降り、後からその騎士に手を取られて、女性が地面へと着地する。

 その中央部には、俺とアルモ、そして仲間たちの姿もあった。

「親愛なる我が国の兵たちよ!!!」

 白馬から降りた騎士が、両軍の兵に向かってその雄大な美声を轟かせる。

「「「オーーーー!!!」」」

 それに呼応するように、両軍の兵全員が勝ちどきのような声を、周囲に轟かせる。

「インドゥーラ将軍率いるワイギヤ教軍の脅威は、この地から去った!!」

 その騎士が、俺たち全員に一歩前に出るよう促す。

「皆の活躍もさることながら、その脅威を払ったのは、ここにいるクレスの子孫アルモ殿とその仲間たちの功績である!!」

「英雄アルモ!万歳!!」

「「英雄アルモ!万歳!!」」

「「「「「英雄アルモ!万歳!!」」」」」

「何だか恥ずかしいわね…」

「まぁ、いいんじゃないか?」

 いつまでも止まない万歳コールを、騎士が右手をかざして静止させる。

 そして、今度はその隣にいた女性が一歩前に出て、兵士たちに語り掛けた。

「セレスタ軍の兵士たちよ!私は、ザパート連合公国の盟主アンティムである!」

「「「オーーーー!!!」」」

 先ほどと同様、両軍の兵全員が勝ちどきのような声を、周囲に轟かせる。

「このセレスタ大陸は、元々一つの国だった。だが、セレスタ王家の過去の暴挙により、セレスタ王国とザパート連合公国の2つに分裂してしまった歴史がある」

「だが!!!」

“バサッ………”

 それまで、その女性が羽織っていた全身を覆い隠すようなマントが脱ぎ捨てられると、セレスタ王家の紋章が刺繍された、王妃のローブを纏った姿が現れた。

「ザパート連合公国の盟主として宣言する!本日をもってザパート連合公国は解散。各公国は新生セレスタ王国に併合。私は、セレスタ陛下の妃となる」

「現在、領事が空白となっている都市バルデワを除き、連合公国全ての領事から、この決定について同意を得た。今後、領事は新生セレスタ王国の一領主として、そして領民も陛下の臣民として、今後も現在と同様の地位・待遇が約束されている」

「この約束が反故にされた場合、私は、夫である陛下と対峙してでも、現公国に生きる全ての人の、幸福に生きる権利を保障していくと約束しよう!」

 その女性の発言に苦笑しながらも、騎士が話を続ける。

「我が妃が言った事。余は生涯忘れないであろう!余はここに、ザパート連合公国盟主のアンティムより、公国に…いや、我が領土に生きる全ての民の幸福を約束し、新生セレスタ王国の建国を、ここに宣言する!!!」

「「「オーーーー!!!」」」

 再び兵士たちから上がった勝ち鬨は、しばらくの間、鳴り止むことはなかったという。

 それから数日を経て、旧セレスタ王国首都と、旧ザパート連合公国首都で、新生セレスタ王国国王の戴冠式並びに婚姻の儀が執り行われ、アンティムは正式にセレスタ王の妃となり、セレスタ大陸は再びセレスタ王家により統一されたのであった。

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