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Valkyrie of Moonlight~月明りの剣と魔法の杖~   作者: 剣世炸
Episode8「聖遺物を求めて」
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第49話~危機~

“ザザッ”

 挑発に乗ったインドゥーラが本体であると認識したアルモも、自身に向かってくるインドゥーラに向かって突撃を繰り出した。

“ギィン”

 互いの突撃を互いの刀身で受け止めた両者の間から、けたたましい金属音が鳴り響く。

「………さすがに我が教団がS級指名手配にすることの程はある、という訳だな!!」

「…(これは………これまで戦ってきた、どの将軍よりも強いわね…)」

“ブゥン”

 このまま膠着状態を維持しても埒が明かないと判断したアルモが、力任せに月明りの剣を前に押し出し、インドゥーラ本体を前方へ追いやる。

“カチャリ”

“カチャリ”

 そして、二人は息を切らすことなく、それぞれの得物を構えた。

「…」

「…」

“ヒュゥゥゥゥゥゥ…”

 隙をうかがっている両者の間に、一筋の風が流れる。

“ザザッ”

“ザザッ”

 そして、両者は同時に地面を蹴った。

“ギィン”

 再び、互いの突撃を互いの刀身で受け止めた両者の間から、けたたましい金属音が鳴り響いた。

「………ここまでの力を持っているとは……」

「…分身して、魔力を使い尽くしたことを、後悔するといいわ!!」

「……我が、お前に魔法を使う余力を与えるとでも!?」

「さぁ、どうかしらね!!」

“ブゥン”

 先ほどと同じように、アルモが力任せにインドゥーラ本体を前方へ押しやる。

 そして、その隙にアルモがウィンクをすると…

“キュルルルルーーー”

 小さな光の塊が地面から飛び出し、アルモにサインを送る。

「その光の塊は…まさか!!」

 ようやく体制を整えたインドゥーラが見据えた先には、アルモが呼び出した光の塊がいた。

「力だけなら、あなたと私は互角…いや、あなたの方が上でしょうね。でも、今のあなたには魔力がない。一方で、私は魔力をほとんど使っていないわ。その魔力、使わない手はないのではなくて?」

『ホーリネス アルマ!!!』

 アルモが左手から放った魔法は、ウィンクで呼び出した小さな光の塊、即ち光の精霊ウィル・オ・ウィスプを介してアルモの剣に吸収され、剣に光の力が宿る。

「その魔法は、お前の母親が使っていた、武器に力を与える魔法…しかも、詠唱なしで精霊を呼び出し、魔法を放つとは………」

「さぁ、これで形勢は逆転したわ。将軍インドゥーラ!覚悟しなさい!!!」

「魔法一つで形勢逆転だと!?笑わせてくれる!覚悟を決めるのは、アルモ、お前の方だ!!」

“ザザッ”

“ザザッ”

 そして両者は、同時に地面を蹴った。

 だが…

“ギィン!!”

“ピキ………ピキピキピキ………バリィン!!”

「なんだと!?」

“ザザッ”

 次の瞬間、インドゥーラの持つ光のヴァージュラにヒビが入ると、それはあっという間に槍全体へと広がり、まるでガラスが割れる時のような音を奏でると跡形もなく崩れ去った。

「………我にアヴァターを使わせ、ヴァージュラをも出させた挙句、それを破壊せしめたのは、アルモよ、お主が初めてだ。その力、伊達ではないことを、素直に認めよう。だが、こうすると、どうなるかな!?」

 アルモの力を素直に認めたインドゥーラは、分身の方に体を向けると、右手の中指と人差し指を蟀谷こめかみに当てた。

“ブツブツブツブツブツ……………”

 そして、アルモの耳に入らない程度の早口で、何やらつぶやき始めた。

「!!!いけない!」

 その動作から、分身に精神感応テレパシーを送っていることにようやく気付いたアルモが、アコードに向かって精神感応テレパシーを放った。

「“アコード!逃げてぇぇ!!!!”」

 

***


「“アコード!逃げてぇぇ!!!!”」

 アルモからの精神感応テレパシーを受け取った俺だったが、その警告に応えることは叶わなかった。

 インドゥーラの分身は、本体からの精神感応テレパシーを受け取ると、俺の間合いに入り、瞬時に俺の背後に回り込んだ。

“トン…”

 そして、手刀で俺の首の後ろに軽く一撃を入れると、次の瞬間には俺の意識は飛んでしまった。

“バサッ…”

 さらに、意識を無くした俺を、インドゥーラの分身が羽交い絞めにした。

“タッタッタッタッ…”

 羽交い絞めにされた俺の元に、インドゥーラ本体が近づいてくる。

“キィン…”

 そして、インドゥーラ本体は分身から光のヴァージュラを受け取ると、その切っ先を俺の喉元に突き立てた。

「さて、教団に上がってきた報告によれば、S級指名手配犯には愛する男がおり、唯一の弱点がその男であると言う」

 インドゥーラが光のヴァージュラの切っ先を少しだけ横にスライドさせると、俺の喉元に水平方向に数センチの傷がつき、血がにじみ出る。

「その人を………アコードを傷つけないで!!」

 それまで強気の態度で応じていたアルモが一転、目に涙を浮かべ、俺を傷つけないようインドゥーラに懇願する。

「伝説の英雄………いや、罪人の子孫も、己の感情には敵わない、ということか………我がこの男を傷つけるか否かは、お前の行動にかかっている」

「………分かったわ…」

“カン………”

 アルモが右手の力を緩める。

刹那、その場に月明りの剣が落下し、乾いた地面にぶつかると、アルモに敗北を悟らせるかのごとく、乾いた金属音を奏でた。

「…これで、終いだ!!」

“ザザッ”

“バサッ”

 次の瞬間、インドゥーラの分身が消え、その場に俺が投げ放たれると同時に、アルモにとどめを刺すため、本体が突撃を繰り出した。

 だが………

“ギィン!!”

「何…だって!?」

 そこには、倒れた俺を介抱する男女と、インドゥーラのアルモへの一撃を二人がかりで食い止めた2人の女性の姿があった。

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