ここはどこ?
「……おい!大丈夫か?聞こえるか?」
身体が揺らされる。
揺らされる?
あれ?私夜勤中だったっけ?
仮眠時間寝過ごした?
大変起きなきゃ!
でも、瞼が重たいよ…
「おい!目を開けろよ!生きてるのか?」
えっ?男の人の声がする。
待って、私家に居たはず!
と思ったところで目が開いた!
「いや~!」
目を開けるとドアップの男の人の顔がある!
思わず両手で押し返してしまった!
「おっ生きてるな!」
そう言ったのは20代位の男の人。
やたらと整った顔立ちをしてらっしゃる。
髪の毛は茶色で短髪。
ただね、服装が……なんて言うか騎士?
いや、イメージだけどね。ホントに騎士とか日本に居ないしね。(笑)
とにかくなんか鉄製の鎧みたいの着てるし、剣の様なものも持っている。
そして周りを見渡すと…森の中!
「えっ!ここどこ?なんで森?」
思わず呟いてしまった。
「ここはソフィーの森だよ。君はなんでここに居たの?」
騎士の様な格好の男の人が不思議そうに私を見ている。
そして自分の格好を見て愕然とする。
「私パジャマじゃん!」
そして考える…
私家で寝てたよね?
そして気が付けば見知らぬ場所にいる。
そして見知らぬ騎士の格好のイケメンが私を見ている。
どんな状況だよ!
思わず取り乱してしまった…
だってしょうがないよね。
目覚めたら知らない場所に知らないイケメンだもの!
とりあえず返答しなきゃだよね?
「えっと…私愛川優梨と言います。ここはソフィーの森という所なんですね。
ちょっとその地名に覚えが無くて……どうやら知らないうちに知らない場所に来てしまったみたいです。」
正直に言うしかなかった。
「ユーリか。いい名だな。身体はもう大丈夫なのか?随分反応が無かったから心配したよ。
知らない場所に……って事は迷子ってことなのか?」
迷子……確かに迷子だわ…24にもなって迷子とは情けない。
「身体は……大丈夫そうです。」
関節を確認しながら答える。
反応が無いのは…寝てたから?恥ずかしいので内緒(笑)
「迷子か?と言われると……お恥ずかしいですがそのようです。
正直にこれからどうしていいかも……」
最後は消え入るような声になってしまった…
イケメンのお兄さんは思案顔……しばらくして
「俺は任務が終わって帰宅途中なんだが……俺のところに一緒に来るか?」
「いいんですか?」
正直右も左もわからない現状で置いていかれても困ってしまう。
私も必死だった。
「俺の事はアルって呼んでくれ。さぁ急ごう。もうすぐ夕暮れだから。」
そう言うアルの顔はとてもにこやかだった。
一緒に歩くと数メートル先に黒い綺麗な馬が木に繋いであるのが見えた。
アルは馬に跨ると、私に手を差し出してきた。
その姿はまさに王子様のよう……
そんなメルヘンな事を思いながらほっぺたが熱くなるのを感じた。
サッと手を取るとあっという間にアルの腕の中の私……
男の人とこんなに近くになる事なんて最近無かったからドキドキしてしまった。
でも恥ずかしいからなるべく平静を装う私。
「ユーリは馬は慣れていないのか?」
アルが聞いてきた。
「牧場で小さい時に乗せてもらった位かな?大人になってからはないです。でも馬は大好きです!目がとっても綺麗だから。」
「牧場?よくわからないが初心者って事だな?
あまり急がないようにするがしっかり捕まっていろよ!」
そう言い終えないうちに馬が走り出す。
とりあえず落ちないように鞍の部分をしっかりもつ。
アルは私を抱き抱えながら手網をうまく操っている様子。
はじめこそ密着度に照れていたが、馬から見る景色や風に意識が集中して余り気にならなくなってきた。
「素敵だわ。」
ちょうど夕暮れ時だろうか?山が黄金色に光っている。
「そんなに珍しい光景か?」
アルの声でふっと顔を上げる。
すると思った以上に近くに顔があるではないですか!
「あっ近い……」
ばっと恥ずかしくなって下を向く。
「ユーリ?どうした?」
アルは平気らしい。イケメンはこんなシチュエーションに照れたりはしないらしい……
「ごめんなさい。余りに近かったから……」
思わず小さな声でつぶやく。
「ユーリは可愛いな。」
ニヤリとしながらアルが言う。
「もうからかわないでください!」
と言って横を向く。
「あと少しで着くぞ。」
アルがそう言って5分後、私は驚愕する事になる。