逃亡
――スーン城 王室――
「陛下、あの勇者を街に降ろしても良かったのですか? 下手をすれば我々の計画がバレてしまうかも知れません」
アカネを送り届けたあと、大臣が言った。
「うむ、下手に怪しまれるよりはマシだ。それに尾行も送った。アイツがもし何かしようとしたら脅すなり何でも良いから二度とそう出来ないよう教育すれば良いだけだ」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる国王。
「さすが国王様、言うことが違いますね」
「お父様」
「ん? 何だへリアよ」
「私も街に降りてみたいわ」
国王の娘へリアが退屈そうに言った。
「お前があんな下民の所へ行く必要は無い」
「たまには下民どもの料理も食べてみたくなるのよ。何故かは分かりませんけど」
「お前があんなものを食べるのではない」
「分かりましたわ」
やはり気まぐれだったのか、あっさりと興味をなくしたへリア。
「それより勇者の様子はどうだ?」
「今は武器や干し肉を買っているそうです」
「そうか、アイツにとっては珍しいものなのかもな。引き続き様子を見ておけ」
「承知致しました」
▽
ーーーさて、尾行をどうするかな……とりあえず巻けそうにないから相手の動きを封じようか
ドキドキワクワクの俺は早速仕掛ける。
まず俺は角を曲がり、
「隠密」
そう唱えると、だんだん身体と服の色が薄くなりそして、完全に透明になった。
「おぉ……」
ーーーかなり便利だぞこれ
その後、角を曲がってくる尾行を確認すると、
「なっ、いない!?」
当然、戸惑っていた。
そこで……
「睡眠」
「うぅ」
相手を眠らせる効果だと推測した俺は、それを唱えた。すると尾行は、足がふらついてバランスがとれなくなってきた。
「ヘッ! たった一人で尾行はするもんじゃないぜ」
ーーー後は逃げるだけ
ゴツン
「あ」
なんと尾行が倒れる先には木でできた箱があり、そこに頭をぶつけた。
「うっ、なんだ?」
「やっべ!」
折角眠らせることが出来たのに、衝撃で起きてしまった。
「なっ、お前一体何をした!」
ーーーくそっ、魔法が解けた!
「クソっ、睡眠!」
「ちっバレては仕方ない。陛下に報告せねば」
「なにっ!?」
ーーー同じ相手には聞かないのか!? まずい状況になったな……仕方ない
「毒」
「うぐっ、お前今度は何を……」
尾行は苦しみだし、そのまま地面に倒れた。効果は、まぁ毒である。どのような種類の毒なのかはしらん。
ーーー俺のスキルに確か〔小〕って書いてたから死ぬことはないだろう
しかしすぐに効き目が切れてしまうかもしれない
ーーー動きを封じて時間を稼ぐか
「ま、待て……」
俺は直ぐにロープを買ってきて尾行を縛り上げた。
「ぐ、タダで済むと思うなよ……」
そう言い、尾行は俺を恨めしげな目で睨みつけてきた。
ーーーちょっ、怖いんすけど……
ひとまず、尾行を人気のないところに移動させた。
ーーーさて、どうしようか。まさか回数制限が有るなんて思っても見なかったぜ
門には多分見張りがいるだろう。見つかったら厄介だ。逃げるには隠密がほぼ必須になる。
ーーーうーん、どうするかなぁ、
「隠密」
俺はダメ元でそう唱えてみる。
……だんだん身体が透けてきた。
「おっ、出来た!」
ーーー時間が経つと戻るのか。てことは……
「睡眠」
尾行に再び睡眠を唱えると、先程まではもがいていた尾行だったが、だんだん大人しくなり、そして眠りについた。
「よしっ、成功だ」
ーーー魔法が解ける前に早く逃げないと!
俺はすぐに門に向かい走りだした。
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