捕縛!
でかでかと旗に書かれている、闇の組織を目指しそこへ向かう。
気配を消し、加えて透化もあるため、バレることは無い。
闇の組織は、五人の集団だった。しかし組織と名乗るということは、おそらく多少の規模はあるだろう。
先頭の一人が、後ろの四人へ何か伝えている。
このすぐ先には、山から降りてきた狩りから帰る途中の村人二名が歩いている。
襲うタイミングを見計らっているのだろうか。
見るからに怪しいが、一般人という可能性もごく僅かだがあるので、迂闊に動けない。
かと言って確証を得るために村人を襲わせたくない。
ーーーならちょっと俺頑張るしかないな……クレル、奴らが村人を襲うとしたらあとどれ位だと思う?
ーーー《推定あと四十七秒、四十六……》
一旦その場を離れ、あと約四十五秒の時間までになんとかする為に動く。
ーーー奴らの目的は食料か
村人は兎を仕留めたようで、満足気な表情で肩に担いでいた。
ーーーなら俺は……これだッ!
兎より大きい、猪を魔力弾で仕留める。
頭をぶち抜き、悲鳴をあげさせる間もなく仕留めた。
ーーー《残り二十五秒、四、三……》
次は先程村人が登場した辺りまで移動する。距離は七十メートルほど。
ーーーぐぬぅ……一かバチか! 瞬間移動(簡易版)!
視界でとらえた場所へ一瞬で移動するという芸当。失敗しやすい。
「あら」
で、移動した場所は……
『闇の組織』の旗が目の前にある。
よく失敗するくせにここぞという時に成功する、とは限らない。
闇の組織から見れば、急に目の前に現れた猪を片手に持つ少年に驚きを隠せないだろう。
現に俺は今、奴らから魔術をビシビシとぶつけられている。
「いて、いてて! ちょっ、待って」
猪を盾にして防いでいるが、数発は直接被弾している。
「なんだ!? 攻撃が効いていない!」
「特殊体質か!」
闇の組織が何か叫んでいるが、防ぐのに必死でよく聞き取れない。
ーーーてか村人は?
ーーー《何も気づかずにそのまま帰っていきました》
一安心。ということで、闇の組織を攻撃する理由が出来た。目的はわからずじまいだったが、いきなり攻撃してくるのはダメだろう。いきなり現れてびっくりさせた俺も俺だけど。
いい加減攻撃を浴び続けるのもうんざりしてきた。
陣形がバラバラで統率も取れていない為、持っている猪を投げれば……ほら、硬直が生まれた。
この硬直を維持するための魔術を発動。
「麻痺」
ただ相手の動きを封じるための魔術。ちょっと腕のいい者が解こうとすれば簡単に解ける魔術。
「ぐっ! なんだこれは……!」
口は動くが身体は動かないという、摩訶不思議な体験をして少しパニック気味になっている者もいる。
「んーと、まず、死にはしないから安心して欲しいです」
「何がしたい……!」
反抗的な目で俺を睨む。
「連行ですよ連行。タイノ村へね」
これが事件解決の糸口になればいいのだが……
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