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逃亡の準備

 魔王討伐の依頼を頼まれたが、自分の命の危機を感じた俺は王国から逃げることを決意。

 何とか隙を見つけここから出るするべく、王との会話を続けていた。



 「それはそうとして、魔界へ行くには俺はどうすればいいのですか? 転移門(ゲート)は今からじゃどうにもならないはず……」

 「そんな事お前がどうにかするに決まっているだろう」

 「えぇ……」



 ーーーダメだこりゃ……そんくらい考えとけよ。……まぁ、あったとしても逃げるけど



 「わかりました。ですが、俺は今この世界に来たばかりです」

 「うむ」



 そして俺は早速、逃亡に必要な物を手に得れるため、王様を騙す。



 「ですから、街を視察したいのです。今の状況を確認したくて……」

 「良かろう、護衛は?」

  「それは心配いりません。一人で大丈夫です。ですが……」

  「何だ?言ってみろ」

 「その、お金が……」

 「何だ、それではただの観光ではないか?」

  「い、いえ違うのです! この世界のお金の使い方を勉強したくて頼んだのです」



  ーーー王様のクセしてケチケチすんなや  



 「ふむ、まぁ良いだろう。おい大臣、其奴に金貨十枚渡せ」

 「畏まりました」



 そう言うと国王の隣に立っていた六十代くらいの男が王室を出て暫くしてから俺の元へやってきた。



  「こちらが金貨十枚でございます」

 「ありがとうございます」



  ーーーやっふーい! がっぽがっぽ



 どれくらいの価値かは分からないが、きっと大金に違いないと思った。



  「大臣、其奴にこの世界の通貨について説明してやれ」

  「畏まりました。勇者様」



 俺に向かって、大臣は説明を始めた。



 「この世界には鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、大金貨がございます。

鉄貨十枚で銅貨一枚、銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨一枚、金貨十枚で大金貨一枚となります。……ちなみになぜ今回勇者様には大金貨一枚では無く、金貨十枚をお渡ししたのかと言うと……まぁ簡単に説明しますとその方がお使いしやすいからというわけです。お釣りの手間等が面倒ですから」

 「えっと……なるほど。ありがとうございます」



 正直一度では覚えきれなかった。



 「いえ、こちらこそお役に立てて何よりです」



 大臣は俺に一礼をし、引っ込んだ。



ーーーじゃあ、この金でこの国から逃げる準備が出来そうだな。……あ、そう言えばあれ聞いておかなきゃ




 「そう言えばこの国はなんという名前なんですか?」

 「この国はスーン王国と言う。そしてこの国を治めている王こそが私、アルド・スーンと言う」

 「スーン王国ですね。分かりましたありがとうございます」



 ーーーせめて自分が召喚された国くらい覚えないとね



  「では早速、街に降りもてよろしいでしょうか?」

 「良かろう。大臣、城の入口まで送ってやれ」

 「畏まりました。勇者様、こちらです」




 そうして案内されて外に出ると、街は思ってたよりかなり賑やかで栄えていた。



 「そんじゃ何から見て回ろっかな~」



 ーーー……よし、まずは食料だな



  こうして食料を調達し、さらにその後、武器や防具を買い、あらかた整った時にふと思った。



 「魔法って俺でも使えんのか?」



  ーーーだってこの世界には魔力もあるし、何より魔術師だっているんだよ。俺でも使える可能性は低くないはず……勿論高くもないはずだ



  そう思ったとき、頭の中に何かの情報のようなものが流れてきた。



――睡眠スリープ〔小〕

――探知サーチ〔半径二十メートル以内〕

――ポイズン〔小〕

――身体強化エンチャント〔小〕

――隠密ステルス〔小〕



 ーーーこ、これって、ま、魔法だよな……何でだ?



 使える可能性があるとは思っていたものの、実際にあのような演出みたいなことが起き、正直少しビビった。



  ーーーん〜、もしかしたら魔法をイメージすると、使える魔法が頭の中に映し出されるのかもなぁ



 ひとまず俺は考えることをやめた。



 ーーーにしてもこのラインナップ、勇者らしくは……ないな。うん



  少し残念に思いながらも、実際に使えそうだという事実に興奮した。



  ーーーまぁとりあえず、どうやって使うのかだな。初めは……よし、やってみるか



探知サーチ



  俺の頭の中のイメージに、上空からの視点で半径二十メートル以内の様子が映し出される。



 ーーーすげぇな



 じっくり見ていると、あるものが目に入った。



 「ん?俺のすぐ後ろに誰か着いてきてるぞ」



 俺の歩くスピードに合わせ着いてくる。止まるとそいつも止まる。



  尾行だ。



  多分国王の差し金だろう。俺はどうも国王のことを信用できていない。




 先程俺が食料を調達しに行った時……


 「すいませーん」

  「おう、いらっしゃい兄ちゃん」


 俺は保存食が置いてありそうな近くの食料売場へ来ていた。


 「あの、保存食とかってありますか?」

 「ああ、それなら干し肉だな。兄ちゃん旅人かい?」

 「そんな感じです。いくらですか?」

 「一袋銅貨五枚だ」



 ーーーだいぶ買えるかな



 「じゃあ、十袋ください」

 「まいど! 旅をする時には気をつけてな」

 「もしかして魔物ですか?」

  「いやいや、魔物は普段は大人しくてこっちから縄張りに入って行かなければ問題ない。因みに縄張りの殆どは森にあるから尚更関わることは少ない」



  そう言われ、俺は少し驚く。



 「魔物はそれほど脅威ではないんですか?」

 「魔物は襲ってきたら厄介だが、なんと言っても魔術師がいるだろう。魔術師がいれば安心だ」

 「えっ、でも三分の一はやられてしまったんじゃ……」



 先程、国王の言っていた話と違う。



  「そうなのか? でも魔術師はこの国にかなりいるぞ。確か百万人だとか」

 「ヒャクマンニン!?」



 ーーーじゃあ、魔法はそれほど貴重じゃないっぽい……どういうこと?



 「あぁ、だからそれほど心配はない。才能の有る無しに限らず、魔力があるやつは魔術師になるし、魔物も滅多に自らは襲ってこない。現に今こうやって賑やかでいられるのもこうした事実があるからだな」

 「そうなんですか」

  「それに一度に大量に魔術師が死ぬなんて偶にあるしな」

 「それってどんな時です?」

  「戦争だよ。この国は今もアル帝国と戦争しているからな」

 「そうなんですか……」



 ーーーやっぱり国王が言っていたこととだいぶ話が違うな



 俺は一般人には本当のことを教えていないのかと考えたが、何となく話の内容を聞くに、店のおじさんの方が正しいような気がしてきた。



 「それにしてもなんも知らんのな兄ちゃんは。もしかして田舎から来たのか?」

 「はい、とてつもない田舎から来ました」

 「そうか、頑張ってな」



 店のおじさんはニカァ! と逞しい笑みを向けてきた。



  「ありがとうございました〜」

 「あっ、あと気をつけてほしいのは盗賊だ。奴らは数が多いからなかなか逃げることは出来ないからな」



 離れ際、思い出したかのように言う。



 「盗賊ですねありがとうございます」



 そうして俺は店を出た。




  ーーー国王目的は何だ? ……いや、その前に尾行を何とかしないと!




読んでくれてありがとうございます!

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