“質”かそれとも“量”か
ーーーあーあーあー、俺のへたりこんでる場所がバリバリの戦場ってなんの冗談?
「でどうする?」
隣で突っ立っているレヴィを見上げて言う。
「戦うさ、僕だって一応一線級の戦力だからね」
と言って目の前の敵に突っ込んでいく。
「さすがだなぁ」
一方の俺は、魔力は多少残っていても体力はすっからかん。敵の目に止まれば即死亡。
逃げる? それとも戦う? 何も出来やしないのに。
「つっても、一応俺も兵士ってことになってるしなぁ」
つまり否が応でも戦わなければいけない。
「どっこらしょっ」
あちこち痛む身体にむち打ち立ち上がる。
「ォォ―――ッ」
「んんっ!?」
直後、敵が謎の音を出し襲いかかってきた。
全身真っ黒のローブ。顔を隠すかのように帽子を深く被っている。
「天降球ッ」
俺は反射的にその魔術を唱えていた。
敵の三メートル頭上、六つの球体が円を作りそして、敵の腹辺りまで降り、そのまま敵の体を六つの球体が縛り拘束した。
「火球!」
申し分ない威力だ。着弾した火球は爆発し、敵を炎で包む。
「ォオオッ、―――ォォ……」
悲鳴らしき音が聞こえた後、敵は煙となり消えた。
「どういう事だ?」
更に襲いかかってくる同様の敵を対処しながら考える。
倒していくうちに、敵は命を持たざる者だということが分かった。
ーーーでも待てよ、敵がたった一人や二人で国を相手にするなんて無茶にも程がある……
「っ! ということは……!」
ーーー外か!
▽
――コロシアム外――
大量の民間人の避難誘導におわれる第五、第七部隊。
「今どれくらいの人数避難したか、報告頼む」
「約半数、残るはグリタン街の地下施設への避難を予定しております」
「ここから凡そ一キロか……よし、このまま進む。引き続き警戒を怠るな」
そう指揮を執るのは、第五部隊隊長、ククル・カシャネ。通称、“鉄壁”。
彼女が一度指揮を執ると、相手は第五部隊という防壁を破ることが出来ず戦意喪失するという。
自身だけでなく、部下の一つ一つが勝利の鍵だと彼女は言う。
「それじゃあお前ら、敵を発見したらいつもの如く、俺を守れ。そして俺はお前らを守る」
豪快な発言をするのは、第七部隊隊長、タカマ・カルシフ。
部下は飽くまで彼の支援役。戦闘は彼一人で行うという、第五部隊とは反対のスタイル。
なんでも、雑魚が束で戦うよりも、強力な自身が更に強化させれば効率よく敵を狩ることが出来るのだそう。
「止まれ」
ククルが手を上げて進行を制す。
「敵だ」
タカマが犬歯を剥き出しにしている。
「第五部隊、民間人の警護を最優先とし、陣形を固めろ」
言い終わるより早く、陣形は完璧に固められていた。
「っしゃあッ! お前ら! 俺に力をヨコセェエエ!!」
タカマの筋肉は倍以上に膨れ上がり、さながら、猛獣の様である。
「いくゼェえッ!!」
地面を一蹴り。たったそれだけで、百程あった敵との距離はゼロにまで縮む。
「ふむ」
ククルは少し考えていた。
「あの形……」
敵が組んでいる陣形、それは何故か、攻撃に特化したものではなく、相手を足止めにするものだった。所謂時間稼ぎ……不穏な気配を感じつつ、タカマの戦闘をじっと見守るのであった。
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