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リリィの手作り料理

  「ふぁ〜、おはよー」

  「む、遅いのじゃアカネ」


  登校初日の朝、俺は寝室からリリィが待っている王室へ来た。


  「う〜、まだ登校するには早くないか?」

 

  俺はまだ眠い目をこすりながら言った。


  「何を言っておる、今から朝食を食べるのじゃぞ」


ーーーあ、そうか。な〜んて事忘れてたんだ。そういえば朝食はいっつも食べてたのに、この世界に来てからまだ食べてなかったな


  「って、用意してくれてたのか?」

  「当たり前じゃろう。しかも、我の手作りじゃぞ」

  「リリィの手作り!?」

  「フッフーン、これでも料理には自信があるのじゃぞ」


  とリリィが得意げに言う。


ーーーこれって期待して………良いんだよな?


  そして、俺はリリィと食堂へ向かった。


  「い、意外とあるな……」


  食卓に並べられた料理は軽く五品を超えていた。


  しかも


ーーーぜ、全部卵料理………


  卵焼きに目玉焼き、卵スープにオムレツなどそこには卵を使った料理しかなかったのだ。


  「なんで卵料理だけ?」

  「我はそれ以外に作れんからな」

  「おぉう……」


  しかし、作られた料理はどれも美味しそうであった。


ーーー凄いのかよくわかんねぇな


  「アカネの為に張り切って作ったのじゃぞ!」


  と、薄い胸を張り得意げに言う。


ーーーそんな事言われたら全部食べたくなるじゃないか


  「ありがとうリリィ、全部美味そうだな」

  「そうか! おかわり沢山あるからな!!」

  「い、いや、今は遠慮しとくわ」

  「うぅ……そっかー」


  あからさまにしょんぼりするリリィ。


  「帰ってきたらちゃんと食べるからな」

  「分かった! あっためて待ってるからの!」


  そして席に着いた俺は、リリィの作ったオムレツをひと口食べた。


  「うま……」

  「ん?」

  「美味いぞリリィ!!」

  「そ、そんなに美味かったのか!?」

  「ああ! お前、魔王より料理人の方が向いてるって!」


  これはお世辞などではない。


  「そこまで言うか」

  「すげぇ……これなら毎日でも食べたい」

  「っ……///」

  「ん? 何照れてんだお前」

  「う、うるさいのじゃ! お主がいっぱい褒めるからじゃぞ!」

  「いや、事実だし」

  「ぅぅぅぅ///」

  「お前、バリエーションを増やせば絶対いい嫁さんになるな」

  「ほぉう、なら我はアカネの嫁さんじゃな」


  いきなりの発言に俺はむせてしまった。


  「なっ、何言ってんだおまぇぇ………///」

  「フフッ お返しじゃ」

  「このぉ……」


  そう楽しそうに微笑むリリィは、いつもの元気で可愛らしげな笑みではなく、大人の雰囲気を醸した妖艶な笑みであった。


ーーー反則すぎんだろおい……


 

  「ん? どうしたどうした?」

  「う、うるさい」

  「今日のアカネはからかいがいがあって可愛いのじゃ」

  「いっつも可愛いのはお前の方なのにな……」


  と、何気なく言った俺の一言に。


  「か、可愛いじゃとぉ!? ///」

 


  ボフン! と顔を真っ赤にして、さっきまでの様子はどこえやら……


  「ああ! もうこの世界で一番かもな」


  俺は仕返しとばかりに追い打ちをかける。


  「こ、この世界で一番!?」

  「ああそうとも! 俺もそんなリリィが好きすぎてたまんないぜ!」

  「へ? 好き?」

  「勿論! 好きすぎて困っちゃ……」


  俺は今更自分がおかした失態に気づいた。


ーーーヤッベェェェェエエ!! 勢いでつい言っちゃったよ!!


  「アカネ、その……今のは………」

  「うっ」

  「その、ちと考えさせてくれんかの……」

  「は、はい」


ーーーなんてこったい!


  「そ、それよりもやっぱり全部美味いな!! この料理!!」


  俺は無理やり話題を変えようとした。


  「そ、そうじゃろ!!」


  が、それ以上会話が続くことは無かった。



  ▽


  「じゃあ、いってきます」

  「あ、ああ、いってらっしゃい……」


  それから微妙な空気のままリリィへそう言い、俺は学院へ向かった。


ーーー《ふふふ、見事な自爆っぷりでしたよ》


ーーーお前ってほんっとに俺のこと嫌いだよな


ーーー《いえ、馬鹿で間抜けでトンチンカンなマスターが私は大好きですよ》


ーーーそうですかい


 なんか嬉しいのかよくわからなかったので、返事に困った。




  二十分後、学院へ着いた。


ーーーやっぱでけぇな……


  そう思いながら教室え足を運び席に座った。


  少し経って、ハナ先生が教室に入ってきた。


  「皆さんおはようございます! 早速ですが五分後、今日は登校初日という事なので皆さん一人一人に自己紹介をしてもらいます」


ーーー自己紹介か、なんて言うかな


  五分後、自己紹介が始まった。


  「それでは、先生から見て左の子から後ろへ順に発表して下さい」


ーーー俺最後じゃん


  そう思っていると、一人目の生徒が前に出た。


ーーーすっげー、金髪ドリル初めてみた……


  「私はカスタ・フィーネと申します。趣味は読書に宝石集めです」


ーーーわぁお、本物の貴族様だ。話し方は普通なんだな。


  そして、二人目、三人目と次々と自己紹介が終わっていった。

 


  はい、みんな貴族様でした。


ーーー俺のアウェイ感がハンパねぇ……


  「では最後に、アカネ君お願いします」

  「は、はい」


  先生に呼ばれ、俺は前に立った


  「初めまして、津田朱音と言います。皆さんとは違いごく普通の家庭で育ちましたので、礼儀知らずなところもあると思いますが宜しくお願いします」


  クラスがざわつく。


ーーーうん、そうなるよね。俺だけだもんね貴族じゃないの


  すると、一人男子が


  「なんでこんな所に平民が来てんだよ。ここはお前の来るところじゃねーんだよ」


  その一言で他の奴らも

 

  「そーだぞー。てめぇみたいなのは貴族様に媚でも売ってればいんだよ」

  「こいつマジ場違いなんですけど」

 

  と、俺を笑う。


  ーーー終わったな。俺の華やかな学院生活……


  「はいはい、静かにしてください。ありがとうツダ君。席へ戻って」

  「はい……」


  席へ戻る時、生徒の一人が俺に足を引っ掛けて転ばせようとしてきたが


  「イダ!」


  それを躱し、誰にも認識出来ない速さでデコピンを食らわせてやった。


ーーーもういいや。一人でも楽しんでやる……レッツエンジョイボッチ!!


ーーー《その鋼のようなメンタル、尊敬に値します》


  その言葉に若干腹が立ったが気にしたら負けだと思い、無視することに決めた


  「では次に、クラス委員を決めたいと思います」


ーーー自己紹介だけじゃ無かったのかよ


  そう思っていた時


  ペシ


  何処からか紙くずが投げられてきた。そしてクスクスと笑う声。


ーーーもう帰りたいよ〜ママン……


  と、思いつつも、実際もう気にしない事にしていた。

いつも読んでいただきありがとうございます!

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