動き出す影というベタ展開
食欲、睡眠欲、性欲。
理性ある生物は、これら“三大欲求”を個人差はあれど、ある程度抑えて生きている。
……とある国、一人の王が片手に巨大な骨付きの肉を持ち、もう片手には酒樽を抱え、醜く太った腹を恥じることなくさらけ出して食を貪る。
食っても食っても食い足りぬという、飽くことのない食欲は、国の資源すらも枯渇に追いやっていた。
民からの暴動の果て、国は新たな資源を求めるべく、”外“へと進出していくのであった。
その国の王の名は、『ベルゼブブ』。
三大欲求の食欲を極めし、《暴食》の称号を手にし、あらゆる食物を欲しいままに摂取する。
生み出すことは出来ず、ただ消費する。
災害、災厄、災い。
国の民は、各々そう口にする。
暴食の国の元に生まれたら最後。民は王の為に働き、王の為に献上する。
逃げ出すことは出来ない。国境を越えた時点で即死。
大した能力のない王にできる数少ない呪縛。
ーーー故に暴動も絶えない。正に民あっての国だからな
と、これまで解説チックな考え事をしていた一人の幹部が、怠そうに頬杖をつく。
彼の名は、べリス。
幹部としては新米だが賢い。
「……おっ、やっと見えてきた」
空を泳ぐ機体から体を覗かせ、目標へ近づいてきたことを確認する。
「おーい、そろそろ準備しとけよ」
部下たちに一声。
「やっと見えてきたぞ……“サタニウス王国”」
▽
『さぁ! センス学院がリーチの状況で始まる次の戦い! 一体勝つのはどこのどいつだァ!?』
雑になりつつある実況を聞き流し、レオへ声をかける。
「頑張ってくださいね!」
「わざわざ言われんでもそうする」
「素直じゃないわね」
茶化すサラブレにフンと鼻を鳴らし、フィールドへ上がっていく。
対戦相手は、長髪の男。目を閉じている。
ーーー盲目か?
『それでは第二試合、両者構えて……』
『始めェ!!』
先に仕掛けるのはミラ学院側。
「魅惑の戦場!」
盲目男が唱えた後、ふわりと、種類不明の花の香りが鼻腔を擽った。
「失礼、これをしないと見えないもので」
やはり目が見えていない様だ。
この魔術が、何らかの手段となるのは明らか。だが問題はそれによってないが起こるか……当たり前だが、未知は恐ろしい。
「構わん、わざわざ口にするな」
レオは相変わらずレオだ。勝利だけを見据えている。
しかし、目先の目標ばかりに集中し、大切なことがまるで見えていない。それこそが本当の盲目では無いのか。
ーーー誰かがそう言っていたような、言ってなかったような……
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