決勝へ
「よくやった」
「ありがとう」
勝利後、二人から労いの言葉を貰い、ようやく緊張がとけ、ぐったりと椅子にもたれかかる。
長期戦を想定していたが、予想以上に新技が強力だった。
ーーーん、でもその方が始めから作戦として良かったんじゃね?
「あの思ったんですけど……」
「なんだ」
次はレオの試合。時間があまりないので、早口に言う。
「この試合、早く決着をつけるよりも、一撃で決めた方が、その後も楽なのかなーって思うんです」
恐らく……と言うよりほぼ確実に相手はこちらの作戦を予測している。だからあえて隙を見せて逆に突かれる可能性も十分にあり得る。
その為に、こちらの動きのパターンや速度が相手の目に捉えられる前に、こちらが相手の予測する速度を上回る攻撃で撃破する。
つまり、相手は俺たちの作戦が分かったとしても、選手の特徴、身体能力までは分からない。そのため、手始めに敢えて相手は隙を見せに来る。選手の動きを把握するために。そこが最初にして最大の好機である。
と、俺はその旨を一文で伝える。
ーーーうわぁ、絶対伝わんないだろうな〜
この説明で伝わるものなら、俺は彼を崇める。
そして彼はうっすらと笑みを浮かべる。
「そんなこと、お前に言われなくても始めから頭に入れている」
「そうだったの!?」
ーーー俺すっげぇ恥ずかしいやつじゃん!
頭を抱える俺にレオは最後にこう言い残した。
「お前、中々思い切ったこと考えられるようになったじゃねぇか」
先程までクールに笑っていたレオは今、俺と戦った時と同じような獰猛な笑みを浮かべている。
▽
『勝者、センス学院!!』
数十秒後、彼の足元には、プスプスと煙を上げながら横たわる相手選手が転がっていた。
ーーーえぇ……隙を狙うどころか、防御ごと粉砕しやがったよ。ゴリラかッ!
絶対防御! と相手選手が全身を覆う防壁を展開したのだが、レオはその防壁を、「爆ぜろ」で粉砕、そしてそのまま勝利。
これには皆混乱。そして思い出したかのように、会場からは歓声が鳴り響いた。
「よし、戻るぞ」
「えっ、インタビューとかあるらしいですよ」
「好かん」
▽
「ふぃ〜」
控え室のソファにどっかりと座る。
二、三年が絶賛試合しているので、余裕で三人分の余裕がある。
「次は遂に決勝ですね」
「そうね」
「ああ」
どうやらソワソワしているのは俺だけのようだ。
「なにか作戦は?」
「ない」
ーーー無いと……
「あら、珍しいわね」
サラブレが不思議そうに言う。
「正直なところ、相手の詳細どころか、選手の性別すらも不明だ。余計に考えるよりも、その場で各自判断した方が余程合理的だ」
魔王軍が一人いることは言ってはいけない。どちらにしろ、俺はあいつ戦うことになっている。
「頑張りましょうね」
「頑張ろうって、貴方……フフっ、いつも通り気楽ね」
「だが、ここまで来たら最後は“頑張る”しかないな」
三人は、お互いの顔を見合わせる。
「それではいざ、決勝へ!」
扉を開け、両の頬を叩き気合いを入れる。
ゆっくりと一歩を踏み出す。
『準決勝最後の組が終了致しました。これより一時間の休憩を挟み、その後決勝戦へと移ります』
後ろで二人は優雅に茶を嗜んでいる。
ーーー締まらねぇ……
俺一人、はしゃいでいたようだ。
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