表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
178/227

勝たなければならない理由が出来たようだ


 「すいませんでしたァ!!」



 土下座する俺を、リリィが鼻で笑う。



 「見るからに安っぽい土下座など、逆に相手を不快にさせるだけじゃ」

 「で、でも、俺には今これしか出来ない……」



 迂闊な行動をした俺に、ただ許しを乞う自分自身に腹が立つ。



 「他に何か言いたいことはあるかの」



 寛容な心をお持ちのリリィは、俺に弁明の機会を与えてくれた。



 「言い訳をさせてください」

 「言い訳とな、よかろう」



 俺はありのままにこの不祥事の詳細を話した。



 「ふむ……つまりお主は、レヴィを男だと今日まで思い続けていたと。故に男同志の接吻は深く気にする必要は無いと判断したのじゃな」

 「はい」



 リリィはジッと、俺の目を見つめる。

 


ーーー目が離せない……というより離したくない



 美しい瞳に意識を持っていかれそうになる。



 「すごく、綺麗だ」

 「ふぇあ!? はっ! んんっ、ど、どうした急に」

 「ああいや、あまりにも綺麗だったので無意識に」



 つい零した一言に、リリィはその不意打ちに顔を赤く染めるが、直ぐに仏頂面に戻った。



 「と、とにかく、お主が嘘をついていないことはわかった」



 どうやら俺の目を見て、真偽を判定していたようだ。



ーーー目を見て分かるもんなんだな実際



 「そこでお主にチャンスをくれてやろう」

 「本当か!?」



  俺が喜ぶのも束の間、リリィからは何やら疲労を感じさせる溜息が見て取れた。



 「どうかした?」

 「実は、お主がレヴィに敗北すれば、レヴィがお主を婿として迎え入れるそうなのじゃ」

 「正気か!?」



 どうやら、俺とキスをしたことが原因で、意外(と言ったら失礼だが)にも乙女だったレヴィは、他のお嫁にはいけないと言い出し、だったら俺を婿に入れるべく、リリィへ俺自身を介して俺をかけた勝負を持ちかけたそう。



 「それで、勝ったらリリィは俺のことを許してくれる」

 「負けたのなら、お主と我の関係はこれまで……ということじゃな」



 ここまで来ても、リリィからは焦りといった様子は見受けられない。



 「やけに落ち着いてるな」



ーーーまさか、俺はもう見限られてるのかな……



 不安な気持ちになるなか、彼女は不思議そうに俺を見て言った。



 「何を言っておる? 始めからお主が負ける未来など見えておらん」

 「リリィ……」



 安堵して座り込む。杞憂だったようだ。寧ろ、完全にリリィを今でも信じきれていない事実に落胆する。



 「アカネ」



 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、リリィが俺を名を呼ぶ。



 「はい」



 顔を上げるが、罪悪感で顔を合わせるのが辛い。

 そのため、自然と顔を上げることが遅くなる。



 リリィへ目を向けようと、やっと、顔が上へ向いた時、リリィの顔がすぐ近くまで迫っていた。




 「り、リリィ?」



 息がかかる距離まで近づいたリリィとの距離が、更にどんどん縮まって行く。




 そして……




 「んんっ……!?」



 俺の唇をリリィの唇が塞いだ。



 「っ〜〜〜!」



 今まで溜め込んでいた気持ちを、ぶつけるように、俺の頭を抱え、強く唇を押し付けて離そうとしない。



 「り、りぃ、たんま、ちょっいたたた」



 無理やり口を開き、小さく動く唇でギブアップを伝える。



 「ぷはぁ!」

 「はぁ、はぁ……」



 じんじんと痛む唇を撫でる。



 「どうしたんだよいきなり」



 驚きが強く、照れる暇がない俺はすぐさま真意を問う。



 「“上書き”じゃよ」



 ベッ、と舌を出し、不貞腐れた顔で会場の方へ歩いていった。



 「………って、一緒に行こーよー!」



 惚けている間に、結構離れてしまった。



 「なら走ってこいなのじゃー!」

 


 リリィは両手をぶんぶん振りながら言う。



 「へいへい……」



ーーーまったく、可愛いやつだな



 今回のリリィとのキスはそれこそ不意打ちだったため、何も感じなかった。




ーーー大会が終わったら、優勝を報告してから、改めてだな




 そんなロマンチックで気持ち悪い想像をしながら走り出す。



 顔がなんだか熱を帯びている気がするが、()()()()()()()()()。ないったらない


  


 



いつも読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ