どうやら俺は最低クソゴミムシらしい
「なん、で、あんなこと……」
リリィの言葉に合わせ、黒く禍々しいエネルギーがリリィの口元へ集中している。
「って、まずい!」
もう一度でもアレを放たれれば、流石に防ぎきることが出来ないかもしれない。
チャージはおよそ三秒と予測。問題はその間に七十メートル程の距離にいるリリィを抑えられるかどうか。
「間に合えっ……」
その間にも俺は既に走り出している。
「ちぃ!」
流石に自力では追いつけないと判断。ここまで一・五秒。
ーーー《んー、初めから考えなくても分かりますよねこれは》
なにかクレルが言っているが、大きなタイムロスをした俺はそれどころでは無い。
「せいっ!」
そしてほぼ反射的に、後方へどっしりとした、魔力で出来た大きな“壁”を生み出す。
俺はこの壁に足の裏を向けるように跳び、監獄で使用するような魔力棒を足裏から出現させ、魔力棒をそのまま急速に伸ばす。
「いっけぇえ!!」
魔力棒が壁に当たり、それにより押し出されるようにぐんぐんと前進して行く。
同時に、リリィ砲のチャージが完了したようだ。
「リリィぃい!!」
リリィへダイブするように飛び込む。
「のじゃ!」
独特なリアクションをとりながら、リリィは倒れ、何とかリリィ砲を阻止することが出来た。
「あっぶねぇ……」
ひとまず安堵し、そして直ぐに事情を聞き出す。
「で、これはどういうことだよ」
あのリリィが、自分の城へレーザーを放つなど、いまいち考えられない。
「何をとぼけておるのじゃ! 我を裏切りおってからに……うぅっ」
「はっ?」
全く身に覚えのないことを言われ、混乱する。
「いやいやいや、俺が一体何時どこでリリィを裏切ったんだよ。そもそもそんなこと有り得るはずないだろ」
そう言って反論する。
「なら主にとって、たかが他の女と接吻する事など、どうでもいいことなのじゃな……」
「はぁ!?」
それこそ謂れのない疑いだ。
「そもそも、俺が女の人と接する機会なんて……結構あったな」
「ほらぁぁあ! やはりアカネは我を裏切ったのじゃあぁぁ……!」
思わず余計なことを言い、リリィの疑いを深める。
「でも! それは学院での話であって、それ以外にはほぼないから!」
必死で抵抗する。
「じゃが、お主と接吻を交わしたと言う奴が出てきたのじゃ」
ふてぶてしく俺を睨むリリィ。
「そ、そりゃ、一体誰さ」
本当に心当たりがない。だが、出てきたと言うのならば、焦らざるを得ない。
「レヴィ・ウリウス……第十部隊隊長じゃ」
「隊長とか、俺半分も関わってないすけど」
ーーーそして誰だよ、そのレヴィ・ウリウスってやつ……ん? レヴィ?
そこである美少年の顔が浮かぶ。
ーーーん、ないな。アイツ“男”だし
「因みに、ミラ学院の代表になり、今は選手としてこの大会に出場している」
「へ?」
「そして、彼奴はお主と“デート”したそうじゃな」
「おいおい……」
ーーーまさか、嘘だよなぁ
ーーー《そろそろ認めた方がいいですよ。自分はクズで、ゴミな虫だということを》
「で、そのうえでどう反論するのじゃ」
「えっと……」
「お主は! 他の女に! 目移りし! しかも! 我の配下にじゃ! そして接吻まで交わした!」
人差し指で胸をドスドス突かれながら、リリィの怒りを受ける。
「……この落とし前、どうつけるのじゃ?」
「すいませんでした……」
あまりの気迫に、弁解する前に先ず、土下座した。
いつも読んでいただきありがとうございます!