帰りたい
突如現れたゴブリン……相棒のベスは、ギャイッと俺の指示を待っている。
「よし、この人を森の外まで運んでくれ」
「ギャイッ!」
俺が指したのはレシファ。流石に女の子を俺が担ぐわけにはいかない。
しかし、いくら女といえど、単体では特に非力なゴブリンでこの役割を果たすことが出来るのか。
「おぉう……」
しかしそれは杞憂に終わった。
ベスはいつの間にか、一回り、いや二回りも身体が成長していた。
ーーーこれはよくある、主人公のペットTUEEEEな感じですかねぇ
ーーー《いえ、ここら辺のゴブリンは身体強化を得意とします》
ーーー魔術とか使えたんだ……
▽
「ギャイ」
約十分、無事に森の外へ辿り着いた。
「ふぃー……ありがとなベス、助かった」
ベスの頭わしわし。
「ベスゥ〜」
「新たな鳴き声!」
親愛度でボイスが追加される様だ。
「じゃあな」
「ギャイ〜」
手を振り見送る。
「ん、ぅ……」
そして丁度よく、レオが目を覚ます。
「はっ、アカネどうなった?」
起きてすぐ俺へ戦況を聞く。
俺のように寝ぼけないあたり流石だ。
「大丈夫です、終わらせましたよ」
「そうか」
勝った。とはあえて伝えない俺に、レオはほっと安堵する。
「そうか、終わらせたか」
ここまで疲弊するレオは、あまり見ない。
「……よくやったな」
「え?」
「ちっ、なんでもない」
鈍感系主人公は難聴持ちです。
「えー、なんですかぁ?」
「あっちいってろと言ったんだ」
「さっきは、よくやったなーみたいなこと言ってくれてたじゃないですか! ヒドイ!」
「って、わかってんじゃ……はぁ、もう面倒だ」
ーーーげひひ、その顔が見たかったんじゃよぉ! その困っている珍しい表情……たまらんなぁ
「もぅ……うるさいわね」
サラブレ起床。
「でどうなったのよ、まさか負けてないでしょうね」
「大丈夫です、全て終わらせました」
「殺してくれたのね、お疲れ様」
「そこは乗っかってくださいよォ!」
サラブレのキョトンとした顔に、これ以上何も言えないツッコめない。
「寝みー」
「今日の疲労はかなりのものだろう、ゆっくり休んで明日また試合勝てるように整えろ」
「そっくりそのまま返すわ」
三人同時に、重たそうに腰を上げる。
こんな形ではあるが、初めてチーム三人での帰宅。
「それで、お前らは誰があの殺し屋を雇ったと思う」
途中、レオがそんな話題を振るが、
「さぁ?」
「知るわけないじゃない」
それより疲れで早く帰りたいという思いが強く、素っ気ない返事をしてしまう。
「そうか」
そして返ってくるのはそんなレオの言葉。
これ以上会話が続くことは無かった。
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