ぬぅんっ!
結果、試合は計約数分で幕を閉じた。それはそれは呆気なく、俺らはほぼ一撃で対戦を終わらせ、勝利を収めた。
「弱くてラッキー……なんて、甘い考えですよね」
「ああ、奴らには別の思惑があると見て間違いないだろう」
試合終了後、ディアル高校の生徒達と目が合った時、正直一瞬身体がピクリとも動かなかった。
「……絶対人殺してますってアレは」
「相手に不足なしってところね」
「あぁ、先程の試合は舐められてたからな」
弱気な俺を他所に、二人はやる気満々といった様子だ。
「もういっそのこと、逃げ出したい……」
緊張と不安で腹が痛くなる。
「何を言っている、もうここに来てしまった以上、無理な話だ」
「……ですよねぇ」
此処は既に森の中。人気のないこの場所で、ディアル高校の生徒を誘き出す。
「でもやっぱり――」
「来たわよ」
いつまでも弱腰の俺に、サラブレが聞きたくない言葉を口にする。
「やぁやぁ、偶然だねぇキミたち」
「まじかよ……」
現れたのは、やはりディアル高校の三人組。近くで見る筋肉男は、本当に恐ろしい。
「ふんぬぅ!」
えげつない程に隆起した腕やら胸やらが、パツパツに着こなした制服を引き裂いた。
「見よこの筋肉ぅ!」
と言いながら、様々なポージングをとっている。
「で、お前らの目的は何だ?」
筋肉男をスルーして、レオがほか二人に問う。
「依頼だよ、依頼」
「依頼か……」
「誰からよ」
俺達の予想通り、何者かが俺達を狙っていると考えて間違いないだろう。
問題はそれが誰か、だ。
「チョロっと教える殺し屋が居るかよ」
やはり俺達を本気で殺しに来るようだ。
「人前で堂々と殺すのは不味いだろ?」
「殺る方も殺られる方もお互いにな」
と、話を引き伸ばしている間に、レオとサラブレの魔術の準備が完了したようだ。
ーーー敵が油断している今がチャンスだッ!
「消えろッ、獅子術・陽閃光ッ!!」
レオの放つ、眩い光……否、極太の光線が三人を直撃。
「まだよ……空龍砲ッ」
サラブレの放つ、龍の如き魔弾が、追い打ちをかける。
この二つの魔術は、彼らの奥義。長時間のタメが必要となるが、その威力は絶大。直撃したのならば、相手は勿論……死ぬ。
殺す覚悟も、殺される覚悟も備わっている……そんな二人を見て、俺は漸く腹を括ることが出来た。
「ちっ、暫くは頼むぞ」
「ごめんなさい、倒しきれなかった」
焦げ臭い匂いを含む土煙に浮かぶ、ひとつの巨大な影。
「……」
「筋肉野郎か」
ダメージは受けているようだが、筋肉男はピンピンしている。
「……テメェら、タダで死ねると思うなよ」
「意味わかんねぇよ」
筋肉男、禍々しく黒いオーラが漂う。
「コロス」
先程の明るいキャラクターの面影は既になく、今の彼の姿は一言で表すのなら、“鬼”。
「……」
横に転がるもう二人の亡骸を脚で払うと、死体が木々を薙ぎ倒しながら吹き飛んでいく。
「なんで俺がボス戦なんだよ……」
愚痴を零しつつ、勝ち筋を模索する。
「ぬぅんっ!」
筋肉男が常識外れな速度で、俺に迫る。
「くっ……」
何とか回避成功。
「ぉぉお……」
「やるしかねぇな」
長期戦はこちらが不利。
ーーーぶち込んでやる……
俺の奥義を。
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