所謂ぶっ壊れキャラ
我が人生の経験で例えるのなら、三十九度の高熱を出した時のような頭痛と、夏休みの課題を休み無くぶっ通しで終わらせた疲労感が、一度にどっと押し寄せたかのような衝撃。
それに少し勝る今回のエピソードは、俺の未熟な人生経験で築き上げられた精神ではあまりにも、信じ難いものであった。
「きゃ、きゃやっひょに、あひゃまをきゃやっひょに……」
ーーー『あらら、オーバーヒートしちゃったよ』
ーーー《貴方がなんの説明もなしに現れたら、誰だってそうなりますよ》
ーーー『仕方ない……おーい、起きてるかーい』
ぼーっとした意識の中、脳内でほっぺをツンツンされているような気がした。
ーーー『おーい、おーい』
「んっ、うぅ……」
ーーー『おーーーい』
ツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツン
「あぁもう……やかましいわァ!! ……はっ!?」
『やっと起きた』
《いえ、此処はマスターの意識の中ですので、実際には立ったまま意識を失っているのではありませんか?》
『あ〜、そうなんだ』
目を覚ました場所は、見覚えがある空間。
そうか、此処は俺の意識……
「つまり俺は起きちゃいねぇ、眠ってるんだっ」
《それ先程も説明したでしょう、おじいちゃんじゃないんですから》
『あらあらツダ爺や、さっきご飯食べたばかりでしょうに……』
「んな茶番してねぇでさっさと説明してくれやァ!」
漫才をカマしている二人を怒鳴りつける。
つか、なんでコタツに始まりみかんやらお菓子やらが用意されてんだよ。
ツッコミたい所をぐっと抑え、なるべく簡潔に質問をする。
「アンタらは一体どこのどいつで、何故俺に関わろうとして、俺を補助してくれたり、逆に引っ掻き回したりする? そしてチャラ眼鏡、てめぇはなんなんだよ! 俺の魔力? それも自我を持った? 極めつけは神になるだァ? そんな厨二くせぇもんねぇよなぁ!? 今考えてみりゃとんだ赤っ恥晒しちゃったじゃないですかアァ!」
『ツダ君、簡潔という意味をもう一度その古ぼけた脳内の辞書で必死こいて探してご覧』
「まだてめぇは老人ネタ引っ張るつもりかクソメガネェエ!!」
《マスター、話を早く進めるのならば、一旦落ち着くべきではないのでは? 貴方も煽らないでください》
クレルの仲介により、何とか冷静さを取り戻す。
『ごめんねツダ君、ちゃんと説明するよ』
「初めからそうしろや」
貼り付けたような笑顔が一層俺を不快にさせる。
『俺の名前は……うん、“シン”と呼んでくれ』
「わかったよ、“うん・シンと呼んでくれ”さん」
『大分ひねくれてるなぁ』
「あからさまに、『ここは仮の名を名乗っとくZE☆』みたいなのがキメェんだよ」
俺がイチャモンをつけていると、クソメガネがクレルにひそひそと何か話しているのが目に映る。
『あの子前まであんなキャラだった?』
《まぁ、イメチェンみたいなものでしょう。固定されたキャラでは彼も立場が危ういと察したようですね》
「全部聞こえてっからな! 大体こうなった元凶はテメェらだろうがァ!」
『あははっ、ホント必死だね』
「なっ、てめぇ……ぶっコ__」
▽
十分後、そこには優雅にお茶を啜るクレルと、その横で見るも無惨な姿に成り果てた“もの”が転がっていた。
《全くもって話が進んでいませんね……》
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