えと、ちょっとよくわかんないので説明よろしくお願いします
『以上で、二日目の試合を終了致します』
試合終了直後、アナウンスが流れる。
ーーーやっと帰れるな
「お疲れ様」
「ナイスファイトでした」
「ああ、お前らもよく戦ってくれた」
少し危なかったが、なんとか勝利を収めた俺達は互いに労いの言葉をかけ合う。
「いよいよ次は準々決勝ですか」
恐らく相手のレベルも数段上がるだろう。
しかしそれはどの選手も皆思うこと。俺達の実力は十分トップを狙える位置にいる。
「取り敢えず気は抜かない事ね……今日の試合で思い知ったわ」
「ああ」
サラブレが唇を噛み、悔しさを顕にしている。
「まっ、反省はここまでにして、明日は一日休みですのでゆっくり疲れを癒しましょう。ねっ?」
少し重い空気が流れる中、パンと手を叩き二人に明るい口調で言う。
ナイスだ俺。
「ああ、そうだな」
頑張っている俺を察したのか、二人は生暖かい笑みを向ける。
ありがとう、皆。
「そういえば、どうやって白衣の男倒したんですか?」
苦戦した記憶を掘り返すのは申し訳ないが、気になるものは仕方がない。
「あの男、馬鹿なのか?」
突然のdisから始まり、俺達はまず魔力がごっそり減った現象の正体を知らされた。
「喰らう者による魔術ですか」
「その魔術と相手のもう二人を使って、お前らを魔力欠乏へと追い込んだしかも、それは伝染するらしく、お前らに触れた俺までもが魔術に掛かった」
ーーーへぇ、つまり俺たちが戦ってた人達はその魔術を俺らに掛けるだけの駒に過ぎなかったんだな。極端に言えば
大胆な作戦だなと、敵ながら賞賛してみる。
「そしてここからだ……その魔術を掛けるために、あいつらの仲間には耐性を付けていた。だからあの二人はなんの影響もなくお前らに魔術をかけることが出来た」
「え、ということはもしかして……」
察した。
「ああ、肝心の白衣の男は、自らの魔術の“伝染する”という性質を知りつつも、自らには耐性を付けておらず、俺に触れられたヤツは元々体が軟弱だったのか、直ぐにダウンしたというわけだ」
馬鹿な話だろう? とレオが鼻で笑う。
ーーーふんっ、詰めが甘いな
ーーー《人に言えたことですか?》
取り敢えずタネ明かしも終わり、満足した俺は、そのまま帰宅することにした。
▽
帰宅道中、俺はふとある事を思い出した。
ーーーこの大会が終わったら、戦争に行くんだよな俺
ーーー《そうですね》
「軽いなぁ」
今思うと、なぜあの時魔王は俺を戦争に連れていくと言ったのか。そしてなぜ俺はなんの違和感も覚えず承諾したのか。
うん、頭の中に女神様とクレルの顔がチラつくのは何故だろう。
ーーー何かしたな?
ーーーええ
あっさり認めやがった。
ーーー俺死んじゃうかもよ? マジ死ぬよ?
ーーーご都合主義もまかり通すことが出来るのも、我々の力ですから
ーーーなんで誇らしげなんだよ。しかもご都合主義って、それお前らにとってのご都合主義じゃねぇか
「はぁ、また大変なことになりそうだな」
なんかもう慣れたのか、戦争でもなんでもバッチ来い! な精神が作られている。
ーーーあぁ、それと言っておきますが
ーーーん?
ーーーマスターの自我を持つ魔力……今更ですがアレの言っていた話、全て“ウソ”ですからね
「は?」
突然プロボクサーに、渾身のストレートを顔面に食らわせられたかのような衝撃。
ーーーど、どどどど、どどどどど、どういうことしゅか!?
アカネは うまくしたが まわらなかったようだ
嘘となると、あいつが言っていた運命やらなんちゃらとかいう壮大なストーリーも全て設定になる。あいつが俺の精神がぶっ壊れた時に出てきたというのも、レシファに恋していたことも、全て嘘になる。
ーーー『おいおい、全部嘘とかは流石に酷いんじゃない?』
「なっ__」
なんと、消えたはずのもう一人の俺の言葉が、クレルと同じように脳内に流れる。
ーーー『やぁ、もう一人の僕』
ーーー《もうこんなくっさい芝居やめたらどうなのです》
「は? え? 芝居……?」
只今絶賛混乱中。
ーーー『プププッ、本当に面白いね君』
ーーー《はぁ、面倒なことになりそうですね》
「は、はよ、説明はよ」
転移以来、最大のショッキングな事実に俺の脳はパンク寸前になっていた。
「いやもう、鬱になるよ俺……」
いつも読んでいただきありがとうございます!