喰らう者
昼投稿(寝落ち)!
「……ぁ」
目を覚ますと、低い天井が目に入った。
「あら、起きたのね」
頭の上からサラブレの声が聞こえる。
「……あぁ、気絶していたんですね俺」
そして気絶した俺は、ベンチに寝かせられ、レオが戦っているというのにグースカ寝ていたというのである。
「それで、今レオはどうなってます?」
「どうもこうも、たった今始まったばかりよ」
「え?」
てっきり、最悪勝負が終わっているのかと思っていた。
「魔力欠乏から急速に魔力が回復していった。そうとしか考えられないわ、今の貴方を見れば」
「えっと、イマイチ意味が……」
「つまりゆっくり眠って魔力を回復するのが一般的だけど、貴方の回復力が常軌を逸している為、短時間で魔力を全快した……だから睡眠時間も比例して短くなったと考えられるのよ、それも数分のうちにね」
面倒そうに説明するサラブレを見て申し訳ないと思う。
「まぁ、あの戦いで魔力を極度に消耗したにも関わらず勝った。違う言い方をするならば、魔力を消耗しただけで済んで勝利した。しかも手の内をさほど明かさずに……なかなかやるじゃない」
「ありがとうございます、でもあれはかなり危なかったです。もっと色々勉強しないといけないな」
ーーーそうだ、もっと勉強しないとその内追いつけなくなる
レオと対戦相手であろう白衣姿の男との攻防を眺めながら、ぼんやりと考える。
▽
「輝く槍」
白衣の男へ向け、手では到底持ちきれない大きさの槍を放つ。
「幻」
槍が白衣の男を貫く……が、貫かれた瞬間彼は霧散し、その姿はどこにも見当たらなくなってしまった。
「ちっ」
「少し独り言をさせてくれないか」
舌打ちするレオの頭に、白衣の男の声が響く。
「どこに居やがんだ」
「さぁね」
気がつくと、フィールドは霧に包まれていた。
「君のお仲間の二人、少し様子がおかしかったでしょ」
「あ?」
思い出されるのは、異常なまで魔力を消耗した二人の姿。
「タネ明かしをしようか、どうせここで勝っても次は負けるだろうし、この状態じゃ外からは何も聞こえない」
「わざわざ教えてくれるなんて、ありがたいことこの上ないな」
レオも二人の対戦相手の行動に、不信感を抱いていた。
「僕はね、喰術という、相手の魔力を削る魔術を使えてね」
「初めて聞くな」
「まあ、さほど有名じゃないから」
彼は自虐的に笑いながら言う。
「その術を僕の仲間二人に掛けたんだ。そして君たちと戦わせた」
「どういうことだ」
それだとそいつの仲間が、魔力を失うことになる。
「僕が二人に掛けたのは、触れた相手の魔力を削るという付与魔術」
「それで俺らのチーム二人に触れて魔力を削ったと……随分とつまらないタネ明かしだな」
だからなんだと言うのだ。拍子抜けだと、レオが鼻で笑う。
「まぁ、その内本当の答えが分かるさ」
「なに?」
白衣の男がようやく姿を現した時、レオは自分の体の異変に気がつく。
「なん、だ……」
急速に魔力の消耗に、体の力が抜け、膝を地面に落とす。
「そして、君のお仲間二人に触れた君は……」
「あぁ……そういう事かよ」
悔しそうにするレオを見つめる白衣の男は、楽しそうに笑うのであった。
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