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失って気がつくけど今は別になくてもいいかなって思うありがたみ

 

 思考加速……自らの思考速度を加速させる。



 もうすこし詳しくざっくりと説明すると、めちゃくちゃ考える速度を上げて、物がゆっくりと見える現象をつくりだす技巧。



 それと似て非なるものが“見切り”。今現在サバンと格闘中の無口少年。



 “見切り”と“思考速度”の大きな違いは、思考時間と速度にある。ただ純粋に思考を加速させる“思考加速”とは違い、“見切り”はほんの数瞬だけ思考を“思考加速”の約一・五倍の速度で思考速度を上げる。



 一般的(魔術の達人や神界の御方)には、()()が何かの間違いでこの二つが使えるのだとしたら、勝るのは圧倒的に“思考加速”だと言われている。しかしそのような状況などあるはずも無い……と盛大なフラグを残している。



 そんな見切りを使う無口少年は、俺が見る限り使いこなしてはいる……と思う。



 あれからサバンの近接攻撃をも見切り、凡庸だがそれなりの魔術で反撃もしている(命中しているとは言ってない)。



 しかし何故歯切れ悪く、俺がそう判断したのかと言うと、




 「おん? どうしたんだい、動きが大ぶりになってきたよ!」



 最小限の動きをしていたにも関わらず、無口少年は肩で息をするようになり、額から汗が伝っている。



 思考を加速させる行為は、自分の思っている以上に体力を消耗させる。無口少年には見切りを()()()使いこなす体力が足りていない。



 「ん〜、思った以上に呆気ないねぇ」

 「うるさい」



 サバンの挑発にそう呟く無口少年が、両手を広げ、数種類の属性の魔力球を浮遊させる。



 「追尾弾(ホーミング)



 本来ただの属性球だった球が、一斉にサバン目掛けて飛んでいく。



ーーーこんな使い方もアリなのかよ



ーーー《魔術にルールはありませんからね》




 無口少年は見切りの思考加速を使い、複数の珠へ一瞬にして指示を行い、球を発射させた。



 「ん〜、複数の属性ねぇ……」

 「なっ……」



 面白そうに笑うサバンは、自らも複数の属性を持つ刃を生み出し、属性相性に従って球を対処していく。



 「ここで教えてあげようか」



 と、観客席の俺らへ向け、サバンは何か言い出す。



ーーーえっと、なにを?



  「さぁ、答え合わせと行こうか」



 そこで隠れ美少女編の熊への弱点を見つけた回の話だと察した。



 「俺も結構すごい能力持ってるんだよ……それが“空間絶対把握”」



ーーー《つまりあらゆる角度の視野を手に入れ、ほんの少しなら透視もできる能力です》



  サバンが難しいこと言っている間に、クレルが馬鹿にでも分かるように解説してくれた。




 「……以上、この能力はすごいという話でした」

 「シッ!!」



 無口少年がとんでもない速度で暗器を投擲する。



 「死角からのいい攻撃……俺には効かないけど」



 “見切り”など使うに値しない。そう語るかごときの反応速度。常軌を逸している……



 戦慄する会場の中、



 「負けだ」



 あっさりと負けを認める無口少年が手を挙げた。




ーーー言ってあんまり無口じゃなかったな



 『試合終了!! ミラ学院二本先取、センス学院三本先取……よって勝者、センス学院!』



  最後が盛り上がりにかけるが、取り敢えず面白かったぞと観客達。



 「いやー、サバン・オブジェってやっぱり凄いですね」



 世間話程度にレオへ話題を振る。



 「ん、逆にそんな芸当も出来ないのか?」



 と至極当たり前と言わんばかりの表情で俺を見るレオ。



 「いえ、遠回しにサバン・オブジェを馬鹿にしただけですよ」



 またひとつ、嘘をついた。

いつも読んでいただきありがとうございます!

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