お、俺これ持ってたしぃ! 嘘じゃねぇしぃ!
――VIPルーム――
「あのサバンとかいう奴、中々面白ぇガキじゃねえか」
オーガスが、ガハガハと笑いながらそう言って肉を食らう。
「はしたないよオーガス……確かに、彼は逸材と呼ばれているけど、僕は次に彼と対戦するミラ学院のコに注目しているんだ」
オーマンは殆ど、にこにことしていて感情が読めない。それ故に彼が注目する選手となると……他の隊長らも気になるところ。
「んまぁ、私はぁ〜? あの魔王様がお認めになった殿方を応援しているけどね〜」
ヘリィがからかうようにリリィへ視線を向ける。
「余り我を揶揄うでない。それに我は魔王じゃ、恋情如きで堕落など……こ、これヴァンピィ! よさんか!」
「これねこれね、パパがママにぷれぜんとしてたのー!」
ヴァンピィがリリィの首から下げる首飾りを後ろから奪取し、自らも持っている首飾りも隊長らに見せつけ、「おそろいー」と自慢する。
「あれれれぇ? 恋情如きがどうかしましたぁ?」
「い、いやこれは……」
「まさか堕落なんて、ねぇ〜?」
ヘリィのからかいに拍車がかかる。
「もぅ、やめるのじゃぁ……」
余りの恥ずかしさに泣きだすリリィ。やり過ぎたとオロオロするヘリィ。相変わらずガハガハと笑うオーガス。やれやれと肩を竦めるオーマン。固まるセラ。じろりとヘリィを睨み、廊下へ連れ出すアルバート。
「んみゅ?」
そして何が起こったのか分からず、取り敢えず泣いているリリィを慰めるため頭をなでなでするヴァンピィ。
「大丈夫なのー?」
「ぐすっ、ありがとうのぅヴァンピィ」
根源に慰められる事に疑問を持つが、可愛らしいので良しとする。そんなチョロめになりつつあるリリィが好きでたまらない隊長さん達であった。
▽
『次の選手前へ』
センス学院 対 ミラ学院、両校互角の成績での戦いの中、遂にこの対戦で勝敗が決まる。
「よろしくね〜」
「……」
サバンの対戦相手は、無口でぼーっと虚空を見つめている不思議系の男子生徒。サバンを見ているようで見ていない。こういったタイプの者はおそらくサバンにとって非常にやりづらい相手であろう。次いでにショタ顔。多分お姉さん方にモッテモテだろう。
『両者構えて』
ーーー相変わらずにやにや顔を崩さないあたり凄いよなと思う
ーーー《彼のにやけ顔とマスターのにやけ顔とは雲泥の差、天と地ほどの差、そこら辺に居るGとエンシェントホーリーレジェンドホワイトソースドラゴン様との差がありますからね》
ーーーなになになにその、エンシェントなんちゃらってのは……あとソースって単語も聞こえたような
ーーー《神界を統べる全能神様のペット様でございますよ?》
ーーーペット様!?
『始めぇ!!』
「風弾」
手始めのサバンによる一撃が飛ぶ。
「……とろ」
中々の速度で放たれた弾を、無口少年が目で弾を追い、身体を後ろへ逸らし躱す。
「こりゃ凄いなぁ」
他人事の様に感心しているサバン。
「んじゃあとびきり速く……風弾・連射」
機関銃の如く強烈なラッシュ。
「はぁ……」
しかし、それすらも無口少年に余裕で躱される。しかも呆れ顔+ため息付きで。
「おーおー、腹立つなぁ〜」
ーーーやったれ無口先輩
そして俺はいつの間にか、無口少年を応援しているのであった。
ーーーある種の同族嫌悪だなこりゃ
ーーー《マスターがGに怒りを向ける事と同じく……》
ーーーやめてよぅ……
「てかあの無口先輩の目の動き、どっかで見たような……うーん」
ーーー自分で答えを出すのもこれまた楽し――
ーーー《“見切り”ですね》
ーーーうぉおい!
ーーー《煩い……相手の動きを人並外れた動体視力と思考で先を読み、あらゆる攻撃に対応します》
「それって……」
ーーー《マスターが無謀にも自ら切り捨てた、神が与えた力を持っていた時にお世話になったアレですよ》
「うそぉん……」
後悔は……してい、ない。
いつも読んでいただきありがとうございます!