動けるくま
ペイント銃を放り投げ、次の銃を作り出そうとするカノン。
「生成」
宙に浮いているパーツが先程よりも多い。
「組立」
カノンが作り出したのは、機関銃。
「安心しな、殺傷能力は無い。ただ、多少の怪我は覚悟してくれ」
隠れ美少女にそう告げ、カノンは彼女に銃を向ける。
「連射」
目で追うことすら出来ない、魔力弾が隠れ美少女へ迫る。
しかし、弾は彼女へ届くことは無かった。
「ほう」
目を細めるカノンの先には、隠れ美少女を守るようにして立つテディベア。
なんとこの熊、弾が隠れ美少女へ届くよりも速く彼女の元へ移動したのだ。
「いけ、私のくまちゃん」
隠れ美少女が熊に命令すると、紅く目を光らせた熊がとても人形とは思えぬ可動域を駆使し、カノンへ迫る。
「むっ!」
予想以上の熊の動きに、驚きつつも何とか回避するカノン。
「確かに、お前の使う傀儡は傀儡らしからぬ動きをする……だが、所詮人形。これ以上の動きは望めまい」
現に、そう言っている間も攻撃されており、カノンは熊の攻撃をひらひらと苦もなく躱している。
「これでは唯の動く的だ……生成」
今度は手に持つ機関銃のパーツも使うらしい。
「組立」
完成したのは、先程の機関銃のパーツを加えた、“重機関銃”。
「さて、これは耐えられるかな?」
なんと、カノンは反動の強い重機関銃を持ち、連射を開始した。
常人ならば、この反動では身体が持たないだろう。しかも、即席での生成のため、その荒い作りのせいで更に反動が強まっていると考えられる。
それをカノンは、易々と使いこなしている。どれだけ自らの肉体を鍛え上げているのであろう。様々な銃を生成して使いこなすには、その銃を使うための強靭な肉体が必要である。反動で多少なり身体が揺れてちらりと見える彼の肉体は、“無駄”を一切排除した完璧とも言えるものであった。
そんな完璧な肉体で使いこなす重機関銃も、使い物にならなくなった。
「……まだ立つか」
土埃が晴れたその先は、傷つきながらも未だ動きに支障が見られない熊。
「仕方ない……生成」
どうやら次で終わらせるつもりのようだ。
「組立」
威力抜群、一撃必殺のロケット砲。
流石にこれは設置せざるを得ない。
「使い物にならなくても悪く思うなよ」
一直線に向ってくる熊に標準を合わせ……
「発射ッ」
今試合で文句なし、最上の一撃。
フィールドが半壊。もしこれを食らったものが人形ではなかったら……誰もがそう固唾をの呑んだであろう。
「終わりだ」
熊はもう跡形もないであろう。
カノンは拳銃を隠れ美少女に向ける。
「降参しとけ」
「必要ないわ」
「なら、これで終わりだ」
自ら負けを認めるのが屈辱なのであろうと、カノンは引き金に指を掛ける。
「それはどうかしら」
「なに?」
突如カノンを襲う悪寒と恐怖。
「………っ!?」
「可哀想に」
「なにをっ………ぐっ! ぁああぁぁあぁあああぁぁあああッ!!」
いきなりもがき苦しみだすカノン。
とうとう苦痛に耐えきれず、意識を強制的にシャットダウンした。
『勝者、ミラ学院!!』
沈黙。呆然。一体誰がこの結末を予想したか。
余りにも不気味すぎる傀儡使いに、殆どが恐怖の念を覚えただろう。
「へぇ」
しかしここに一人、今の状況に似つかない、うずうずして待ちきれない、といった表情をする男が一人。
「ここで勝って雰囲気をぶち壊したら、あの二人、俺のこと先輩として尊敬……いや、崇め讃えるだろうなぁ」
ムカつくイケメン野郎、サバン・オブジェ……出陣。
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