くま
『次の選手前へ』
坊主頭が担架で運ばれ、入れ替わりで出てきたのは、恐らく女子生徒。高身長で猫背で更には、ぼさぼさの長い髪。目元はその整えられていない髪の毛で隠れている。
こういう人に限って美人だというのが、俺の中では定番。
ーーー《また下劣な考えをしていたのですか?》
ーーーは、はぁ!? ししし、してねぇしぃ〜!
何故バレた。
『両者構えて』
沈黙の中、そよ風が吹く。風はケイトの長い前髪を靡かせる。前髪の隙間からは、それはそれは美しいエメラルドグリーンをお持ちのぱっちりおめめ。
「えっ、かっわ――」
『始めぇ!!』
俺の美少女メーターでの測定の結果、学年で一二を争う美貌の持ち主、レシファと同等のレベルの美少女だった。
ーーーそれでもリリィの五百分の一、ヴァンピィの一京分の一だけどなぁ!
「急にどうしたのです? 私にドヤ顔して」
レシファが心底不思議そうな顔をしている。
「レシファ・マリノ、貴女にとって今大事なものは、みすぼらしいモブの顔ですの?」
「そうでしたね、私が今すべきことは試合を見て自分で吸収すること……すいませんツダ君、今貴方のお相手は出来ませんの」
なんかしらないけどフラれた。
「ツダ、お前もくだらん事していないで学べ」
「そうします」
レオにそう促され、試合に集中しようと、対戦する二人に目を移した時……
『勝者、ミラ学院!』
力なく倒れるカラ。遠慮がちに味方の選手に手を振り、嬉しさを表現している隠れ美少女のケイト。
『次の選手前へ』
「あの、レシファさん、さっきカラさんはどうやって負けたんですか?」
余りにも早すぎる終了に、未だ頭の理解が追いつかない。
「突然何者かに後ろから頭を殴られた、または手刀で気絶させられた。そんな崩れ方をしていましたね」
「そうですか……うーむ」
顎に手を当て分析する。
ーーー……さっぱりわからん
「取り敢えずこの戦いで分かるかも知れませんね」
「ええ」
隠れ美少女の相手は、銃を生成し相手にぶっぱなす、ベレー帽がトレードマークの、カノン・アハト。
『両者構えて』
得体の知れない攻撃を受けたカラを見たせいか、普段以上に警戒しているのであろう。両手を広げ、銃生成の構えを取っている。
『始めぇ!!』
攻撃を食らわないよう、取り敢えず走るカノン。
「生成」
早速生成に取り掛かるようだ。
組立
完成したのは、オーソドックスな拳銃。
「……っ」
一瞬立ち止まった時、後ろから何者かの気配を感じとり、横に跳ぶ。
すると、先程まで立っていた場所が砕けた。
その見えない何者かに、着色された弾を発砲する。
やはり弾は被弾し、その何者かの形がほんの一部分だけ浮き上がる。
「ふっ」
それを確認したカノンは、何度も発砲し、そいつの形を完全に捉えることが出来た。
「えっ、これって……」
その姿を見た者は誰もが驚いたのだろう。
「くまさん人形!?」
隠れ美少女は、巨大なテディベアを操る傀儡使いだったのだ。
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