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ファントム

  「すごい……」



 今まで無気力だったレシファも、二人の戦いに目を離せない。



 「はぁっ!」

 「だァあ!」



 両手に炎を纏うカラの拳と、伸縮自在の棒を使いこなす坊主頭との一進一退の攻防が続く。


 どうやら両者攻めるタイミングを見計らっているのか、動きがワンパターン化している。



 「阻む壁(ウォール)



 先に仕掛けるのは坊主頭。後ろに跳び、両手を地につけて魔術を発動させる。



 五メートルはある壁が、カラを取り囲む。



 「ふっ!」



 その壁をカラが炎拳で破壊しようと試みるが、ものの数秒で破損した箇所が修復してしまう。







ーーーん? これってどういう……



 俺は明らかにおかしいその光景に、目を疑う。どうやらレオも思った様で、しかしその後納得したような表情をして薄く笑う。



ーーーおいおい、大胆だなぁ



 遅れて俺も気づき、余りに予想外の動きに目を見張る。







 「大地の洗礼(スパイク)



 坊主頭が地に両手を置いたまま、発動する。



 と、壁の内側から、三〜四本ほどの巨大なトゲが、数秒起きにカラ目掛けて飛び出す。  



 「くっ……」



 何本か回避するが、死角からの攻撃が腕を掠める。



 「終わりだ! 大地の怒号(ラストスパイク)ッ!」



 動きが一瞬鈍ったカラへ、先程の魔術とは比較にならない程の無数の巨大なトゲが一気にカラを仕留めようと襲いかかる。



 会場が揺れるほどの衝撃。巻き上がる粉塵。会場が沈黙に包まれる。



 「こ、殺したのか?」



 観客の誰かが恐ろしい事を言う。


 しかし、そんな観客の疑問に答えるかのような、酷く動揺した坊主頭の表情。



 この有様では確認するまでもない。


 反則負け。殆どの者がそう思うだろう。



 しかし、審判は何も言わない……試合続行。


 それに驚く坊主頭と観客。



 「おい!どういうことだ!」

 「もう終わらせろ!!」

 「何がしたいんだよ!」



 野次が飛ぶ。そして坊主頭は殺したという事実に、精神が追い詰められ、大量の汗をかき、身体がブルブルと震える。



 そんな坊主頭の肩にトンと、何者かが手を置く。



 「なっ……ぁ?」




 彼にとって有り得ない者が目に映る。

 


 「やあ」



 果たしてそれは幻覚なのか。しかし、その手は今も自分に触れている。それに、先程までの野次が嘘のように静かになっている。



 「よかっ、たぁ……」



 安堵する坊主頭は、身体の力が抜け、そのまま意識を落とした。




 『勝者、センス学院!』




 存在するはずのない、カラが突然坊主頭の後ろに現れ、勝利した。多くの物が見ればそう思うだろう。現に今もカラの勝利に盛り上がるものはおらず、何が起こったのか分からない観客が首を傾げている。



 「一体何が起こったのでしょう」



 どうやらレシファにも分からないらしい。


 説明しようと、俺が口を開きかけた時



 「幻影魔術ね」



 レシファの隣にいつの間にか座っているサラブレが彼女の疑問に答えた。




  「いつから居たんだよ」

 「試合開始からよ、モブ」

 


 “モブ”というアダ名が定着しつつある俺。



 「だから俺はモブじゃ――」

 「成程、でも凄いですねカラさん」



 すっかり元に戻ったレシファに台詞を遮られた。



 「でもいつから……」

 「あの坊主頭がデカい壁で彼女を取り囲んだ時よ……最もそれに気がついたのはモブとそのお友達と私を含めたごく一部ね」



 モブのお友達……レオの事だと十秒ほど掛けて気が付く。



 「うぅ、私だけ気が付かなかったとは……」

 「それ程にカラ・リューカの魔術が卓越しているということね。気が付く才能がないのは貴女だけでは無いのよ」



 あまりフォローになっていない余計な一言。



 それに何より驚いたのは、いきなり来て場を支配する彼女のコミュ力(?)だ。俺はまた憧れるべき人物を見つけたのかもしれない。



 



 


 








 


 


 

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