中々の……いやかなりの
さて、一体レヴィはどんな魔術を使うのだろうか。
「おぁ?」
レヴィは構えない。
ーーー何やってんだよっ
案の定、好機と見たリック高校の選手が、間合いをとり安全圏に入り、得意魔術と見られる植物を操り、レヴィを拘束しに、背後から迫る。
しかし……
捕まる寸前、あっという間にレヴィは彼女との間合いを詰め、鳩尾に掌底を放つ。
「かはっ……!」
一撃をもろに受けた彼女は、驚きと重い一撃で、暫く息もまともに出来ないでいた。
「まさかの肉弾戦で勝負すんのかよ」
確かに、初戦で手の内を大っぴらに明かす事はしないにしても、流石に魔術のひとつも使わずに勝負を着けようとするならば、それは決して容易でない。
ーーーつかさぁ、魔術の大会だからねこれ
「あの“縮地”、洗礼されているな……それだけでは無い、あいつの一撃一撃全てが重い」
ため息をつく俺の横で、レオが感嘆の声を漏らす。
「魔術も使えて、尚且つ体術も使えてとなると……相手の方達は厳しい戦いとなりそうですね」
レオに頷きながらレシファが言う。
今現在、相手を魔術無しで圧倒しているレヴィだが、実の所、縮地と掌底……その二つだけで戦い続けている。
「そこが見えねぇ……」
思わず顔が引き攣る。
『勝者、ミラ学院!』
そして案の定、レヴィが勝利した。
見事に二勝し、ミラ学院は次への駒を進めた。
ミラ学院が退場し、入れ替わりで俺達センス学院が入場する。
「お、おめでとう」
すれ違いざまに、俺はレヴィにだけ聞こえるか聞こえないかの声で、一応そんなことを言ってみた。
「どうも」
素っ気なくそう言い、レヴィは行ってしまう。
ーーーこりゃ、確定で嫌われたな
「はぁ、」
本日二度目のため息。
▽
俺達の相手は、強豪と謳われている、ファウス学院。
レオ曰く、幻を使った魔術を得意としているという。
「厄介だなぁ」
そして先方は、マジで俺だった。
「ホントに俺一人で勝ってこいと?」
「クラスに盛大に宣言していたからな」
どうしよう、今もの凄くレオを殴り飛ばしたい。
観客席を見渡すと、しっかりと俺の恥晒すところを見届けまんとするクラスメイトがいる。
だが、俺には共に戦い抜く二人がいる。
ーーーレオ、レシファさん……って、
「レシファさん!?」
「はい?」
「あの、サラブレって人は……」
すっかり忘れていたが、もう一人代表に選ばれていた、サラブレが見当たらない。
レシファにそんなことを言うと、何やら気まずそうな表情になる。
「サラブレさん、予選には微塵も興味無い様子で、私に『私の代わりに試合出てくれないかしら? なに、予選はあのモブ顔の男が一人で方付けるらしいから安心して。出来るか出来ないかは、また別の話になるけど』と仰ってどこかへ行ってしまいましたわ」
「まじかぁ……」
元々自分勝手な印象が俺には強かったサラブレだが、流石に今回のことを聞いて、何も言えなくなった。というか言おうにも言えない。
『両者前へ』
審判がそう促す。
「はぁ、」
止まらないため息のせいか、身体がやけに重い。
俺の相手は、がっしりとした体格の、いかにもラガーマンです。と言ってそうな男。
対して俺は……言うまでもない。
「はぁ、」
その体格差に落胆してまたひとつ、ため息をつく。
同時に、ゴングも響く。
「一気に決めるッ!」
ラガーマンが先にしかけてくる。一直線だが、速い。その巨体を俺にぶちあてる気のようだ。
早くも絶望的な場面。ラガーマンは吹き飛ばされる俺をイメージしたのか、彼の口端が上がる。
そして、俺の身体が、ラガーマンと衝突し吹き飛ぶ……ほど俺は伊達に鍛えてはいない。
観客達には理解出来ているのであろうか、俺が、ラガーマンを片手で受け止めている衝撃の光景を。
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