表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/227

初戦

今自分の書いた話を久々に見返しています。

楽しい。

  「漏れる漏れる漏れるぅ!」



 いよいよ初戦開始という十分前、別に俺達が出る試合ではないと言うのに、異常に緊張した俺は尿意を感じ、トイレへダッシュで向かう。



 「うおっ!?」

 「わっ」



 突き当たりを右に曲がったその時、何者かと衝突した。



 「ごごご、ごめんなさい!」

 「ってて……」



 土下座する勢いで俺は相手に謝罪する。



 「あの、お怪我はありませんか?」

 「大丈夫、大した事ないです。其方こそ怪我はありませんか」



 相手は怒ることも無く、逆に此方を気にかけてくれるという対応。因みに美少年。



 「俺は大丈夫です、本当すんません」

 「気にしないで結構です……それより、お急ぎなのですよね、僕にぶつかる位には」

 


 気が動転して忘れていた尿意が、俺が落ち着きを取り戻すと比例して強くなる。



 「ああっ、そうでした! ごめんなさい、失礼しますぅ!」



 一礼し、再び走り出す。




 「……面白い人」


 

 彼以外誰も居なくなったその場所に、ぶつかった美少年がひとり呟いた。




 ▽



 「何とか間に合った……」

 「丁度始まるところだぞ」



 用を足し終えた俺は、気になる初戦を見届けるべく、レオの隣へ座る。



 「おっ、レシファさんも来てたんですね」

 「おはよう二人とも」

 「おはようございます」



 三人で挨拶を交し、レシファを隣へ座らせる。



 「それにしても、この混雑の中よくここだけ丁度よく空いていましたね」



 探るかのように俺達へ、そうレシファが言う。


 「さ、さぁ? 何故でしょうね」

  「教えてくれないのでしょうか……」

 「認識阻害ですよ」



 レオが早くも口を割る。



 「認識阻害?」



 レシファは勝ち誇った表情をした後、直ぐに不思議そうに首を傾げる。



 「俺の光属性魔術で、ここの席を中心に極小規模の範囲を“人が座っている”と周りの客達に思い込ませました」

 「まぁ! レオさんってその様な芸当も出来るのですね」

 


  手を合わせてレシファがレオを褒め称える。



 「て、提案したの俺ですからね」



 俺も負けじと僅かな抵抗を見せる。



 「あらまぁ、とてもすばらしいですわね」



 小さい子を宥めるかのようにレシファが笑う。



 「俺って一体……」

 「始まるぞ」



 静かに落ち込む俺を他所に、試合開始のゴングが響く。



 「今更ですけど、何処と何処の試合なんですかね」

 「アルファ学院とベータ学院ですわよ」

 「あの二校は言わばライバルの様な関係で、毎年どっこいどっこいの結果で終わる」

 「はえー」



ーーー二人とも良く知ってんなぁ



 感心するが、単に俺が無知なだけなのだと気づく。



 「動きました」



 レシファが言った。気のせいか、レシファが言った()()動いたような気がした。



ーーー凄い目してんな



 戦いは火属性対光属性。両者の力は拮抗している。

  キリがない魔術の放ち合い。



 「これは消耗戦になりそうですね」

 「どっちが持つか……」



 レオとレシファは興味ありげに試合を見守るが、玄人では無い俺にとって、これ程退屈な試合はない。



ーーーもっと派手さが欲しいなぁ



 素人丸出しの考えをする俺を他所に、二人は時折、感嘆したような呟きを漏らしている。



 そしてしばらく経ち、アルファ学院側の火属性の生徒が勝利をもぎ取った。



 「やっと終わったぁ」

 「素晴らしい試合でしたね」

 「ええ、まさかあのタイミングであの判断……中々面白い選手でしたね」



 レシファとレオが先程の試合を楽しそうに振り返る中、俺はなんの話をしているのか分からず置いてけぼり。



 「少し席をはずれますね」

 「またトイレか?」

 「そんなトコです」



 余りにも暇で、少し外の空気を吸いたくたなり、散歩する事にした。



 「おっ、さっきの」  



 歩いていると、先程ぶつかったあの美少年が歩いていた。

 彼はこちらに気がつくと、笑顔で歩いて向かってくる。



 「あ、どうも」

 「君も暇になってぶらぶらしているのかい?」

 「ええ、まぁ」

 「なら少し歩かないかい? なぁに、デートと考えれば問題ないさ」

 「何言ってんすか」


 こうして美少年と俺は、男同士のデートをする事になった。







いつも読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ