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事実

なんか眠くない。

 気が付くと暗闇に居た。


 「此処は……俺の、中か」


 しかし、いつもと様子がおかしい。


 「身体がある……」


 普段此処へ来る時は、手足などが存在せず、意識だけがふわふわと漂っている様な感覚だ。俺は身体中をぺたぺたと触りながら改めて確認する。



 『ようこそ、ボクの中へ』


 

 もう一人の俺の声。


 「どこだっ」


 辺りを見渡すが、見えるものは先があるのかすらわからない、闇だけ。


 『幾ら探しても君にはボクの姿は見えないよ』

  「どういう事だよ」

 

 あらゆる方向から聞こえてくる声。監視されている様で不快感が沸く。


 『んー、今までとは逆のことが起こっている。そう考えれば分かるかな?』

 「逆だと?」


 言葉の意味をよく考える。


ーーーなんだよ逆って……


 そこで、これ迄何度かあった、俺の中に来たことを思い出す。


 「今までと今回の違いは……」


 大きく変わったことは、俺が実体付きでここへ来た事。


ーーーそしてもう一つ


 

 『君にはボクの身体が見えない……でも、ボクには君の身体がよく見える』

 

 そこで、ようやく気が付く。


ーーーくそっ! そういう事かよ


 姿も見えないもう一人の俺へ、睨みつける。



 「乗っ取りやがったな……!」



 悔しげに言う俺を、もう一人の俺が嗤う。


 「返しやがれ!」

 『なんで手に入れたものをわざわざ手放すのさ』

 「くっ、」


 上機嫌な様子の俺。


 『それに、今の君よりボクの方が何倍も価値がある』

 「なにぃ」

 『だって君さぁ……』


 突然、ずっしりと体が重くなる。とうとう耐えきれず、地面に倒れる。


 『自分自身の力に呑み込まれて、挙句の果てにはそれから逃げようとする』

 「くぅ……!」

 『滑稽だよ、君を見ていると見ているボクまで腹が立つ』


 彼の苛立ちが強まるにつれ、体の重みも増す。


  『あっ、そうそう』


 思い出したかのように言う。


 『ボクの本当の正体……そろそろ教えてあげるよ』

 「っ! どういう事だよそれ」


 黙って聞けと、重量が増す。


 「ぐぁ!」

 『先ず、初めに言っておくよ……』


 苦悶に満ちた顔で呻く俺に構わず、話し始める。


 

 『ボクは、生まれながらに存在していた、君の魔力だよ』

 「な、んだ……と」


 いきなりの事実に驚く。


 『リアクションが足りないなぁ〜、仕方ない』


 重圧が解かれた。


 「くっ、はぁはぁ、」

 『これでちゃんと聞けるね』

 「お前――」

 「んじゃあ続けるよ」



 ▽


 十七年前、地球という星の、日本という国で産まれた一人の子供がいた。


 名を津田朱音。


 彼は恵まれた家庭ですくすくと育ち、妹と両親共に不自由無く暮らしていた。




 しかし、数年後、彼は両親を事故で亡くした。


 それからの生活は地獄の様だった。


 引き取ってくれた叔父からの虐待。幸せな生活から一転、二人は明日の命すら危うい生活を送ることになる。


 そしてそんな生活も、“ある事件”が起きて変わり、死んだ叔父に代わって祖母へ身を引き取られる。そして二人は再び平凡な幸せを手にすることが出来た。



 『そして数年たったある日、異世界へと転移した……とまぁ、君が知る事はそのくらいか』

  「俺の知る事実……?」


 含みのある言い方に疑問を浮かべる。


 

 『そして、ここから話すことが……嘘偽りない本当の事実さ』



 もう一人の俺が話し始める。


 『早速、驚きの事実があるんだよ』

 「早く言ってくれ」


 楽しそうなあいつがうざく感じる。



 『君は本来地球存在して良い人間では無い』

 「っ! ……んじゃあ、どこだよ」

 『ここしかないでしょ、身体の魔力が同調するんだから』


 畳み掛けるように、彼は人差し指を立てる。



 『ボクの両親が死んだ事も、実は運命だったんだよ』

 「う、そだろ……」

 『もっと言うと、君の叔父の命も必要になったから、君たちが虐待される事も運命だった。という事になるかもね』

 「なんだよそれ……」


ーーー運命運命って、なんの事だよ一体! 訳わかんねぇ……父さんも母さんも、その運命のせいで死んだってのかよ……!


 怒りと悲しみで身体が震える。


 『そしてまたまた、衝撃の事実』


 どんなに聞きたくなくても、彼の世界なかではそれを許さない。


 追い打ちをかけるように、彼は口を開く……






 『君は、この世界の神として産まれてきたんだよ』








 「……は?」


 その事実は、余りにもスケールが大き過ぎて、余りにも馬鹿すぎて、言葉を失った。

いつも読んでいただきありがとうございます!

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