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寝落ちしました。すいません。

 登校中、レシファとは会わなかった。


 「ん〜」


ーーー先行ったのかな? あの怪しげな雰囲気のまま退場して、今日いきなりいつも通り振舞っていたら逆に怖いよね


 

 学院に着き、教室へ入る。


 「いない」


 時間ギリギリ……そしてチャイムが鳴る。


 「おはようございます」


 結局レシファは教室へ来ず、担任が来た。


 「まさかっ」


 あの時の良くない記憶が蘇る。


ーーーまた攫われて……いや、安易に決めつけちゃだめだ


 努めて冷静に思いつく理由を考える。


ーーー風邪、サボり、怪我とか?


 だとしたら、おそらく担任から始めに話をするだろう。

 今のところ、俺の思いつくレシファが来ない理由は俺の頭ではこれで限界だ。


 「ん〜……んあっ」


ーーーあと一個


 閃いた。


 と、同時に教室の扉が開く。



 「すいません! 遅刻しました」

  「見ればわかります」


 レシファ、登校。

 彼女は申し訳なさそうに苦笑し、クラスの皆は暖かい目で見ている。


ーーー初めての遅刻かな


 レシファを見るが、目が合わない。気づいていないのではなく、意識してこちらを無視している。


ーーーそっか、俺気持ち悪いのか


 静かに落ち込む。



 ▽


 放課後になった。


ーーー一応本当に今日なのか聞いておこうかな


 レシファに声をかけようと、彼女に近づく。


 「何油売ってるのですか」

 「え?」 


 後ろから声がした。


 「さっさと行きますよ」

 

 カスラだ。


 「カスラさんも来るんですか?」

 「あの場所は私が所有していますので当たり前です」

 「当たり前……なんですね」


 話している間に、レシファが姿を消していた。


 「行きましたね」

 「じゃあ、俺達も行きましょう」


  パッと見下校デートの気分を味わいながら、俺達は山へ向かう。



 ▽


 「あっ」


 開けた例の場所。俺は直ぐにレシファを見つけた。


 「来ましたね」

 「はい」

  「そうですか」  

 「はい」


 久々に感じるレシファとの会話。微妙な空気が流れる。


 「早速、貴方を呼び出した理由を説明致しましょう」

 「ごくり」


 一気に緊迫した雰囲気が漂う。



 「貴方に、無属性魔術を使いこなせているかどうかを、試させていただきます」

 「どゆこと」


 いきなりそのような事を言われても、俺はカスラから貰った本を読み、書かれていることの、量として一頁程の知識を学んだ程度にすぎない。


 「俺は基礎を頑張って身に付けましたが、魔術発動までには至っていない。つまり無属性魔術はお遊び程度でも今は出来ないんですよ」


 困ったように言う。


 「それは残念ですねツダ君……なんて、そのような嘘に騙されませんよ」

 「嘘はついてないですよ」

 「()()、ですか」

 「はぁ……」



 他になにをつけと……



 「では、見せてもらいますよ……貴方の今の力を」


 これはもうやらざるを得ない。


 「軽くあしらってやろう!」

 「あ、そういうの私求めてないです」

 「そうですか」


 がっくりと肩を落とす。


 「隙ありです!」

 

 それを先手の好機と見たのか、レシファがいきなりの接近戦をもちかける。


 「え、ちょ!?」

 「はぁッ!」


 驚いたした俺は、接近したレシファからの蹴りを脇腹にもろに食らう。


 「ぐぅっ……!」

 

 二、三メートル吹っ飛んだ。早速重い一撃を受け、よろよろと立ち上がる。


 「強いな、やっぱり」

 「風弾フェザーボールッ!」


 追い打ちをかけるように繰り出される風魔術。


ーーー食らったらやばいな


 すかさず俺は覚えたての新たな魔術を発動。


 「シールド


 基礎で培った魔力放出で、自在に形を変えた魔力が、薄く広がり俺をドーム型に覆う。


 すると、放たれた風弾は盾に当たり、そして消えた。同時に、盾も破壊された。


 「やっぱり薄いとこんなもんか」

 「まだです!」

 

 だそうだ。


 「させない」


 魔術をまだ発動しようとするレシファに、俺はようやく仕掛ける。


 「監獄プリズン


 無数の長い棒が、レシファの周りに降り注ぐ。


 「厄介な……」


 乱雑にぶっ刺さった魔力の棒が、レシファの動きを封じる。


 「……」


 俺は掌から、小さな魔力の弾を生み出す。


 「そーれ飛んでけ」

 

 その弾を全力投球し、一本の魔力の棒に当たる。


 すると、弾が弾かれ、他の棒に、そしてまた弾かれる。

 そうして、何故か速度が落ちない魔力の弾が、寧ろ威力を増してレシファを襲う。


 「あぐっ!」


 右腿に命中した。痛そう。


 跳ね返った弾が再び彼女を襲う。


 「うっ!」


 我ながら酷いことをしている。後数発食らわせたところで、弾を消し、棒を消す。


 棒でよく見えなかったレシファを見た俺は、薄く笑う。


 「はぁ、はぁ……」


 彼女は既に、息も絶え絶えで、しかしまだよろよろと此方へ向かってくる。


 「さぁ、これからですよ」


  その言葉は、強気なレシファの言葉ではなく、何故か楽しそうに言う、俺の言葉だった。

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