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二週間の成果

 「「「「いただきます(なの)」」」」


 本日は俺とリリィとヴァンピィ、そしてレシファの四人で食卓を囲んでいる。


 「むぐむぐ……んくっ、それでどうですか? カスラさんとの特訓は」

 「順調と言って良いですね」


 あの時あっさりと俺をカスラへと渡したレシファだったが、今となっては感謝しかない。


 カスラに修行をつけて貰ってから、既に二週間が経過していた。


 「同じことの繰り返しが多いですけど、やっぱり地道に続けることが一番の近道かもしれないですね」

 

 この二週間で気がついたことをそのまま言う。


 「うんうん、成長しましたねぇ」

 「そうじゃのぅ、一歩一歩の成長が楽しみじゃの」

 「いいこいいこなの」


  生暖かい目で三人が俺に視線を送る。


 「保護者か」


 ツッコミを入れつつミートボールをひと口。


 「ん〜♪」


 成長した事といえばあと一つ、リリィの料理で一々オーバーリアクションせずに、食事を楽しむことが出来るようになってきた。


ーーー何気一番の成長かもしれんな


 自らに感心しつつ、続いて串カツをひとつ。



 「うんまぁあああッ!!」




  ▽


 翌日、休日でも変わらず、早朝にカスラの居るいつもの場所へと赴く。


 「おはようございます」

 「おはよう」


 短い挨拶を交わし、いつもの魔力操作から、魔力の放出を行う。


 「右眼」

 「……」

 「左手人差し指」

 「……」



 今のところ、これは全て難なくクリアすることが出来ている。


 「……では次に参りましょう」


 魔力の放出。


 「よしっ、やるか」


 初めの一つ目の魔力を置く。


 初期の歪な形ではなく、今は凸も凹もない、それこそ怪しい占い師が使っていそうなガラス玉のように綺麗な球体を作ることができる。


 「流石代表、成長速度が他の生徒より頭ひとつ抜けていますね」

 「ありがとうございます」


 感謝の言葉を口にしながら、魔力を置いていく俺だが、ひとつ心の中で謝っておきたいことがある。


ーーーすいません、これ二人でやってます


 というのは、俺の中に居るもう一人の俺と協力し、素早く魔力を放出している。


ーーー一人が体内の魔力を操作し、もう一人が魔力を形成


 

 二十分後、三百個完了。


 「日々の成長を感じる出来です。素晴らしい」

 「どうも」


 褒められる程罪悪感が募る。


 「はいこれ」


 カスラがどうしてか、懐から無属性について書かれたあの本を取り出した。


 「私に、今みっちり教える事が出来る練習はここまでです」

 「え」


 唐突の修行終わりのお知らせ。


 「この本は貴方に差し上げます」

 「良いんですか?」

 「ええ、うちでは使いませんもの」


 受け取り、パラパラと頁を捲ってみる。


 「この本には、今まで行ってきた事を基盤に、様々な応用技術が記されています」

 「なるほど」


 目を通して見る限り、何やら今まで自分や皆が使っていた魔術とは、一味違った代物のようだ。


 「では、私はこれで……陰ながら貴方を応援することにしましょう」

 「ありがとうございましたァ!」


 立ち去るカスラに、その背中に頭を下げる。そして再び本に目を通す。


 「ふぅ、久々に全力でやりたい事が見つかった気がする」


 本を閉じ、取り敢えず朝食を頂きに城へ戻る。


 「腹減ったぁ」 


 すると、思い出したかのように、腹がなる。



 「ツダ君」



 背後から声がした。


 「ん?」


 声の聞こえた方へ振り向く。


ーーー何でここにいんだろ


 「どうしたんです? レシファさん」



 声の主……レシファは、読めない表情で、俺の背後に立っていた。



 「本日の放課後、此処で会いましょう」

  「はぁ」


 いまいち話が読めないが、取り敢えず承諾しておく。


 「それではまた」

 「うっ」


 強い風が吹き、思わず腕で顔を覆う。


 「……居ない」


 レシファの姿は既に無く、疑問だけが俺に残る。


 「まいっか」


ーーー先ずは栄養確保だしよう、腹が減っては何とやら


 様子のおかしいレシファも気になったが、今は朝食優先。一旦忘れて、俺はいつもより速い速度で城へ向かう。


 この時はまだ、まさかあんな事になるなど、一ミリも……いや一ミリ程は思っていた。

いつも読んでいただきありがとうございます!

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