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師弟の朝は早い

寝落ちしました。ごめんなさい。

  翌朝、まだ朝日が昇りかけで、少し薄暗い王国の朝。

 俺は、昨日カスラに言われた通りに、カスラの所有する広い土地に居る。


 「ふぁ〜……」


ーーー朝練あんのか


 未だ眠いまなこを擦りながら、カスラが来るのを待つ。



 「あら、もう着いていたのね」


 数分後、カスラが現れた。


 「おはようございます、姐御!」

 「姐御はやめろと言ってますわよね」

 「はい、姐御」


 溜息をつき、諦めたカスラは、早速指示を出すために俺の方を向く。


 「今日は魔力の放出をひたすら繰り返してください」

 「放出……」

 「ただ放出するのではなく、形を保った頑丈な塊として放出してください」


 更にカスラは条件を出す。


 「遅くても三秒にひとつ、目標個数は三百個。ひとつひとつ綺麗に並べて、百個毎に目印となる色を付けてください」

 「はい」

 「大きさの目安は貴方の拳程の大きさでお願いします……説明は以上です」

 「うし、やるか」


 早速取り掛かる。

 多少歪ではあるものの、球体の形をした魔力を掌から生み出し、地面に並べる。田植えをしているように見えるかもしれない。


 「中々上手いですね」


 カスラからお褒めの言葉をいただく。


 百個目、目印として赤く色を付けた魔力を置く。


ーーーちょっと疲れてきたかも


 多少集中力が必要なため、精神的な疲れが生じる。


 「おや、少し遅くなってきましたね」

 「くっ……!」


 ほんの僅か、ごく僅かのリズムのずれをカスラは見逃さない。


  二百個目として、青い魔力の塊を置く。


 「あらあら、大小バラバラになって……」

 「くぅ〜!」


 大きさもほんの僅かな誤差しかない。


ーーー大きさも速度も全然問題ないのに……くそ、指摘されると悔しいな


 

 こうして、三百個目となる緑色の石をひとつ置く。


 「お疲れ様でした」


 残り百個からはかなり神経を消耗した。


 「つ、疲れたぁ……」


 額に汗を浮かべ、地面に座り込む。


 並べた魔力を見ると、同じ大きさで均等に魔力が並んでいる……ように見える。


 「全然だめでしたね」

 「そうですね」


 放出した魔力を体内へ戻す。


 「あら、そのようなこともできたのですね」

 「まぁ、自分の魔力だけですけどね」


 吸収したあと、土をほろいながら立ち上がる。


 「それでは毎日これを続けて頂きます」

 「朝きついな」

 「貴方が早く完璧にできるようになるまでは続けてください」


ーーーまぁ、効果があるなら頑張ってみるかな


 「因みに、これはなんの意味があるんですか?」

 「これとは?」

 「さっき俺がやった魔力の放出ですよ」


 一応聞いてみる。


 「さあ、私にも分かりません」

 「えぇ……」


ーーーなんでやらせたの


 ですが、とカスラは続ける。


 「何かしらの基礎ではありますので、磨き続けてください」

 「それより、無属性魔術の鍛錬の仕方分かるんですね」


 俺がそう聞くと、カスラは一冊の本を懐から取り出した。


 「屋敷にあった書物です」


 辞書ほどの古びた本。


 「おお、めちゃくちゃ凄い感じしますね」

 「いえ、祖父が恐らくガラクタか何かを安く購入したのでしょう」

 「そうですかぁ」


 少し残念。


 「手っ取り早く習得できるような書物があれば、誰も苦労しませんよ」

 「ですよねぇ」

 「本日はここまでとします。授業中に居眠りをしないように」

 「はい、ありがとうございました」


 一礼して、場をあとにする。



 「……中々面白い方ですね」


 俺がいなくなり、カスラがひとり微笑む。


 

 ▽


 「ただいま〜」

 「お、来たか」


 鍛錬が終わり、急いで食卓に着く。


 「どうじゃった? カスラとやらの教えは」

 「ん〜、まだ分かんないことだらけだね」


 修行のことはリリィに報告済みだ。


 「頂きます……ごちそうさま!」


 約三秒、並べられた朝食を全て平らげ、身支度をする。


ーーーヴァンピィの影響だなぁ


 知らぬ間に早食いまで教えこまれていたようだ。


 「そんじゃ、行ってきます」

 「気をつけてな」

 「んむゅ……おはよ……いってらっしゃい」


 寝ぼけたヴァンピィも見送ってくれる。


 「行ってきますヴァンピィ!」


 元気よく返し、城を出る。


ーーー《あら、眠くありませんの?》


ーーー問題ないぜ!


 それがフラグとなり、爆睡したことによってカスラにしごかれたのは、言うまでもない。

 

 

いつも読んでいただきありがとうございます!

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