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遅れました。ごめんなさい。

  「皆さんずっと待ってたの?」


 あの空間が、時間ごと隔離されていた事を知らない俺は、三人の顔を確認し、目を潤ませる。


 「ええ、マスターが戻ってこられるまでずっと……」 


 そんな俺の反応を見て、勿論クレルは悪巧みを思いつく。


 そして俺は、事実を明かさない……というか嘘を言わず、本当のことも言わないというタチの悪い話を、言葉巧みに投げかけられ、俺はクレルの術中にまんまとはまった。



 数分後、三人に泣きながら土下座をする俺が出来上がった。



 ▽


 「……」


 竜からあの空間の正体を知らされ、クレルの極悪さとの二重の意味でショックを受けた俺は、女神と共に無心で茶菓子をつまんでいる。



 「早く機嫌を戻してくださいマスター」

 「どの口が言ってんだよ」


 ジト目でクレルを睨む。


 「それより、どのようにして結晶を破壊したのです?」

 「話を逸らすな」

 「あら、マスター自身の話ですよ? それを()()()()()()()と比べられては……」

 「あーはいはい! わかったから!」


 いつにも増して面倒くさすぎるクレル。

  試練での精神的疲労もあり、付き合ってられない。


 「だからまぁ、あれだあれ」

 「あれとは……」


 ズイっとクレルが此方へ顔を近づけてくる。


 「っ!?」

 「あれとは、何ですか?」


 顔が熱い。恐らく赤面しているだろう。

 狼狽える俺に構わず、クレルは質問を繰り返す。


 「ほ、ほぼ物理……」


 目を逸らし、そう答えた。


 「そうですか」


 ようやく俺から離れたクレル。


 

 「ふぅ……」


ーーーき、緊張した〜! なに急に!? めっちゃいい匂いしたんだけど……あっ


 


 時すでに遅し。軽く嘲笑したクレルが目に映る。


 「てんめぇコラ」


 声が裏返る。情けなく聞こえたであろう。



ーーーこれ以上は墓穴だ。


 「それで? 物理とはどういう事だ」


 竜が気を利かせてくれたのか分からないが、俺に話を振る。


 「あー、俺って結局火系統の魔術とか、風系統とか使えなかったんですよ」

 「ふむ」

 「でも、魔力自体は自在に形を変えたり、外に出したりできる事が分かったので……」


 竜と神ーずが、悟ったように目を瞑る。


 「“魔力”であの結晶を破壊しました」


 長めに説明すると、体から全体の半分の魔力を球体状に放出させ、破壊させた。


 

 「あれ? 皆さんどうかしました?」


 予想外に反応が薄いため、何故か不安になってくる。



 「……やはり、マスター(ばか)の発想はやはり馬鹿でしたか」

 

 クレルがようやく口を開いた。


 「ごりおし」


 女神も、なんか違うと言った表情をしている。


 「ま、まぁ悪くないのではないか?」


 竜は俺がここへ来て初めて困っていた。



 「俺……なんか変なことした?」

  「「「……」」」


ーーーなんとも微妙な表情だな



 「マスター、宜しいですか?」


 クレルが、何か言いたいことがあるようだ。


 「結論から言うと、マスターが発動した魔術(?)は、無属性と呼ばれているものです」

 「無属性?」


ーーー何それかっこいい


 「いえ、はっきり申して微妙でございます」

 「え……」

 「無属性というのは、どの属性にも影響されず、影響しない属性です」

 「……例えば?」


 テンションが下がりつつも、説明をしっかり聞いておく。


 「水系魔術が火系魔術を打ち消す為に必要な力を、1としましょう」

 「はい」

 「逆に、火系魔術が水系魔術を打ち消す為に必要な力を、3としましょう」

 「ほいほい」

 「無属性というものは、どの属性に対しても、先の例で表すと、2の力で対抗することが出来るのです」


 何となく分かってきた。


 「あー、つまり弱点もなければ、弱点を突くことも出来ないと」

 「そういうことです」


ーーーまじ微妙すぎね?


 「ええ、しかも特別でもありませんし、普通なら使われない魔術ですね」

 「ちくしょう……」


 項垂れる俺を見て、クレルが微笑をうかべる。


 「くれる、ここあきた。かえろ」

 「そうですね、用も済んだことですし丁度良いですね」

  「んあ、もう帰る?」 


 クレルが魔界で出して見せた、歪みをここでも出す。


 「達者でな」


 竜が少し笑いながら見送ってくれる。


 「おじさんばいばい」

 「ありがとうございました……うへぇん」

 「ではまたいつか」


 

 ▽


 歪みの中で、俺はまだしょげていた。


ーーーはぁ、強くなるつもりが、逆に弱体化するとはな……リリィになんて言ったらいいか



 「ま、頑張ってください」


 他人事のようにクレルが言う……実際他人事だが。


 「だって元の方が強かったんだよ! 修行してくるわって魔界出てって、弱くなってどうすんだよ!」


 興奮気味に嘆く俺。


 「今のマスターを見たら、魔王はどんな反応をするのでしょうね」

 「そりゃ、あの時より普通だったら弱くなってるんだから、落胆するでしょ」

 「ぷぷっ、無双チートから急降下……弱くなりますよ普通なら」

 「ムキー! 笑い方ムカつく!」


 


 「普通なら……ですけどね」

 「なんか言ったか?」

  「キモイと言いました」

 「突然なんだし!?」


 俺が憤慨していると、歪みに明かりが差し込んできた。


 「もうすぐ着きますよ」

 「ねむい」

 「長かったぁー!」


 俺にとって、久々の魔界。


ーーーはぁ、リリィの料理食いてぇ



 タイミングよく、腹が鳴る。

 


 そして



 ―――目の前が真っ白になった―――




 

いつも読んでいただきありがとうございます!

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