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ゆっくり待ちましょうか

 「行ったな」


 朱音が落ちていくのを確認し、歪みを閉じる。


 「中々の技術ですね」


 見届けたクレルは、竜にそう声をかける。


 「長生きして培った力だ。お前達には到底及ばぬがな」

 「比べることがおかしいのですよ」

 「神界の奴らは相変わらず、口が悪い」

  「はて?」


 本気でとぼけているのか、よく分からないクレルに、竜は苦い笑みを浮かべる。


 「とりあえず、あの小僧は暫く戻って来まい」


 と言い、竜が何も無い床に、ちゃぶ台と座布団をポンと作り上げた。


 「面白い術ですね」

 「このような芸当、誰にだって出来る」


 話しながら、二人は座布団に座る。遅れて、女神もトテトテと後を追うようにして座布団につく。


 「クレル、ふつう、わたしがさき」

 「大変失礼致しました」


 少しむくれる女神に、ぺこりと頭を下げる。


 「女神は、この小さい娘か?」

 「ええ」

 「ちいさいゆうな、わたしはこれでもせいたい」

 「……見かけによらぬな」


 と言って、竜は女神にお詫びとして、焼き菓子をやる。


 「おお……!」


 焼き菓子を見た女神は、きらきら目を輝かせる。


 「ははは……」


 これには思わず乾いた笑みを浮かべる。


 「……それにしても、あの小僧、()()()()は膨大だな」

 「唯一の取り柄です」

 「ひどい言い方だな」

 「嘘を言ってどうするのです?」

 「しらん」




 神ーずと竜は、このまま、和やかに茶会をするのであった。




 ▽


 「っててて……くそっ、あのおっさんめ!」


 謎の場所に閉じ込められてしまった俺は、渡された結晶を睨みながら悪態をつく。


ーーーケツ痛てぇ


 「こうなったらさっさと壊して戻ってやる」


 痛む尻を擦りながら立ち、結晶に向う。


 「火弾(ファイアーボール)ッ!」


 掌を前に突き出し、発動を試みるが、何も起こらない。


 「忘れてた……」


 性能付与が無いいま、俺は魔力だけを有した、ただの人だ。


 「どうすっかなぁ〜」

 

 若しかすると、これはピンチなのかもしれない。


「ん〜〜〜……」


 暫し考える。


 

 「だはぁ!」


 長考したが、何も思い浮かばない。



 「いや待てよ?」


 この時、ふと思い出した。


ーーーあの時を思い出せばなんとかなるかも


 「試験の練習時……森の中での出来事」

 

 俺が学院で初の実を試験をし、学院長に呼び出されたあれだ。



 「イメージが大事、イメージが大事」


 クレルに習った事を、反復して思い出す。



ーーー先ずは魔力を掌に集中……


 すると、身体にある魔力が、右手に移動する感覚を覚えた。


 成功だ。


ーーーよし、次は……それを具現化


 魔力を体外へ出してみる。


 「おぉ」


 靄がかった球体が、掌に浮かんだ。


 これも成功。


ーーーこれを、火の玉に変化させる



 火をイメージするが、何も変化は起こらない。


ーーーもう一度……!


 さらに集中させるが、何も起こる気配がない。


 「くそ〜、行き詰まったなぁ」


 大分精神力を使い、疲労した俺はばたりと倒れる。


 「やばいなこれ」


 魔術が使えないことが、重大だった。という事にやっと自覚する。


 「ちょっと寝よ」


 このままやっても、どうせ無駄に体力を消耗させるだけだと、眼を閉じながら思うのであった。



 ▽


 「小僧はどうなっとるかの」

 「まぁ、不貞寝でもしているのでしょう」


 竜と神ーずの茶会に戻る。


 「さぁて、出てこれるのかの」

 「どうでしょうね、マスターは馬鹿ですから……」

 

 クレルの言葉に、竜が苦笑いする。


 「辛辣だのぅ」

 「……馬鹿ですから、だからこそ我々の想像を超えた、馬鹿特有の方法で突破するのかも知れません」


 言葉の続きを聞き、竜が今度は目を見開く。


 「珍しいな」

 「何がです?」

 「なんでもない」


 混沌とした景色の中、話に花を咲かせる(?)二人と、夢中でお菓子をカリカリ頬張る一人との茶会は、朱音の苦戦中、まだまだ続くのであった。

いつも読んでいただきありがとうございます!

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