おぉ! お、おぉ……おお?
「うぅ……」
光が収まり、ゆっくりと目を開く。
「おぉ……」
明瞭になった視界で辺りを見渡す。
ここはもう人間界。
ーーー遂にまた来たのか……でも
「ここ何処?」
だだっ広い草原のど真ん中で思う。
見渡す限り続くのは、何も無いただの草っ原。
「つか、魔界とほぼ世界観は変わんねぇもんな」
「何しているのです駄マスター、早く行きますよ」
「おそい」
と、いつの間にか少し離れたところに、クレルと女神がこちらを呼ぶ。
「今行くわ」
ーーーつっても、行く宛てあんのか?
「ありませんが」
「無いのかよ……」
二人に追いついた直後、俺の心の呟きにクレルが最悪の答えを言った。
「どうすんのさ、周りになんも見えないところで」
「歩くしか無いでしょう」
「アカネ、やっぱりばか」
ーーームッか〜! なんで俺が責められるんだい
「こうなったらやってやらぁ!」
俺はヤケになり、ズカズカと歩き始める。
「それでは、私達は飛んで行きましょうか」
「うん」
「あんのかよ他の方法!!」
▽
約十分で最寄りの街へ到着した。
「いや〜、すげぇな二人とも」
「我々にとっては極当たり前の事でございます」
「よゆう」
ここまでの移動手段は、翼での飛行。
クレルと女神は大きな翼を持ち、目立たないように姿を消してここまで飛行してきた。因みに俺は、クレルにお姫様だっこしてもらい、飛ばせてもらった。
ーーーちょっと怖かった……
「さて、ビビりマスターは置いといて……」
「心を読むな」
「ここは何という国でしょうか」
言われて俺も街を見渡す。
少し離れた場所に、大きな城のような建物が見える。
「街の規模的に……城郭都市かな?」
サタニウス王国の城郭都市と、似たような造りをしている。
「そのようですね、マスター、そこら辺で聞き込みしてきてください」
「えぇ、なんでだよ……俺人見知りなんすけど」
「いいから早く」
「……はい」
クレルのひと睨みで、一瞬で俺の反抗心は砕け散った。
「あの、少しいいですか?」
「お、なんだい兄ちゃん」
近くの店に入り、店員に声をかけた。
店員は中年の男性で、俺に気づき近づいてくる。
「えっと、此処ってお土産とか売ってます?」
「ああ、それなりにはな」
「じゃあ、この国の名前が付いているお土産ってあります?」
店員は少し待っていろと、品物を探しに行った。
ーーー我ながら中々いい作戦だな
ド直球に聞くと流石に怪しまれる。なので、別の方法で聞き出してみることにした。
「あった、これなんかどうだ?」
持ってきたのは、“スーン焼き”と書かれた、饅頭のようなものだった。
「す、スーン……!?」
「お? どうかしたか」
「ああいえ、どうもいまいちピンとこないんですよねぇ……」
「悪ぃな、ウチはあと、これしか売ってねぇな」
「そうですか、ありがとうございました」
「おう、また寄ってくれよ」
適当な台詞を並べて店を後にする。
ーーースーン王国か……俺にとっての始まりの場所か
「分かったようですね」
「うん、まさかもう一回この国に来るなんてね」
「取り敢えず、更に情報を集めましょう」
「と、言いつつ俺に任せる気満々だな」
「肉体労働はマスターが基本でしょう?」
「へいへい、そこら辺に座って待ってろよ」
ーーーてか、他に情報集めるって、何あんだ?
そもそも、あの二人は行くべき場所を知っていてもおかしくない。
ーーー若しかすると遊ばれてる? ……有り得るな
考え事をしながら歩くなと、大人が言っているだろう。
悪い人にぶつかると、自分が危ない。道を歩く時も用心すべし。
「わふっ」
下を向いていたため、何かとぶつかった。
「ご、ごめんなさい」
「ああ?」
ぶつかったのは、俺の二倍はあろう体格を持つ男。
「てめぇ、どこに目ェ付けてんだこらぁ」
「ひぃ!」
「俺はよォ、今すっげぇイライラしてんのよ」
「え、あっ、その……」
「ぶちのめしていいよな?」
「っ!?」
思い切りガンを飛ばされ、竦み上がる。群衆は、その様子を見てザワつく。が、誰も大男を見て、それに挑もうとするものはいない。
「やめい!」
その時、群衆の中から、何者かが声を上げた。
それを見た周りは、
「おぉ……」
「ナイスタイミング」
など、安堵の表情を浮かべながら言葉を掛ける。
ーーー一体誰だ? めちゃくちゃ勇気のある人だな
「なぁ!?」
その人物の姿を見て驚く。
そいつは仁王立ちをして言った。
「我が領域での安寧を乱す者は、軽い罪では済まさんぞ!」
ーーーえぇ……うそ
「我はこの国の民を愛し、民に愛される者……アルド・スーンである!」
俺を利用しようとした男であった。
いつも読んでいただきありがとうございます!