ダンジョン攻略(四)
「じゃあ、開けるぞ」
牛頭を倒した俺は目の前にある扉を開けた。
そこは体育館程あるかなり広いエリアだった。
その中心には、豪華な飾り付けが施された一本の杖があった。
ーーーアレが攻略の証か?
ーーー《はい、間違い無いでしょう》
俺はそれに近づいて、それを取ろうとしたその時だった
「ウォォォォォオォォン!!」
「な、なんだ!?」
突然の咆哮に驚いた俺は、後ろを振り向いた。
……そこに居たのは美しい銀狼だった。
その体毛一本一本が目を見張るほど美しく、俺が人間界で遭遇した狼の魔物よりも一回り小さいが、それを遥かに上回る程の威圧を放っていた。それにその魔物の目は、ほかの魔物とは違い、どす黒い物が混じったような赤では無い。紅い宝石……ルビーのようなこれもまた美しい紅だ。
ーーーっ!? ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!
その時俺は直感した。
この魔物こそが本当の強者であることを。
ーーー《恐らく、あの銀狼がこの最後のフロアを守護しているのでしょう》
ーーーそんなことは分かってる!? でも………正直勝てる気がしない
そう思っていた時、銀狼が俺に襲いかかってきた。
「ぐっ、あぁぁぁぁあ!!」
俺はそれに反応出来ず、身体を切り裂かれた。
「クソ……睡眠!!」
「グルァ!」
「ぐぅぅぅう!」
しかし、銀狼には効かなかった。
「はぁ、はぁ……ぐっ、毒!」
「グァア!」
「かはっ……」
銀狼に体当りされた俺は壁に打ち付けられ、力無く崩れ落ちた。
それから俺は何も出来ずに、ただ銀狼に攻撃されるだけだった。
「うっ、ぁぁ……」
「グァ!?」
しかし、どれだけ傷付けても再び立ち上がろうとする俺に、銀狼は驚きを隠せないでいた。
「うっ、はぁ、はぁ……ま、待ってろよリリィ……はぁ、うっ、コイツぶっ倒して、戻ってくっからな……」
「グゥゥ……」
そんな朱音の様子を見て銀狼は哀れに思ったのか、全身に力を込めた。
次の一撃で終わらせるつもりのようだ。
………そしてその力を解き放ち、銀狼は朱音に襲いかかった。
「グルァァァア!!」
「うっ、あぁ……」
朱音の身体を銀狼の一撃が貫こうと迫り来る。
パッパカパーン
と、突然この状況に相応しくない、間抜けな音が聞こえた。
……その時、世界が静止した。
▽
ーーーな、なんだ……何が起こったんだ?
いきなり起こった事に俺は混乱した。
するとクレルが、
ーーー《我が神がマスターにせめてもの償いとして送った力、寄贈品の影響です》
ーーー寄贈品?
ーーー《はい、只今マスターに詳細を送ります》
送られた情報は
寄贈品
―――これは津田朱音が命の危機に関わらず、危機的な状況に陥った場合のみ一回だけ使用することができる『魔法』である。なお、今使用する事が無くても後に危機的状況に陥った時、また使用するかどうか決めることが出来る
«寄贈品を使用しますか? 〔YES/NO〕»
ーーー魔法か……今この状況を打破するにはこれしかない………分かった、YESだ!
«かしこまりました。寄贈品を発動します»
すると、俺の頭の中のイメージの中に一つの宝箱が映し出された。
ーーーこれを開けろってことか?
そう思い、俺はそれを開けた。
その中身は……
«どれかお好きな『魔法』を選択してください»
ーー蘇生……生きている物ならばどんな物でも蘇らせることが出来る魔法〔ただし、対象一つにつき一回のみ〕
ーー能力付与……この世界に存在しない能力が付与される
ーー破壊……魔術を発動させる前にそれを破壊することが出来る能力
ーーー………一つ目は先ずないな。二つ目は説明があれだけだからよく分からん。三つ目は……多分あいつの魔術を封じたところで勝てる気はしない………じゃあ二つ目以外今の状況は打破できない。でも二つ目が一番不安なんだよな………
悩みに悩んだ結果、俺が選んだのは
ーーー能力付与、これにする
«かしこまりました。能力付与を発動します»
すると、
«情報確認中……完了。使用者 津田朱音 男»
というメッセージが流れてきた。
«寄贈品から能力付与の使用を確認、能力の設定に移ります»
いつも読んでいただきありがとうございます!