女神様
「さ、早く終わらせましょ」
フロウイベントの翌日の放課後、いつも通り、俺とレシファは学級委員の仕事のため、教室に残っていた。
「今日って何すんでしたっけ?」
「えっと、生徒会から届いたプリントの整理ですよ。しっかりと覚えましょうね」
ど忘れした俺に、プクりと怒った振りをして教えてくれる。
ーーーなんか、初めの頃とは随分変わったよな
入学直後の自己紹介での、近寄り難い雰囲気は和らぎ、良い意味でポンコツになった。
ーーー何だよ“良い意味で”って
「てか、毎回思うんですけど」
「ん? どうかしました?」
「俺らの仕事って、ほぼ生徒会のパシリですよね」
今回の仕事もそうだが、俺達がいつも仕事をしている内容と言えば、生徒会で使う備品の補充や、生徒会が出した荷物の処分など、学級に貢献する仕事は全くと言っていいほどしていない。
そんな愚痴をこぼす俺に、レシファが少し笑いながら、
「まぁ、それくらいしかできる仕事がありませんもの」
と、もっともな返答をする。
「それもそうですね」
「それに、今の私達は仕事を選んでいられる程の実力もありませんしね」
「ハ、ハイ」
まるで俺が説教をさせられているようだ。
「と言っている間に……はいっ、私の分の仕事は終わりましたわよ」
「うそっ!?」
作業をしている素振りは見えなかったのに、気がつけば、乱雑に山のように積まれたレシファの仕事(これでも半分)が、ぴっちりと、同じもの同士に分けられて整理されていた。
「俺まだ三分の一も終わってない……」
「仕方ありませんね、半分だけ手伝ってあげますわよ」
「本当ですか!?」
「ええ、いつも通り任せてください」
そう、これは毎度のことだ。
ーーー違う、俺が遅いんじゃない。レシファさんが異常に速すぎるだけだ……ほら、もう終わりやがった
果たして何秒かかっただろうか。
その次元の作業速度に、いっそ恐れを抱く。
俺がプリントを渡した直後、残像が見えるほどの速度で、あっという間という言葉では片付けられない程の時間で終わらせてしまう。
「す、凄いっすね」
「こーら、ツダ君も早く終わらせてください」
一体どうして、この力が実戦で活用されていないのか。
ーーー身体強化したら、ホントマジで敵無しだな
そう思いながら、俺はレシファにとって遅すぎる速度……だが、しっかりと確実に作業を終わらせていく。
▽
「ん〜〜っ……やっと終わったぁ!」
「お疲れ様です」
終わった頃には既に日も沈みかけていた。
「すいません、毎度俺のせいで遅くなってしまって」
「いえ、私は問題ありませんよ」
笑顔で言うレシファに、
「別に先に帰って良いですのに」
と、何となく言う。
すると、
「良くないですっ!」
何故かムキになったレシファが、そう反論する。
「どうしたんです? 何か事情でもあったのならすいません、気の利かない事言って」
「そ、そういう訳ではないのですが……」
「え? じゃあどういう……」
俺がそう聞き出すと、恥ずかしそうに手を後ろに組み、上目遣いでこちらを見つめてくる。心做しか、頬に赤みが差している。
「だって……」
ーーーごくり
「は、初めて出来た特別な友人なのですから……気にかけるのは当然でしょう?」
「ふごぉ!」
今までの学院美少女達をぶち抜いた、圧倒的なかわゆさに、目からお水がポタリ。口から血がドプリ。
「天使! レシファさんマジ天使!」
「もうっ、からかわないで下さいまし」
「さぁ、早く帰りましょう、もう日が落ちますよ」
「ええ、帰りましょ♪」
上機嫌に微笑むレシファを拝みながらの下校は、最高すぎました。
▽
「ただいまー」
昨日の出来事があり、インパクトのありすぎる魔王が頭から離れないでいたため、扉を開けるのを少々躊躇った。
が、流石に昨日の今日でそんな頻繁に厄介事はないだろうと、しっかりフラグを立てながら扉を開けた。
そして、
「おかえりなのじゃ」
「まじかよ」
言ってくれたリリィの隣……そこには、またしても見知らぬ美女が、一人ではなく、今回は二人居た。
「こ、此方の方も魔王様なの?」
恐る恐る、リリィに聞く。
「いや、全く違うのじゃ」
その言葉に、ほっとするが、未だ警戒は解けない。
見た目は二人とも金髪。一人はリリィの座るソファに座っており、もう一人はその隣で立っている。
ーーー主従関係かな?
座っている金髪は見た目十四歳のゆるいカールをした激カワ少女。立っている金髪は見た目二十歳で、眼鏡をかけているインテリ系美女。
二人の特徴を分析していると、二人が俺の前に横並びになった。
「……」
ーーーな、何するんだ……!?
「どうも、女神です」
「クレルです」
二人は無表情のまま、ロリ、眼鏡の順に手を挙げた。
一方俺は、二人の名前を聞き、頭が大パニック。
「二人合わせて」
「「神ーずです」」
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