魔王二号
すいません、寝落ちしてしまいました(泣)。
「レオ、ちょっと良いですか?」
「あ?」
先程の出来事についてじっくり話し合おうじゃないか
レオと廊下に出て、瞬間に詰め寄る。
「どういう事ですか……!?」
「なんかあったか?」
「とぼけないでくださいっ……!」
「あ?」
本当に自分が何したか、自覚がないらしい。
「だから、さっきみんなに言ったことですよっ……!」
「おん? あっ、ああ、アレのことか」
やっと思い出したかのように、手をポンと叩く。
「それがなんか問題あるか?」
「大ありですっ」
「ふ〜ん」
自分が起こした問題なのに、興味なさげに頷きやがる。
「そもそも、俺が全部倒すって事は、決まっている順番を崩すことになるんですよ」
「はぁ……」
何故か、心底残念そうにレオが、ため息をつく。
「な、なにか?」
「そもそも、元の作戦は、俺が初っ端からぶっ飛ばして相手をボコす。そして万一倒れたら、後ろのやつが残りを片付ける」
そう、作戦を振り返るレオ。
「んなめちゃくちゃな作戦あると思うか?」
「そうかもです……けど、上の人が提案して、それで決定したわけで……」
「その上のやつ……副学院長だったか? そんな奴があんなヘンテコな作戦を考えるはずねぇだろ」
「どういう意味ですか?」
「だから、自分達で作戦の穴を見つけられるのか、試しているんだよ」
レオの言葉に、稲妻で打たれたようなショックを受ける。
「な、なんだってー!」
「……」
「あ、ハイどうぞ続けてください」
レオは仕切り直すように、咳払いをひとつ。
「だから、作戦を変えることは、何の問題もない」
「そういう事だったんですね」
レオの理解力に、改めて感服していると、チャイムが鳴った。
「戻るぞ」
「は、はいっ!」
見直したと言うように、笑顔で俺は返事をして、レオを追う。
が
「ん?」
ーーーちょっと待てよ……
そもそもレオは、副学院長が提案した、ガバガバの作戦を指摘しただけで、俺に降りかかっている問題については、一切触れられていない。というか、あの作戦のレオの位置を、俺に変えているだけでほぼ変わっていない。
「ぐぬぬ……」
騙された。というか、こちらが気づかなかった。
行き場のない怒りに、ただ拳をプルプルさせるしかなかった。
▽
そんなこんなで一日が終わり、途中まで下校しているレシファと別れ、城へ帰宅する。
「ただいまー」
いつもの様に、扉を開けると、
「ん?」
美女がいた。
リリィと向かい合って座る、赤髪ストレートロングの、お姉さん系の美女。スラリとした身体だが、キュッと肉が引き締まっている。
「ども」
ぺこりと軽く頭を下げる。
「あー、彼が例の……」
どうやらあちらは、俺を知っているらしい。
「ただいまなのじゃ、此方の方はフロウ・ハデスさん、お客様といった感じかの」
リリィがそう、美女を紹介する。
「初めまして、フロウ・ハデスだ……」
ご丁寧に自ら名乗ってくれる。
そして次の言葉に、俺は驚くことになる。
「サタニウス王国の隣……デモン王国の王として君臨しておる」
「ふぁっ!?」
魔王様が、一体魔王様にどんな用事が……魔王同士の話し合いという事は、何か重要な問題でもあるのか……
そう考え込んでいると、
「デモン王国とは、昔から同盟を組んでおってな、フロウさんは我の姉のような存在なのじゃ」
ふと、改めて二人を見ると、堅苦しい空気は流れておらず、和やかな雰囲気が流れている。
「デモン王国の魔王様は、いったいどうしてこの国に?」
「え? お茶しに来ただけだが」
何かおかしいか? といったように、フロウが言う。
「そ、そうですか」
魔王はみんなこんな感じなのかと、苦笑いする。
「じゃあ、俺は自室に戻りますね」
と、退室しようとすると
「待て」
「っ!?」
ゾクリと、背中が粟立つ。
レオとは比較にならないほどの、圧の方向へ恐る恐る振り向く。
「逃がさんよ?」
やはり圧の正体は、フロウ。
「……」
久々の本気で味わう恐怖に、全神経が緊張する。
「さあ、お茶をしようか」
圧は消さず、パッと笑顔になる魔王が、そう、俺を追い詰めるかのように言った。
「わ、かりました」
「宜しい」
消えない恐怖心を感じながら、俺はずっしりと重くなった足を、ゆっくり前に出した。
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