うらやま
「ねね、お兄ちゃん」
「おっ、どうした?」
今日は休日を満喫中。
自室のベットの上でゴロゴロしていると、ヴァンピィが部屋に入ってきた。
「ヴァンピィね、お友達たくさんいるのー!」
にっぱっと笑顔で自慢する。
何かと思えば、友達が少ない俺への、無意識な精神攻撃をしに来たようだ。
「おう……それは良かったな!」
悟られないように、こちらも笑顔で返す。
「お兄ちゃんは友達何人いるの?」
「ぐふぅ!」
相当な威力の攻撃をくらい、胸に手を押さえる。
「んむゅ? どうしたの?」
「な、なんでもないです……ですからこれ以上はご勘弁を……」
不思議そうに首をかしげるヴァンピィ。
「ま、いいの! ……それよりね」
それはどうでもいいと、ヴァンピィは改めて笑顔を輝かせる。
「お兄ちゃんに、ヴァンピィのお友達を紹介したいの!」
ーーーな、なんだってぇえええ!
まるで彼氏を紹介するような台詞。
「ど、どこにいるんだい? お友達とやらは」
因みに今の俺は、ヴァンピィのお友達については全く知らない。
「呼べば来るの」
「呼べば来る!?」
ーーーど、どういうことだ? 呼べばくる? た、確かに不可能なことではないけど、距離が離れていたらどうやって呼ぶんだ?
「他にどんな特徴が?」
「んー、かっこいいの!」
「お、お兄ちゃんとどっちがかっこいい?」
ヴァンピィは迷わず、
「どっちもなの!」
優しい返答をしてくれる。
ーーーくそっ! 俺と同格だと!? 一体どんな小童じゃこらぁ!
「は、早くお兄ちゃんも会ってみたいなー!」
「分かったの!」
するとヴァンピィ、そう言って窓を開けた。
「ん? どうした」
ヴァンピィの行動を不思議に思っていると、
「パタさ〜ん!」
誰かの名前を外に向かって、大声で叫ぶヴァンピィ。
「ど、どうしたんだ?」
「へへっ、ちょっと待っててなの」
先程からずっと、頭が混乱しっぱなしだ。
「あっ! 来たの!」
数分後、ずっと外を眺めていたヴァンピィが、そう言って空を指差す。
「ん? 何かあんのか」
気になりヴァンピィが指す方を見上げる。
「うおっ」
見えたのは、空の王者と思わせるほどに、悠々とした大鷲。
「もしかして……あれ?」
「そうなの!」
元気に頷くヴァンピィに、内心ほっとする。
ーーーつか、グリフォンみたいでめちゃくちゃカッコイイじゃん
ヴァンピィの友達なのであれば、魔物だからと警戒はしない。
寧ろ、男心をくすぐるその姿に、思わず見とれてしまう。
鷲は少しの間、空を旋回した後、ゆっくりとこちらへ向かってきた。
『元気にしていたか?』
「うん!」
二人はいつもの会話を交わし、ヴァンピィがパタさんに抱きつく。
ーーーああ、うらやま……じゃなくて!
「喋れんの!?」
『む?』
渋い大人な声に驚く。
『お主はヴァンピィの保護者であるか?』
「あっ、はいそうですけど……」
『挨拶が遅れて申し訳ない、現在私はヴァンピィの従魔として仕えている。パタさんと呼んでくれ』
何とも礼儀正しい魔物……パタさんに、自分より礼がなっているなと尊敬していまう。
「お、俺は津田朱音といいます。いつもヴァンピィがお世話になっております」
恭しく頭を下げる。
「あの、パタさんは一体何者なんですか?」
純粋に気になることを聞いてみた。
『私は神獣と呼ばれるものだ』
「あー、納得だわ」
そして更に気になる質問をいくつかして、パタさんも質問にしっかりと答えてくれる。
そして話はヴァンピィの近頃の様子に移り変わり、二人で盛り上がる。
「へぇー、色々とご迷惑かけているようで……すいません」
『心配無用。私が好んでやっていることだ』
「では、パタさんがなにか困ったことがあったら、いつでも俺に言ってください。微力ながら力になれると思います」
『その時はよろしく頼む』
ちらりと外に視線をやると、いつの間にか日が落ちかけていた。
「おっと、結構長い時間話し込んでしまいましたね」
『うむ、中々有意義な時間であった』
パタさんはそう言って、窓から飛んで行った。
「ふぅ……」
誰かとこんなに話し込んだのは、もしかしたら初めてかもしれない。
「あっ、ヴァンピィ忘れてたっ」
すっかり置いてけぼりにしてしまっていた。
「ご、ごめんヴァンピィ……」
そう言いながら、ベッドを見ると、
「むにゃむにゃ……」
幸せそうに眠るヴァンピィが居た。
「また今度、違う友達も紹介してくれよ」
静かに言い、そっと頬を撫でる。
「えへ〜……」
あまりの可愛さに、悶絶しそうになる。
「ふぁ……」
ヴァンピィの眠る姿を見て、此方も眠気を誘われたようだ。
「こんな時間だけど……いっか」
ヴァンピィを起こさないよう、ベッドに潜り込む。
「おやすみ」
あっという間に過ぎた一日。だから夢を見て思い切り遊んでやろうと、重い瞼を閉じ、意識を落としてゆく。
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