ダンジョン攻略(三)
バトル入れました
あれから更に三時間、俺は魔術を使いまくって魔物を倒していった。
そして、魔術を強化した結果、
ーー睡眠〔極大〕
ーー探知〔半径百メートル以内〕
ーー毒〔大〕
ーー身体強化〔極大〕
ーー隠密〔大〕
という感じにさらに強化された。
ーーーやっぱり〔小〕の時とは雲泥の差だな
魔術が強化される前とされた後では、かなり使い勝手や効果時間などが違っていた。
例えば、睡眠は魔物によっては、どんな事をしても全く起きる気配がなかった。効果時間は、測る前に仕留めるので詳しくは分からないが、相当長くなっていそうだった。
探知は、表記されている通りだが、使い方によっては、〔半径百メートル以内〕と書かれているので、そこまでならどんなに遠くのものでもハッキリと物が見えるという特徴もあるのだ。それが意外と便利だった。
毒は、〔小〕の時は相手が痺れたりするだけだったが、〔中〕からは、弱い魔物ならば少し時間が経てば殺すことが出来た。又、〔大〕からは、弱い魔物ならば行使してから数秒で殺し、そこそこ強い魔物なら少し時間が経てば殺すことが出来た。
身体強化は……単純に運動能力とパワーがめちゃくちゃ上がった。以上
隠密は、今まで通り、姿を消す時間が上がった。更に、足音、気配を抑える効果も追加された。
ーーー《猿から人へ進化した感じですね、マスター》
ーーーお前ってたまに、サラッと酷いこと言うよな
ーーー《? 何がです?》
ーーー天然かよ……
そんなクレルに少し呆れつつ、俺は探知を使って魔物を探した。
すると、
ーーーなんだ!? 馬鹿でかい奴がいるぞ!
詳しく見ていると、その魔物は大きく立派な扉の前にいて、それを守るように佇んでいた。
ーーー《どうやら、その魔物の先に何かある様です。恐らく、そこがダンジョンの最終フロアです》
ーーーじゃあ、避けては通れないって事か………
ーーー《そうなります》
俺は覚悟を決め、そこに向かった。
▽
そこには、巨大な魔物がいた。
頭は牛で、筋骨隆々の身体の魔物……牛頭がいた。
ーーーで、でけぇ……
ーーー《何を言っているのですマスター、ただ少し図体だけ大きな魔物ではありませんか》
簡単そうに言ってくる。
ーーーお、お前ぇ、ただ見ているだけだからいいと思いやがって……
ーーー《いえ、実際マスターは少しはお強くなりました。今のマスターならば倒せない相手ではありませんよ……それに、この魔物を倒さなければ次へは進めません》
ーーー……そうだな、分かった、行ってくるぜ
俺は牛頭の元へ歩いていった。
「ブモォ!?」
突然現れた侵入者に、魔物は驚く。
「よう、悪ぃがお前を殺しに来た」
俺はちょっとカッコつけた台詞を言って挑発した。
「ブモォォォ!!」
牛頭は朱音の言っていることは理解していなかったが、明らかに自分より劣るものに挑発されたのが分かり怒りを顕にした。
「ブモォァ!」
牛頭は手に持っている巨大な斧を朱音に振り落とす。
その一撃は速く、重い。
直撃すれば、その威力に耐えきれずに朱音の身体は崩壊する。
しかし、
「おっと、危ねぇなぁ」
朱音はその一撃を難なく躱す。
躱された事に牛頭は驚いたが、それはすぐに怒りへと変わった。
「ブモォァァァアア!!」
『鬱陶しいわ!!』
まるでそう言うかのように雄叫びを上げた。
「うるせぇ!!」
当然、牛頭は朱音の愚痴を聞く訳でもなく、斧を目にも留まらぬ速さで振り回し、朱音へ迫ってきた。
………しかし、そこに朱音の姿は無かった。
「ブ、ブモォ!?」
姿どころか気配すらも感じなくなった朱音に牛頭は、動揺を隠せずにいた。
そんな牛頭に
「ブヒェア!?」
なにかに蹴られたような強烈な衝撃が腹を襲う。
「ブ、ブモォ!?」
訳も分からず立ち上がった牛頭に、再び衝撃が走る。
「ブヒィ!?」
そして一撃、また一撃と次々に謎の衝撃が牛頭を襲う。
「ブヒィ……ブハァ……」
そんな様子を見計らったように
「ま、こんなとこか?」
「ブモォ!?」
なんと、居なくなったはずの朱音が突然牛頭の前に姿を現したのだ。
「にしても、隠密と 身体強化組み合わせはなかなかえぐいな……」
「ブモォォォォォォォオオ!!」
何が起こったかよく分からないが、こいつの仕業だと分かった牛頭は激昴した。
そして、朱音に向かってその巨体に似合わず、かなりの速度で襲い掛かってきた
……だが
「ブ、ブモ……ォォ………」
牛頭は力なく倒れ、絶命した。
「ふぅ、終わった……」
牛頭は最後まで、自分が何をされたのか分からずに死んでいった。
朱音がした事はごく単純、
まず、隠密で気配も姿も隠す。すると牛頭は、まるでその場から完全にいなくなったと勘違いした。
次に、その隙をついて身体強化を施し、強化された身体で牛頭を滅多殴り。更にその時、毒を放っていた。
こうして、毒がまわる時間を稼ぎつつ、相手を弱らせる。
すると牛頭は弱っていき、毒がまわるのも早くなるので後は勝手に死ぬのを待つだけという事だ。
ーーー我ながらなかなかえげつない事をしたな……
ーーー《お見事、流石ですマスター。なかなかの鬼畜ぶりでした》
俺にはもう、躊躇する。という考えは無くなった。
ーーーそれは褒め言葉として捉えていんだな
ーーー《勿論》
ーーーそうか……
そんなやり取りをして、
ーーークレルの予想ではここがダンジョンの最後なんだな?
ーーー《はい、恐らく……いえ、ほぼ確実にそうでしょう》
「じゃあ、開けるぞ」
そう言い、俺は扉を開けた。
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次回は明日更新です