バキュン
すいません! 体調不良で更新遅れました。早く治します!
カラとカプチが激突している頃……
「相方としていいのか、彼女を置いて行って」
サバンの後ろから、何者かが話しかける。
「相方……うん、まぁそうなるのか」
初めてそういう風に呼ばれたため、返答に少々悩む。
「まぁいい、どちらにせよ、貴様とは一戦交えなければならない」
「確か君はカノン君だっけ? あっちを待てば、俺達の本戦行きは確定するんだよ?」
決勝の趣旨を見失いかけているカノンに、サバンは確認するように問う。
「そんな事は百も承知、俺はただ貴様を倒すことが出来るのなら、それで良い」
「随分な嫌われようだ、まったく」
身に覚えのない敵意に、肩を竦める。
「生成……」
いきなり何かを言い始めたカノン。
どうやら魔術を発動したようだ。
小範囲の地面が砕ける。
「なになに」
サバンは、まるで他人事のように面白そうにその様子を見ている。
砕けた地面の欠片同士が、複数の小さなまとまりを作る。
そしてその小さなまとまりが、何かの部品のような形状になった。
「ほぅ」
「組立」
そして、次の魔術発動でなんと、その部品達がカノンの右手に集まり、拳銃の形となった。
「凄いね! もしかして土系魔術? 君ってベレー帽被ってるからてっきりアーティストなのかと――」
興奮気味な反応を示すサバンに、セリフを言い終えるのを待たず、カノンはサバンへと発砲した。
「マジっすか」
「今のはあえて外した、警告としてな。本気で来い」
「へぇ」
余裕な表情を見せるが、頬には一筋の汗が流れる。
「いくぞ!」
「ッ!」
流石に銃となっては、回避が容易ではないことは明らかだ。
「反則じゃねそれ」
「だから言っただろう、本気で来いと」
続く乾いた発砲音が二発。
「痛っ!」
避けきれずに腕を掠めた。
「ちっ、風弾」
「ふん、トロイな」
普通なら当たって当然の速度で放つが、いとも容易くカノンは回避してしまう。
「こんなものか、拍子抜けだな」
落胆したように、カノンが目を閉じる。
「それは……どうかな?」
「むっ」
突如、サバンの身を包むようにして、強風が吹き荒れる。
「一体何の真似だ」
「さぁ? やってみたらどう」
構わず発砲する。
が、弾はサバンに当たる寸前、自らの意思があるかのように、弾がそれた。
「ちぃ!」
「あら、その表情はもう分かっちゃった?」
「相変わらずの判断性と行動力だな」
「いくら褒めてもなんも出てこないよ〜」
仕組みは簡単、サバンを包み込む風が、弾を強風で逸らす。ただそれだけの事。しかし、ただそれだけをするのに、かなりの技術を必要とする。
「まぁいい、それで勝てるなど思ってもいない」
「まだ手があると、厄介だね〜」
カノンは手にしている銃を捨てる。
「生成……」
またしても銃を作る気だ。
「させないよっ!」
「くっ……」
同時にそれが大きな隙となり、好機と見たサバンがカノンへと迫る。
「風刀」
「組立!」
サバンの、近接の一撃だったが、間一髪という所でカノンの魔術が発動し、銃を盾にして攻撃を防いだ。
「惜しかったか〜」
「これで貴様の勝ちは無くなったな」
次にカノンが手にした銃は、ライフルに似た大型の銃。これでは幾ら強風を身にまとったとしても、その威力で強風など簡単に貫いてしまう。
「やって見なきゃ分かんないよ」
「そうだな、油断はしない」
暫く硬直の時間が続く。
「ふっ……!」
初めに動いたのはサバン。
「馬鹿が」
右方向に動たサバンに狙いを定める。
「終わりだ」
発砲音が重く響いた。
「なっ!」
「危ない危ない」
発砲を予測していたサバンは、発砲とほぼ同時に直角に、カノンの方向へと切りかえた。
「風刀!」
「ぐぅ!」
サバンの一撃を、再び銃で防ぐ。
「なんだと!?」
一度は一撃を防いだ銃であったが、同じ部分にもう一撃加わり、銃が破壊した。
「いや〜、運がいいな全く」
「白々しい……!」
サバンの技術を見れば、このような芸当、さほど難しくはない。
「君の負けだね」
刃をカノンの首元へ当て、勝利を宣言する。
が、
「本当に助かったよ、貴様が愚かで」
「え……ああ、そゆことね」
サバンの背後、そこには爆発的な威力を誇る圧倒的ロマン……大砲が存在していた。
「どちらが動いても……」
「勝負がつかないか」
『そこまでぇえええ!!』
タイミングよく、あちらの勝負が着いたようだ。
「ふぅ、いい試合だったよ」
「くそ、まだ貴様に勝てないのか」
「あのさ、なんでそこまで俺を敵視すんのさ」
流石のサバンでも少々不愉快になる。
「貴様には下にいる者の想像がつくまい」
なるほど
「要するに、君は格上の俺に下克上を果たしたかったと」
「……」
沈黙は肯定ということだ。
そんなカノンに、サバンは励ますようにではなく、少しムッとした口調で、
「てゆーかさ、俺をここまで手こずらせたんだから、君はそれくらいの実力があるってことでしょ」
「しかし勝てなければ意味は無い」
「それだと同様に、引き分けた俺も格下ってことになるけど……俺はそんなの嫌だわ」
なんというか、わがままなのか、自分を思って言っているのか分からなくなったカノンは、思わず目を丸くする。
「いい? それ以前に俺は今の試合、勝ったとはこれっぽっちも思ってない」
「そ、そうか」
だから、とサバンは続ける。
「次は勝つよ、絶対に」
「っ!」
この時、初めてカノンはライバルというものを知ったのかもしれない。
いつも読んでいただきありがとうございます!