表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/227

風にも負け……たくない

遅くなりました。ごめんなさい。


 試合開始わずか五秒、突如暴風が吹き荒れる。


 「なんだァ!?」

 「ちぃ」


 選手も含め、殆どが立つことすら困難になり、何かにしがみついていないと吹き飛ばされそうになるほどだ。



  「……あいつか」

 

会場が激しい風に包まれる中、一人平然とした様子の人物がいた。


 「ふんふ〜ん♪」


 鼻歌を歌いながら、無差別に巻き込んでいる暴風を操っている。



 「〜♪……さて、挨拶はこれくらいにしとこうか」


 瞬間、ぴたりと暴風が止み、まるで何事も無かったかのように、一切のそよ風すら感じない。


 

 「それが挨拶なんですかねぇ、サバン先輩」



 思わず、乾いた笑みを浮かべながら言う。

 

  「いきなりやってくれるじゃねぇか」

 「僕は嫌いだな、こんなやり方は」


 不意をつかれた苛立ちからか、リバースとスシはサバンと対峙する。



 「おーおー、お手柔らかに頼むよ〜」


 不利な状況に置かれたサバンだが、寧ろ挑発的な態度を示す。


 「舐めやがってぇ……!」

 「生徒会だからと、少し天狗になっているようだね」


 同時に二人は詠唱を唱え始める。


 「ねーねー二人とも」

 「集え、水の精たちよ……」

 「散り行け、そして舞え……」


 何かに気がついた様子のサバン。二人にを呼んでみるが、詠唱に集中して聞こえていない。


 「だから二人とも〜」

 「水弾(ウォーターボール)!」

 「痛烈な猛攻(ハナフブキ)!」


 再び呼びかけるが、二人は自分に向かって魔術を発動してしまった。


  「はぁ〜」

 

 面倒そうに攻撃を躱す。

  眠くなるほどのトロイお水(ウォーターボール)を横に避け、ただ鬱陶しいだけの紙切れ(ハナフブキ)は適当に風を起こして相殺させる。


 「なっ!」

 「くっ、」


 いとも容易く魔術を破られ、悔しそうに顔を顰めている。

 

 「あの、二人ともさっきから呼んでんだけどさ〜」

 「な、なんだやかましい!」


 未だ二人が気がついていないようで、呆れたようにサバンが言葉を続ける。


 「まさか忘れているわけじゃないよね……敵は俺だけじゃない事に」

 

 その言葉に、ようやく気がついたのか、同時に二人は目を見開く。


 「ま、もう遅いだろうけど」


 「がっ……」

 「く、そ……」


 何者かにより、二人仲良く気絶。



 「あら、早速脱落者が出たようね」


 少し離れたところから、声がかかった。

 

  「全く白々しいな君は」

 「あら? なんの事かしら」  


 脱落した二人は、眠りにより戦闘不能となった。


 「つくならもっと上手な嘘つこうよ、カラ」

 「努力するわ」


 真面目な性格なため、本気で努力するだろうとサバンは苦笑する。


 「どうする? 今戦う?」

 

 忘れてはいないが、今のカラとサバンは敵同士。


 やろうと思えば、今すぐにでも戦えるが……



 「遠慮しとくよ、君は苦手だ」


 そう言われ、ぶすっとカラは頬をふくらませる


 「あら、逃げるつもり」

 「そうするよ、って、なんか怒ってる?」

 「別になんでもないわよ! ほら、ちゃっちゃと行きなさい」


 お言葉に甘えて、とサバンはそそくさと去っていった。


 「あのー、私と勝負お願いできます?」

 「あら? 貴女は……」

 「あ、カプチと呼んでください」


 サバンが去った直後、おずおずとした様子の少女……カプチ・コーフィがカラに勝負を仕掛けてきた。


 「随分とご丁寧に仕掛けてきたわね」

 「ふ、不意打ちはどうも苦手で……」

 「あら、なら私が先手頂くわよ!」


 カラが飛び出す。普通に殴る気だ。


 「わぁっ!」

 

 カプチはなんとか、転ぶようにして、躱した。

 と同時に、カプチのポケットから飴玉のようなものが落ち、そして地に着いて直ぐに、溶けるようにして消えた。


  「本当に勝ち上がってきたの?」

 「ほんとですよぅ」

 「安心して、今度は優しく眠らせるから……ね?」


 コツコツと、終わりを告げるカウントダウンのように近づいてくる足音に、恐怖を感じたカプチはカタカタと震えている。


 「さぁ、今眠らせて……って、なによこれ」

 「ふぅ、良かったですぅ」


 カプチとの距離が僅か一メートル程になった時、地面に足が固定されたかのように、カラの足はピクリとも動かなくなってしまった。


 「何をしたか聞いてもいいかしら」

 「罠です♪」


 そう答えたカプチの様子は、先程までの臆病な雰囲気はなく、軽い調子だが、獣の目をした、狩人だった。


 「少しまずいわね」

 「さて、そんな余裕はいつまで持つのでしょうか♪」



   

いつも読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ