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案外俺は人に恵まれているのかもしれない

 

 一学年決勝が終わった。

 レオの必殺技で見事にやられた俺は、二度目になる敗北選手の待機所にぽつんと座っている。


 「モブ君、凄かったよ。私は感動した」


 体育座りの俺の横に、いつの間にか、ちょこんとミエが座っていた。


 「まあ、負けたけどね」

 「あのゲスい顔ができるなんて、すごいよ」


ーーーあそっち、そっちすか


 同時に、どんだけひどい顔をしていたのかと落ちこむ。


 「おめでとう、本戦出場だ。やったぜ」

 「ん?」


 全くもってやる気のないやったぜの事は置いといて、それよりも前のミエの言葉に耳を疑った。


 「み、ミエ、今なんて……」

 「やったぜ」


 声の調子は変わっていないが、ガッツポーズが加わった。


 「いや違うわ、その前」

 「おめでとう、本戦出場だ」

 「それまじ?」

 「私は信用されていないのか?」

 「というよりそこまでの関係になってないからな」


 しかし、嘘をついているように見えない。


ーーーでも、フィールドには三人いるだろ


 だが見てみると、フィールドに残っていたのは二人。

 レオとサラブレだった。


 「モブ君がここへ移される直前、グラーリ君が魔力欠乏に陥って先に転移されたんだよ」

 「うそっ」


 辺りを見渡すと、転移直後の俺と同じく体育座りをして小さくなっている、グラーリがいた。


ーーーガチへこみしてんじゃん


 グラーリの様子に、一番最初の脱落者のリフが何故か、アタフタしている。


 「ということで行ってらっしゃい、再びあの場所へ」


 ミエが初めて微笑み、突如景色が変わった。



 ▽


 「戻ることできたんだ」


 一方通行だとどこかのイケメンが言っていたので、往復できた事実に少し驚いた。


ーーーもうあいつの言うこと信じない

 


 なんの話をしているのか。

 

 『おめでとうございまぁす!!』


 審判の馬鹿でかい祝福の声でわかるだろうか。


 「……うるせぇ」


 レオが不快そうに顔を顰めている。


ーーー本当に戻ったのか……不正無しで


 もうお判りだろう。俺は戻ってきた、フィールドに。



 「疲れたわ、帰ってよろしい? いえ、帰るわ」


 試合中、立つことすら出来なかった事が嘘のように、サラブレが何事も無かったかのように、すたすたとどこかへ行ってしまった。

 

 『ちょ、ちょっと! ……ま、全ての試合が終わるまでここから出られませんけどね』


 だそうだ。


 てことは、フィールドにいる選手は俺とレオのみ。



ーーー気まず過ぎる


 何を話しかけようかと悩んでいると、レオがこちらへ歩み寄ってきた。


 「運が良かったな」

 「レオ……」


 どうやらレオ、俺のやらかした事を気にしていないようだ。


 「まあ取り敢えず、おつかーー」

 「すいません!」


 相手が気にしていなくても、俺の気分が悪い。


 「ああ? なんの事だよ」

 「試合での行いです、中々酷いことをしたから」

 

 頭を下げる俺にレオは、


 「馬鹿かお前」

 「えぇ!?」


 呆れたようにため息をつきながら、そう言った。


 「勝負事に酷いもクソも無いだろ、勝てば良いんだよ、勝てば」

 「そう、ですか……あはは、レオらしいですね」


 勝利に対する強い執念に、改めて感服する。


 「次は負けねぇからな」


 最後にボソリと、レオがそう言った。


 「勝ったのレオじゃないですか」

 「わかってんだぞ、お前がわざと負けたことくらい」

 「うそっ!?」

 「やっぱりか」

 「あっ」


ーーー嵌められた


 「次は俺も本気出す、縛りなしでな」

 「つか、最後レオ、爆発使ってなかったじゃん!」

 「そうだったか?」

 「そうです!」

 「言ったろ? 勝てば良いんだよ」


 得意気に笑うレオの顔は、珍しくとても楽しそうであった。



 「恵まれてるなぁ、俺」


 この世界に来て、初めて友達と呼べる存在ができたのかもしれない。相手はどう思っているのか知らないが。


 「あ? なんか言ったか」

 「いえ、なんでもありませんよ……おっそろそろ始まりますね」


 照明が消え、審判をスポットライトが照らす。


 

 『お待たせ致しました! 続いて行われる試合は、二学年決勝戦です!!』



 「サバン・オブジェは勝ち残ると思います?」

 「取り敢えず俺は望まないな」

 「ははは、俺もです」  


 フィールドに上がっている選手は、勿論六名。



 『まず始めに紹介させて頂く選手は……サバン・オブジェ!』


 紹介されたサバンは、俺たちに気がつくと、笑顔で手を振ってきやがった。


 「余裕そうですね」

 「その顔ぶん殴りたくなるな」


 

 『続いて紹介する選手は……リバース・モーノ!』


 メガネを掛けている男子生徒だ。雰囲気的にはリフにどこか似ている。



 『三人目に紹介する選手は……カノン・アハト!』


 ベレー帽のようなものを被った、赤髪のクールな見た目の男子生徒。ポケットに手を突っ込んでいる。


 

 『続いての選手は……カプチ・コーフィ!』


 栗色のふわふわしたロングストレートの髪、おっとりとした目の女子生徒。喫茶店で働いてそうな見た目。


 

 『さあ、続きましては……スシ・ニギニギ!』


 おっさんみたいな男子生徒。寿司握ってそう。



 『最後に紹介致します選手は……カラ・リューカ!』


 安定の美人。睡眠魔術の使い手で、密かに俺がライバル視している人だ。


 

 「いよいよですね」

 「ああ」


 見ている側として、前までごちゃごちゃ言っていた俺だが、今となってはわくわくしている。



 『それでは構えて!』


 何一つ物音が聞こえない時間。この時、緊張が一気に高まる。



 『二学年決勝戦……始めぇえ!!』

いつも読んでいただきありがとうございます!

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