レオVS俺
すいません、何故か最近遅くなります。
一学年の決勝戦も残るは四名。
だがそのうち、グラーリとサラブレはほぼ戦闘不能状態になり、放置されている。
そして現在は、おそらく一学年最強のレオと、一応落ちこぼれの俺とのガチバトルが行われている。
……のだが
「オラオラどうしたぁ! こいやオラァ!!」
ーーーおぉう、チンピラみたいだな
俺は普段のレオとのギャップに圧され、戦いに集中しきれないでいた。
ーーーいや、初めにあった時はこんな感じだったはずだ……だよな、これがレオの素なんだよ!
そう、すぐさま勝手に判断し、頭を切り替えることに成功した。
「ラァ!」
忘れていた。俺が考え事をしている中、レオは俺に蹴りと殴りの猛ラッシュを繰り出している最中であった。
「ふぉあ! ちょっ、ちょや!」
頭を切り替える数瞬のうちにも攻撃されていたため、思わず変な声を出しながらも、なんとか躱すことが出来た。
ーーーじゃ、次はこっちの番だな
レオの右足の蹴りと、左フックを手で払い、ガラ空きになった腹に右拳を突き出す。
「ぐぅ……」
これはもろに食らったようだ。
しかし
「まじかよ」
一撃を食らわせたことへの油断を誘ったのか、隙ができた俺の顔面と右腕を掴み、力を込め始めた。
「爆ぜろ!」
「ちぃ……!」
顔面は流石にヤバいと思い、左手で引き離したが勿論左手も狙われるわけで、右手首と左手の甲を損傷した。
「中々痛いんですけども……」
「お前が言えたことじゃねぇだろ」
少し離れ軽口を叩き、再び激突する。
ここまでで肉弾戦。
魔術大会の予選だというのに、俺に至ってはレオとの戦いで一切魔術を使っていない……否、自らの縛りで使用できていない。
今になって一々フェイントを仕掛けてくるレオがうざい。
しかも地味に引っかかりそうになるから益々うざい。
「だぁあ!!」
「うわっ!?」
ーーーこの人、自分の肘爆発させやがった
攻撃を交わし続ける俺をどう思ったのか、多少の痛みと引替えに、速度と威力を上げてきた。
ーーーそんな勝ちたいのかよ
伝わってくる勝利への執念に、若干気圧されつつも、これくらいの速度ならまだまだ余裕の俺。
「って、まじか……」
「ボケっとすんな!!」
まさか、雑なフェイントのキレも上がっているとは思わなかった。速度があるおかげで綺麗に騙され、頬をクリーンヒット。
「ってぇ……」
地面を転がる長さも含めると、吹っ飛ばされた距離は凡そ五メートル。
頬の内側が血で滲む。
鉄っぽい味を感じながら、立ち上がる。
少し意識が飛びかけ、息が上がっているような演技をしながら。
「はぁはぁ、はぁ」
「嘘くせぇ演技してんじゃねぇよ!」
「えマジ?」
迫真の演技が見破られていた。
ーーーえ〜、地味にショックなんですけど
見破ったレオは、俺が動きを見せる前に追い討ちをかけようと、物凄い速さで突進してくる。
「オラァ!」
突進の速度をそのまま活かし、今度は頬ではなく、顔面をぶん殴る気でいるようだ。
「くそっ」
「ぶっ飛べぇえ!!」
飛んだ。それはそれは“高く”。
「なっ……え?」
高く舞い上がった男……レオは、未だ自らに起こったことに理解が追いついていない表情をしている。
「いや〜、惜しかったですね」
ドサリと地に落ちたレオに向け、挑発気味に言う。
俺はあの時、演技がバレてしまったのだが、それこそまさに演技。
気がついていないレオは、フラフラ立ち上がる演技をした俺を見破り、好機と感じて一直線に向かって来た。
しかしそれこそが本当の俺の目的である。断じて初めの俺の演技が下手だということは無い。あれはあえて下手だということを意識させただけだ。そう、そうだとも。本当だとも。
話がそれたが、直線的に向かって来たレオならば対処は楽。
ということで、ぶっ飛べと言われたので、変わりに本人に俺のアッパーカットでぶっ飛んでもらいました。
威力は抑えたとはいえ、これだけ強烈に決まればダメージは相当なはず。
「てことで、そろそろ眠って貰いますね」
なんとか立ち上がったレオに向かい、睡眠を掛けた。
「まだだ……」
「はは、マジかよおい」
なんとレオ、眠りに落ちる前に自分の頭に爆発魔術を掛け、無理やり意識を覚醒させた。
ーーー一番驚きなのが、それでも禿げないってところだよね
レオのタフさにいっそ畏れを抱き、心の中で冗談を言ってみる。
「見せてやるよ、俺の切り札を」
朦朧としたレオが尚も戦いの意思を見せる。
「ならもう俺も、きっちり叩きのめしてやりますよ」
一学年決勝、クライマックス。開幕。
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