3.ムカデvs召喚士
レベル差16。
基本的に一般常識としてレベル10以上の差があるとき、単身ならば見つけた瞬間に撤退と言われている。レベル差16ともなればもちろん撤退すべきなのだが、夢華は勝てるとふんでいた。その自信は誰にも教えていないし、どこにも載っていない、夢華のみが保有しているであろう召喚の理にあった。
向かってくるジャイアントセンチピードを前にして杖を地面に置き夢華は呟く、
「召喚の理 壱の章 纏い」
するとそばにいたサラマンダーが消え夢華の右目が紅く輝き、右の肩口から手先にかけてサラマンダーを模した鎧が出現する。そしてその右手には炎で形成された刀が握られる。両手で握りこみ、上段にかまえるとこちらに突進してくるムカデに対して上から下に全力で振り下ろす。
「紅一閃!!!!」
振り下ろされた刀の先には、体を両断されたジャイアントセンチピードと一筋の黒い線が残された。
ピロリン♪
とレベルの上がる音がする。どうやら一撃で終わらせることができたとほっとした俺は、とりあえず安全地帯と呼ばれる場所まで向かうことにした。このダンジョンの安全地帯は11階層の入口付近にあるのですぐだ。再びサラマンダーを召喚して11階層へ向かう。
しばらくして敵を倒しながら降りてきた俺は、安全地帯に入ると誰もいないことを確認してからそこに寝そべった。
「あー、なんとかなったけどまさかあんなの出てくるとはな~、、」
ぼやきながら気になっていたステータスを確認してみることにした。
「ステータスオープン」
松元 夢華
レベル 40
職業 召喚士
HP 800
MP 1600
力 D++
技量 A++
知力 A+
幸運 C
保有スキル 召喚の理 精霊召喚
レベルが8も上がっていることに絶句した俺だったが、まぁレベル差がそれなりにあったジャイアントセンチピードを倒したのだしと納得した。知力と幸運以外は順調に伸びていることに少し笑みがこぼれる。そしてレベルが40になったことによって、扉が開くかもしれないという淡い期待を抱きわくわくがとまらない。
「早く20階層に行って扉をたしかめたいな。」
そう独り言を呟き、休憩を挟んだ俺は再びダンジョン攻略を開始した。