表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/418

93 西へ向けて

ご閲覧ありがとうございます。

楽しんで頂けたら、幸いです。

 グラスキルス王国から齎された情報は、ペスカ達に衝撃を与えた。

 アーグニール王国の首脳陣を、震撼せしめた。しかし、滾り始めた熱い血は、簡単に固まりはしない。王都民全員が、団結して戦いの準備を始めた。


 未だ、アーグニール王国には、数多くのモンスターが街を襲い続けている。北からモーリスが、東からはグラスキルス軍が、それぞれアーグニール王国内のモンスターを駆逐しながら、王都を目指している。

 

 人々は救いを信じて、抗い続ける。兵士達は人を守る為に、モンスターを駆逐する。


 家族、恋人、友人、多くの大切な者を失った。戦場では、人の尊厳すら奪われた。諦めた。諦めたかった。だが、諦めさせてくれなかった。


 大丈夫か? 声が聞こえる。

 助けてやる! 声が聞こえる。

 生きろ! 声が聞こえる。

 抗え! 生きろ! その声は、命を投げ出す事を許さなかった。


 たとえ泥を啜っても、岩を齧っても、両腕を失っても、両足を失っても、死んで終わりにするな! 生きて戦え、最後は必ず勝て!


 最初は、たった数人の勇気だった。それが波紋を呼び始めた。波紋は渦となり、国中を巻き込んでいった。


 負けない。ここでは死ねない。何もかも失っても、自分の命が残ってる。


 諦めない。死んで堪るか。誰にもこの命を奪わせはしない。


 無駄にはしない。救われた命だ。次は自分が救う番だ。


 再び、あの平和な時間へ。再び、あの和やかな時間へ。再び、あの温かい場所へ。

 

 人が人に勇気を与え、人が人を守る。人が人によって救われ、人が人の為に戦う。人は抗う。人は生き足掻く。

 平和な世界を求めて、アーグニール王国全体が一つになりつつあった。


 ペスカ達は一晩を城で明かした後、ケーリアとグラスキルスの間諜部隊を集めて、作戦会議を行った。そして、戦争で数を減らしたアーグニール軍に、幾つかの指示を与えた。

 一つは、南下しつつあるモーリスとの連携。二つ目は、グラスキルス軍との連携。三つ目は、脱走した元アーグニール軍の集結。戦争で疲弊してい三国が連携する事は、残るモンスターを一掃する上で必須となる。


 また、サムウェルから引き継いた間諜部隊も、重要な役割を担う。各国の中継役となる事で、情報の連携を密にする。それは、旧帝国の広大な土地で阻まれた、東と西で連携を取るのに、欠かせない役割であった。


 ケーリアが戦力を集め、モンスターを掃討する間、ペスカ達はサムウェルを追う。グラスキルスを越えて、そのまま西に向かう。単独で戦力となるキャンピングカーであるから、可能となる作戦である。

 そしてケーリアから要望を受けると、ペスカはその場でモンスター感知器を改良を加え、設計図を修正した。


「ペスカ殿、メルドマリューネの件は如何致しますか?」

「今は警戒を強化する位しか出来ないよ。割ける人員が少なすぎる。エルラフィアも主戦力を帝国で失っているしね」

「では俺の役目は、早く残りのモンスターを掃討して、グラスキルスに合流する事ですね」

「そうだね。よろしく、ケーリア」


 ペスカは、皆を見渡すと話を続けた。


「何とか国の体裁を保ってるのは、西の四国と東の三国を残すだけ。その内、まともな軍が残っているのはグラスキルス。エルラフィアは、南部三国の援軍を受けて何とかって感じだろうね。この状況で帝国から溢れるゾンビ達に気を取られれば、メルドマリューネが一気に仕掛けて来る。エルラフィアとグラスキルスが崩れたら、一気に瓦解するね」

「二十年間と違い帝国が壊滅、エルラフィアや我等東国三国も、戦力を落としている。ともすれば、特権階級が支配する奴隷大陸になりますか・・・」


 ケーリアがポツリと呟いた言葉に、冬也が目を丸くして反応した。


「さらっと、とんでもねぇ事を言わなかったか? 何とかって国は、そんなやべぇ所なのか?」

「メルドマリューネね、お兄ちゃん。あそこの王様はね、魔法による世界の均衡を願ってるの」

「難しく言うなよ。もう少し優しく教えてくれ、ペスカ」

「魔法による統治、完全な平等、人は等しく魔法の燃料として生きるって感じ」

「まだ難しいけど、つまり共産主義だか社会主義だかって感じか?」

「お兄ちゃんにしては、おしい所だね。地球みたいに人道的な考え方じゃ無いよ。役立たずは奴隷になるか、魔法の燃料にされて殺される。あそこに住んでいるのは、人じゃ無くて都市機能を動かす機械みたいなもんだよ」

「自由に生きようとする奴はいねぇのか?」

「いないよ。そういう教育をされているからね。マインドコントロールに近いけど」

「そんな国と今まで良く戦争が起きなかったな」

「そりゃあ、エルラフィア、ライン帝国、東の三国が同盟を組んでいたからね。不戦協定を結んだ時も、その同盟を盾に、強制させたんだよ」

「その抑止力が、今は崩れたって事か?」

「そうだよ、お兄ちゃん。けっこう不味い状況なんだよ」

「ロメリアの野郎と、その何とかって国が手を組んだら最悪だな!」

「おおぅ! お兄ちゃんってば、偶に鋭いね! それは最悪のシナリオだけどね」

「ロメリアの野郎が潜んでるのも、案外その国だったりするんじゃねぇか?」

「可能性は有ると思うよ、面倒だから違って欲しいけどね」


 ペスカは大きな溜息をつく。しかし、少し声のトーンを上げて、話しを続けた。


「そこで、お兄ちゃんには重大な役目があります!」

「何だよ」

「お兄ちゃんの神気を込めた魔石を、大量に作って!」

「おぅ! で、何に使うんだ?」

「都市の結界に使うんだよ。お兄ちゃんの神気なら、たとえミサイルでも耐えるでしょ」

「わかった。何個くらい作るんだ?」

「今夜中に三百個は作ってね。ケーリアは、手分けして各都市に設置。シュロスタインにも設置するんだよ。明日には出発するからね。皆準備急ぐ事。解散!」


 ペスカ、空、翔一が眠る間、冬也は徹夜で魔石作りに取り組んだ。翌朝、眠い目をこする冬也だったが、作業はそれだけでは終わらなかった。

 魔石用のラフィス石を、ペスカは大量に車に積み込ませていた。


「グラスキルスに到着するまで、お兄ちゃんは魔石作り! その代わり、運転は免除してあげる。お兄ちゃんが頑張った分だけ、都市が救われるんだからね。頑張って!」


 ペスカにそう言われては、頑張らずにはいられまい。冬也は、眠気を堪えて車に乗り込み、魔石作りを開始する。

 ペスカは、冬也が作った魔石をケーリアに渡し、シュロスタイン王国とアーグニール王国の全ての街や村に設置する様に命じた。


 グラスキルスの間諜部隊を案内係に、ペスカ達は王都を後にする。ただひたすらに、西へ向けて。

たまには癒しを。

って事で、ハカセの気まぐれホムンクルスの紹介です。


こちらは、GANMA!というアプリ内で連載されていた作品で、既に完結しております。

癒しをテーマに作られた、手のひらサイズのホムンクルスが、癒しの妖精を目指して可愛らしく大暴れします。

何で登場人物の顔が出て来ないの?

そんな、ツッコミは不要です!

頭を空っぽにして、楽しんでください。

そして、日常のストレスを吹き飛ばして下さい。


次回もお楽しみに。


2019.5.21校正。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ