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妹と歩く、異世界探訪記  作者: 東郷 珠(サークル珠道)
神の戦争と巻き込まれる世界
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67 閉じられた国境門

ご閲覧ありがとうございます。

楽しんで頂けたら、幸いです。

 採掘場を出発したキャンピングカーは、どんな悪路も楽々進む。オフロード車も真っ青なその走りを見れば、日本の企業が飛びつくかもしれない。しかし、魔法と言う未知のテクノロジーが、車両の構造に使われている。日本の技術者は、どうしてこれで走るんだと、頭を抱えるだろう。


「ペスカちゃん、この車揺れないのは良いんだけど、お尻痛いね」

「仕方ないでしょ! 座席の事まで考えて無かったんだし」

「パノラマビューは良いけど、落ち着かないね」

「外からは見えないんだから、気にしないの」

「ペスカちゃん、何でこの車動いてるの?」

「もぅ! いちいちうっさい空ちゃん」

「いや、ペスカちゃん。僕も疑問に感じるよ。こんな大型の車両で、おまけに変な大砲積んでるのに、揺れを感じないし、悪路だって簡単に進む。あんな適当なスプリングのサスペンションで、ショックが吸収できる訳ないよ」

「翔一君、グチグチ言うとモテないよ。全部、物理衝撃吸収魔法のおかげだよ。だから、多少の揺れなら吸収するし、横風にも煽られないの」


 助手席に座っていたペスカは、背もたれに顎を乗せる様な恰好で、後部座席に座る空と翔一を相手にしていた。キャンピングカーについては、ペスカ自身が満足できる作品になったと自負している。だからこそ一般人には、そのテクノロジーが理解を超えているのだ。

 そして鼻息を荒くしペスカは言葉を続ける。


「そもそも、整った空調。ベッドとトイレにキッチンまで付いた、完璧な車に文句言わないでよ」

「ペスカちゃん、一周回ってファンタジーだね」

「空ちゃんに同感だよ」

「あ~、何か馬鹿にしてる~!」

「そんな事無いよ、ペスカちゃん」

「そうだよ。僕は感心してるんだ」

「うっせぇよお前よら! 運転に集中出来ねぇだろ!」


 冬也に叱られ、三人は黙り込む。


「空ちゃん、けつが痛いならベッドに座ってろ」

「お兄ちゃん、女の子にけつって」


 ペスカの額にデコピンが炸裂し、ペスカ助手席から飛び出して、車内をのたうち回った。


 このキャンピングカーは、車と呼ぶにはお粗末な作りだが、戦車顔負けの性能だった。ボディは物理と魔法二つの衝撃吸収魔法により、攻撃を受け付けない。更に、空のオートキャンセルを封じた魔石を配置し、車に結界を施している。そして、翔一の探知を封じた魔石を利用し、全面のスクリーンにマナの使用を映し出せる様になっている。

 上部の二門の魔攻砲は、独立操縦コックによって三百六十度、二門別々の方角へ砲撃が可能となっていた。

 実験の結果、結界を施された車は、翔一が数百の炎弾を放っても、傷一つ付かなかった。


「まぁ、お兄ちゃんの神剣で、結界が壊されかけたけどね」


 ペスカはデコピンの仕返しに、嫌味を言う。冬也は申し訳無さそうに頭を下げ、空と翔一に笑いが起きた。

 

「そうだお兄ちゃん、そこの魔石を起動させて」


 ペスカに従い、運転席近に設置された魔石を起動させる。すると、前方のスクリーンに地図が映し出され、冬也は驚きの声を上げる。


「うぉ。地図が出た! なんだよ、ペスカこれ」

「フフン。ナビだよ! 車と言えばカーナビでしょ!」

「ペスカちゃん、カーナビはTVモニターに映るもので、フロントガラスに映るものでは無いよ」

「翔一、だまっとけって。ペスカはこう言うSFっチックなのが好きなんだ」

「翔一君の探知を応用したオートナビ! 凄いでしょ!」

「ペスカ。すげぇけど、俺は、地図読めねぇぞ」

「そんなおバカなお兄ちゃんの為に、ジャン!」


 ペスカが魔石を操作すると、左右のスクリーンに地図が映し出された。


「どうだ、エッヘン! お兄ちゃんが運転してる時は、皆でサポートね!」

「ペスカ。余計な事しねぇで、喋らせれば良いだろ! カーナビって喋るんだろ?」

「喋らせても良いけど、そんなに私の声で案内して欲しいの?」

「やだよ。お前の声だと、道を間違えたら五月蠅く喚きそうだ。どうせなら空ちゃんの、うぐ」


 言葉が途切れる程に、ペスカは冬也の脇腹を殴りつけた。そしてペスカは頬を膨らませてそっぽを向き、冬也は脇腹を抑えて運転を続けた。


 平均八十キロの速度で、キャンピングカーは悪路をガンガン進む。夜は森の中に隠れる様に車を止めて、車中泊をする。そして日が昇る頃に、再び出発する。

 数日が過ぎ、何度もキャットピープルの集団と遭遇した。しかし集団は、キャンピングカーの速度に追いつけず、戦闘行為には至らなかった。

 国境付近の小高い山の頂上付近に差し掛かった所で、ペスカが冬也に車を止める様に指示する。 


「なんだよ、ペスカ」

「まあまあ。秘密兵器の出番だよ」


 ペスカが一つの魔石を起動させる。すると、車の左スクリーンに映る風景が、どんどんと拡大されていった。冬也を始め翔一と空は、流石に唖然とし口をポカンと開ける。

 

「遠見の魔法を応用した、望遠機能! そんで、見たかったのはこれ!」


 望遠で映し出された風景の一部を、ペスカが指さす。そこには、国境門が映し出されていた。国境門は閉じられ、周囲には武装したキャットピープルが取り囲んでいる。


「なんだありゃ?」

 

 素っ頓狂な声を上げる冬也に、空が続く。

 

「キャットピープル達が集まってますね」

「空ちゃん、良く見なよ。武装してるんだよ」

 

 ペスカの言う通りに、空はスクリーンを見つめた。国境門を取り囲んだキャットピープル達は、武装し引っ切り無しに何か叫んでいる様に見える。


「ねぇペスカちゃん、反対側の様子は見れないの?」

「この角度からは、無理だね」


 ペスカ達のやり取りを察した冬也が、少し車を動かす。国境門の反対では、魚人達が武装して集まっていた。キャトッピープルと同様に、国境門に向かい何か叫んでいる様に見えた。


「なぁペスカ、あれは喧嘩ってレベルじゃなさそうだぞ」

「そうだねお兄ちゃん。やられる前にやっちゃおう!」

「物騒な事言うな、ペスカ!」

「お兄ちゃん、早とちりしないの。空ちゃん、魔攻砲でオートキャンセルいってみよう!」

「馬鹿、大砲撃ったらすげぇ音すんだろ! 聞こえたらどうするんだ?」

「音なんてしないよ。火薬使ってないんだし。それに望遠だから、見えてる風景は十キロ以上先だよ。向こうから見える訳ないじゃん! 馬鹿なのお兄ちゃん?」

「じゃあ帝国の時に、戦車から出た爆音はどう説明すんだ!」

「雰囲気だよ。わざとドカ~ンって音付けたんだよ」

「馬鹿は、お前だペスカ! そう言う事は、先に説明しとけ!」

 

 再びデコピンが炸裂し、車内をのたうち回るペスカ。


「と、と、取りあえず、空ちゃん、ごぉ」

「ペスカちゃん、十キロ以上先に魔法が届くの?」

「だ、だいじょ、び」


 額を抑えて蹲るペスカに、可哀そうな子を見る様な目で、空が問いかける。空は敢えて言わない。多分あのデコピンは、ペスカだから耐えられるのだと。自分がやられたら、頭蓋骨が間違いなく割れる。

 空気の読める空は、あれ痛いんだよね、と呟く翔一にも突っ込みを入れない。工藤先輩は、デコピンを受けたらエへへって喜びそうだね、とも口に出さない。


 空は、黙って魔攻砲の発射管の前に座り、スコープで狙いを定める。マナを魔攻砲に充填させてレバーを引く。魔攻砲から放たれた光は、十キロ以上先のキャットピープル達の頭上で、拡散し降り注ぐ。オートキャンセルを受けたキャットピープル達は、周辺をキョロキョロと見回している。


「神から精神汚染を掛けられていたら、多分これで解けたはずだね。続いて、魚人側にもご~!」


 空は再びスコープで狙いを定め、マナを充填させてから放つ。魔攻砲から放たれた光は、魚人側の頭上で拡散し降り注いだ。キャットピープル同様に、魚人達もキョロキョロと周囲を見回し、落ち着かない様子が見られた。


「お兄ちゃん、どう思う?」

「あれだな、トール達の時と同じ」


 ペスカに問われた冬也が、腕を組み答える。そこに翔一が質問を投げかけた。


「冬也、トールって誰だ?」

「そうか、翔一は知らなかったか? トールは、これから向かう大陸に有る、帝国って所の兵士だ。神に洗脳された奴だよ」

「キャットピープル達と同じ様にか?」

「そうだ。洗脳が解けた後は、何が起きたって感じになるんだ」

「そうすると、キャットピープルだけじゃ無くて、魚人達も洗脳されてるって事か?」


 魚人の国へ入っても、大陸を渡る情報が入るどころか、狙われる危険性が有る。その事に気が付いた翔一は、眉をひそめる。


「もうこの際思い切って、神様を呼び出しちゃう?」

「どう言う事だよ、ペスカ?」

「捕まるなり、何なりして、元凶の神様呼び出して、決着付けるって事だよ」


 ペスカの提案に、息を呑む空と翔一。しかし、冬也は満更でもない様子で頷く。


「そうだな。派手にやっちまおう」

「ちょ、ちょっと、簡単に言わないで、冬也さん」

「そ、そうだよ、やるにしても、作戦は慎重に。もう数十キロ南に、ドッグピープルの国との国境沿いがあるし、そっちに行くって手も」


 冷静にさせようとする空と翔一に向かって、ペスカはいつに無く真剣な顔つきで答える。


「多分だけど、もう時間が無い気がするんだ。凄く悪い予感ってやつ。だから、直ぐに決着をつけたいんだよ」

「ペスカに賛成だ。俺も嫌な予感がする。大事な物を失っていく嫌な予感だ」


 冬也も真剣な眼差しで、ペスカに同意する。空と翔一は、軽くため息をついた。


「あのね、捕まるって言ってもどうするの? あの人達正気に戻ったんじゃ?」

「おぅ! ソウデスネ!」

「誤魔化さないで、ペスカちゃん。工藤先輩、何か良い案有ります?」

「そうだね。国境門にこのまま行って、事情を聞くのはどうかな? 何で国境門に集まってたのか判るだろ? それに神の洗脳が解けたと仮定するなら、彼らは引き返すはずだ。その後、彼らは僕らの情報を広めるはず。その後の反応次第で対応を考えるってどうかな?」

「翔一君、話し長っ!」

「翔一、まどろっこしい!」


 翔一の提案に空は頷くが、ペスカと冬也は首を横に振る。

 

「二人共、急がば回れだよ」


 ペスカは嫌々といった雰囲気を隠さず、翔一に答えた。


「仕方ない。国境門で話を聞く所までは、翔一君の提案でいこう。これ以上の手間を増やしたく無いから、事情だけは聞こう」


 冬也はペスカの言葉に頷くと、操縦桿を握りキャンピングカーを国境門へ向けて走らせた。

スティーブンキング原作の映画化で有名なのは、ITでしょうか?

映画を見た事が無い人でも、ペニーワイズを知っている人は多いでしょう。

さて、キングを知らない人の為に、一つの映像作品をご紹介します。

ランゴリアーズ。

これは映画ではなくて、TVドラマとして放映された作品です。

ロサンゼルスからボストンまでの夜間フライト。

機内で寝てしまった数人の乗客を除き、全員が消えてしまう。

到着した空港で起きる数々の事件、姿を現すランゴリアーズ。

果たして、生きて帰る事が出来るのか。

気になった方は、原作をチェック。

映像作品が見たい方は、アマゾンでDVDを入手。


久しぶりに本編と関係がない後書きでした。

次回もお楽しみに。


2019.5.11校正。

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