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46 増える事件と振り回されるペスカ達

ご閲覧ありがとうございます。

楽しんで頂けたら、幸いです。

 秘密組織の存在を暴露した遼太郎は、気にも留めずに言い放つ。


「冬也、ペスカ! お前ら、能力者が起こす事件を止めて来い!」

「はぁ? 何言ってんだ親父、耄碌してんじゃねぇ!」

「そうだよ。そういうのは、パパリンの仕事じゃないの?」


 遼太郎は二人を睨つける。今までの、ちゃらけた雰囲気ではない。遼太郎は、相手を威圧する雰囲気に変わる。


「冬也、それにペスカもだ。てめぇのけつは、てめぇで拭けって言ってんだよ。俺の仕事は、お前等の尻拭いだ」


 父というのは、偉大である。迫力に押され、冬也とペスカは口を噤む。そして、遼太郎は言葉を続けた。


「俺のいる組織が、異界の神の潜伏場所を探してる。その間は頑張れ、青少年達!」


 なぜ遼太郎が、言葉の最後に青少年達と加えたのか。冬也を除く三人は、その真意を理解しているだろう。遼太郎は、確認する様に一同を見渡すと、リビングから出て寝室へ消える。


 夜も遅い、話しの続きは明日にしよう。そんなペスカの提案に乗り、空はペスカの部屋、翔一は冬也の部屋にそれぞれ布団を用意し、体を休める事にした。

 ペスカと冬也は疲れていたのか、直ぐに眠りについた。しかし、空と翔一はなかなか寝付けなかった。


 翌朝、冬也が目を覚ますと、翔一は目の下に隈を作っていた。冬也が朝食の準備をしようと、リビングに足を運ぶ。すると「仕事に行くから、お前ら頑張れ」と、遼太郎の書置きが残されていた。

 冬也が朝食の支度を始める頃、空がリビングに顔を出し、翔一と同様に目の下に隈を作っていた。


 冬也は空にペスカを起こす様に頼む。ペスカが起きて来る頃には朝食の準備が整い、四人がテーブルに着く。昨日とは打って変わって静かな食卓。ペスカはただ眠いだけの様だが、空と翔一は黙って黙々と食事を取っていた。

 リビングが何となく重い空気に感じた冬也は、空と翔一に向かい話しかける。


「二人共、巻き込んだようになっちまって悪かったな。ここから先は危なそうだから、もう関わらない方が良い!」

「ふぉうふぉう。んぐ。これ以上係わらない方が良いよ~」


 冬也の言葉を受けて、空と翔一は黙って箸を置く。

 

「嫌。もう置いて行かないで! 私も着いて行く!」

「僕も行くよ!」


 空が瞳一杯に涙を浮かべて訴える。それに翔一も続いた。

 空は不安だった。ここで、ペスカ達と別れたら、一生会えないんじゃないか。そんな不安に苛まれていた。

 一か月近く前、突然に二人が姿を消した時の様に。気がついたら、また二人がいなくなっている。そんな喪失感は、二度と味わいたくない。それは翔一も、同じであろう。

 だが、そんな二人の想いは、冬也によって一蹴される。

 

「駄目だ! 危ない事に関わらせる訳にはいかねぇ!」

「そ~だよ~! 危ないよ~! 死んじゃうかもよ~」

「嫌。危ないなら尚更、二人では行かせない!」

「そうだ。僕だって君等の役に立つ!」


 譲らない。いや、譲りたくない。もう、あんな寂しい思いをするのは、嫌なのだ。だから、ついて行きたい。空と翔一は、真剣な眼差しでペスカと冬也を見つめる。しかし、冬也の意見は変わらない。


「駄目だ! 危険だ!」

「やる気が有るなら連れてけば? パパリンが言ってた様に、能力者の事件解決に役立って貰おうよ」

「おいペスカ! ふざけんなよ!」

「ふざけてないよ。危ない時は、お兄ちゃんが助けてあげなよ」


 ペスカの言葉に、冬也は渋々頷いた。しかし、異界の神を相手にする時には置いていく、それだけは頑なに譲らなかった。

 冬也自身、神と戦う覚悟なんて持ち合わせてはいない。しかし、遼太郎の言う通りなのだ。自分達と関わり合いが有るなら、決着をつけなくてはならない。

 人が起こす事件なら、たかが知れている。だから、有難く協力をしてもらう。しかし、神様となれば別であろう。大事な友を関わらせる訳にはいかない。それが、どれだけ自分達を想っての行為だとしても。

 

 食事を終えると、空と翔一は着替える為に、一度帰宅する。そして神社で集合する事にした。そして両名を待つ間、冬也とペスカは先に神社に向かい、土地神を呼び出し情報を提供して貰う事に決めた。

 四人で玄関を出ると、翔一が立ち止まる。残りの三人が翔一を見る。翔一は何か感じ取った様に呟いた。


「冬也、住宅街で能力が使われてるよ。良くない感じだ。急いだ方が良いかもね」

 

 翔一の言葉で、一同は走り出す。翔一の案内で辿り着いた先は、普通の一軒家だった。よく見ると二階の窓が割れ、中から叫び声が聞こえる。慌てて冬也が家の侵入を試みるが、玄関は当然鍵が掛かっており、普通に侵入する事は出来ない。戸惑っている内に、一階から火の手が上がり始める。

 火の手が上がった直ぐ後に、一階のガラス戸が破られ、中から男が飛び出してきた。


「冬也、あいつだ!」


 翔一の言葉を合図に、冬也は素早く男に近づくと、掌底を入れて気絶させる。男を拘束する様に言い放つと、冬也は燃え盛る家に飛び込んでいった。

 翔一はズボンのベルトで、素早く男を後ろ手に縛る。そして空が消防に連絡を入れる。ペスカは集まる野次馬に向かい、家の中に取り残されている可能性の有る者を、聞いて回る。

 入手した情報では、母親と小さな子供一人が避難出来てない。ペスカは大声を出して、炎の中にいる冬也へ伝えた。


 数分も経たずに、母親と子供を抱えた冬也が、飛び出してきた。一見した限り、子供は無事である。しかし、母親の方は無事とは言えない。子供を庇って出来たのだろう、腕から血を流している。そして、意識が朦朧としていた。

 空は直ぐに、母親の止血を試みる。そしてペスカは、母親に対し呼びかけを続けた。冬也と翔一は、野次馬へ避難を伝えると共に、救急や消防の車が通れる様に道を作る。


 だが事は、そこで終わりにはならない。避難させようとした野次馬の奥から、爆発音が聞こえた。

 

「冬也! 野次馬の奥にもう一人、能力者だ! 不味いぞ、人が集まってる!」


 冬也は翔一に視線を軽く向け、野次馬を掻き分ける様に走り出す。その先では一人の男が暴れ、手に灯した炎を周囲にまき散らしていた。引火した住宅や植栽が有り、酷い火傷を負った人が、数人倒れている。

 男の顔には表情が無く、虚ろな目でただ周囲を破壊していた。


 冬也は男のまき散らす炎を掻い潜り、素早く接近し掌底を入れて気絶させる。冬也が男を気絶させた所で、警察と消防それに救急車が到着した。

 ペスカ達は警官達を補助する様に、野次馬の避難誘導を行う。

 

 警察官が能力者二人に手錠をかけ、連行しようとする。しかし直ぐに意識を取り戻した能力者の二人は、再び能力を使用し暴れ出す。能力を使われれば、例え警察官でも手に負えない。

 無力化させようと冬也が近づくのを、ペスカが制止する。そして、空を手招きして呼んだ。空は頷くと、男達に向かい歩き始める。

 空を止めようと、冬也が声をかける。しかし男たちの能力は、空に届く前に消えうせる。能力者二人に空が触れると、パキリと大きな音が鳴り響く。そして、男達は意識を失い倒れ伏した。


 意識を完全に失った能力者達が、救急車で運ばれていく。そして、怪我を負った野次馬も、続いて到着した救急車に運ばれていった。消防隊員が忙しなく動き回り、鎮火作業を行う。


 そして警察官は、居合わせたペスカ達に、任意同行を要求する。だが、ペスカはそれを辞退した。

 ペスカは直ぐに、遼太郎に電話をかけ事情を話す。そして繋がったスマートフォンを、警察官に渡す。遼太郎が代わりに事情を説明したのか、それとも何らか指示をしたのか迄はわからない。しかし、任意同行は回避された。

 自宅を出てから一時間も立たない内に、二件の事件が立て続けに起き、四人は疲れて座り込んだ。


「どうなってんだよ! いつからこの街はこんなに物騒になった!」

「冬也、おかしい。昨日まではこの街で、こんな事件は起こってない」

「ペスカちゃん達が、狙われてるなんて事は無いよね?」

「可能性は有るね。だとすると次は学校だったりして」


 ペスカの言葉で顔を青くした翔一が、急いでクラスメイトに電話を掛ける。直ぐに電話は繋がるが、通話口からは叫び声が聞こえて来た。

 

「ペスカちゃん、当りだ。学校で生徒が暴れている」


 ペスカ達は、学校に向かい走り出した。能力者が起こす事件は、これからペスカと冬也を中心に増加の一途を辿って行く。住宅街の事件は、ただの始まりに過ぎなかった。

ほのぼの展開が終わり、シリアスへと移行して行きます。

次回もお楽しみに。


2019.5.1校正。

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