246 大地の復興へ その3
ご閲覧ありがとうございます。
楽しんで頂けたら、幸いです。
魔獣、それも一つ目の巨人と、人間が共に働く。それは、一つの奇跡なのかもしれない。
確かにペスカと冬也が尽力があってこそ、出来上がった状況である。
しかしブルの存在が無くては、成し得ない事だろう。例え自衛の為でも、他者を傷付ける事を嫌がる、心優しきサイクロプスのブル。そんなブルだから、人々から恐れを忘れさせる事が出来たのだろう。
新たな世界の幕開けとしては、これ以上もない。そんな心温まる風景を、ペスカと冬也は顔を綻ばせて眺めていた。
とは言え、いつまでも眺めているだけにはいかない。まだ問題は山積みなのだから。
冬也は大声で、ブルに声を掛ける
「お~い、ブル! 俺達はもう行くからな!」
「もう行っちゃうのか? ゆっくりしてくと良いんだな」
「そういう訳にもいかねぇんだ。みんなと仲良くやれよ!」
「わかってるんだな。冬也、くれぐれも気をつけるんだな。何かあったら、必ずおでを呼ぶんだな。二人のあんな姿は、二度と見たくないんだな」
「大丈夫だブル。俺はもう負けたりしねぇ。それにお前が人間達と仲良くしてくれた方が、俺の力が増える。頼りにしてるぜブル」
「任せとくんだな」
そして、次は集まった人々にペスカが声を掛けた。
「皆さん。この子をよろしくお願いします。この子は良い子だし、きっと皆さんの役に立つでしょう。仲良くしてやって下さい」
先の演説で聞いた声が、辺りに響く。
エルラフィア王の呼びかけに応じ、英雄ペスカの力になると集まった、有志の人々である。その英雄ペスカを前に、首を横に振る者など居るはずがない。
口々にペスカを称える声が上がり、辺りは一時騒然となった。
ペスカの一声で、帝都周辺はあっという間に騒がしくなる。いたたまれなくなり、ペスカと冬也は姿を消した。
だが、その行為はペスカの神聖化に拍車をかける事になる。
既に大地母神すら凌駕する力を持ち始めたペスカと冬也。その二人が向かったのは、女神フィアーナの下である。
そして二人が辿り着いた先では、女神フィアーナを筆頭に、少ない神気を使い大地の復興に勤しむ神々の姿であった。
「凄い力を感じたんだけど、また何かやったのね、冬也君」
「大地を癒しただけだぞ。人聞き悪い言い方すんな!」
開口一番に告げられた言葉に、冬也は少し眉をひそめる。
そして、反撃とばかりにペスカは、女神フィアーナに言い放った。
「この様子じゃ、まだまだ時間が掛かりそうだね。お兄ちゃんの方が、よっぽど大規模な回復したんじゃない? 神様達には、もっと頑張って貰わないと困るなぁ~!」
「ペスカちゃん。いつからそんな嫌味を言う子になっちゃったの?」
女神フィアーナは、肩を竦める様な仕草をし、ペスカに言い返した。
アルキエルとの戦いで、神々には神気がほとんど残されていない。神々は消滅寸前の所で、この兄妹に救われたのだ。
大陸の復興に時間が掛かるのは、仕方がない事である。
今のラフィスフィア大陸では、ペスカの人気はうなぎ登り。既に神であるペスカにとっては、その人気は信仰と同義となり得る。
今いる神々よりも遥かに厚い信仰は、歴然とした力の差を生む。大地母神はチクリと言い返す事しか、出来ない現実であった。
「まぁ、上手くやってくれよお袋」
「わかってるわよ、冬也君。でも、今の私達には壊れた世界を、繋ぎ止める事しか出来ない。自分で言ってて、情けなくなってくるけどね」
「仕方ねぇよ。みんなが力を合わせる時だ。神だけが頑張れば良い時代は、終わったんだ。世界は、そこに住む奴らが何とかする。神々はその手助けをする、それだけで良い」
「そうね。あなた達を見ると、実感させられるわね。だけど・・・」
「そっちは、任せとけ。アルキエルの件と一緒に、俺とペスカで片づける」
「お願いね、冬也君。それにペスカちゃん」
「任せて下さい、フィアーナ様」
女神フィアーナと話し終えた二人は、再び転移する。その転移先では、更なる再会が待っていた。
復活を遂げた山の神達、女神ミュールの眷属神の面々。余りにもか弱い神気は、女神ミュール自体の神気が少ない故だろう。
そしてペスカと冬也を見るなり、山の神と風の女神、それに水の女神の三柱が駆け寄った。
「無事だったか。いやミュールに聞いて、知っておったがな。姿を見るまで安心出来んかった。良かった、本当に良かった」
「山さん。心配かけたな」
「そうだね、山さん。ごめんね」
「何を言っておる。助けられたのは儂等の方じゃろ? ありがとうな」
孫の無事を喜ぶおじいさんの様に、山の神は頬を緩ませる。互いの再会を喜ぶ様に、笑みを浮かべる中、風の女神の怒声が響く。
「あんた等、どれだけ心配したと思ってるんだい!」
「姐さん・・・。悪い、心配かけたな」
「まさかあんな事になるなんてさぁ。済まない、あんた等を巻き込んだ私の責任だ。本当に済まない」
「頭を上げて、姐さん。私も予想外だったもん。それに私達を巻き込んだのは、姐さんじゃなくてミュール様だし!」
怒声が一転し、涙声で頭を下げる風の神を、慌ててペスカが止める。風の女神の謝罪で、少し沈んだ雰囲気に変化を与えたのは、最後に声をかけた水の女神であった。
「でも、助けられたのは事実だよね。ありがとうペスカちゃん。それに冬也君」
「カーちゃん・・・。益々縮んだ? 再生に失敗したの?」
「カーちゃん言うな! なんか、私だけ扱い酷くない?」
「だって、ロリババアだし」
「実物とは初めて話すけど。あんた、けっこう残念な女神だな」
「私の感謝を返せ! お馬鹿さん達!」
ギャーギャーと喚きたてる水の女神。そのさまに、一同から少し笑いが起きる。
そして、ゆっくりと女神ミュールが、ペスカ達に近づき深々と頭を下げた。
「あんた等のおかげ、それは間違いないね。この大陸には、諍いが起きていない。この大陸にだけ、悪意が蔓延していない。あんた等のおかげだね。ありがとう」
まさか大地母神が、頭をさげるとは。しかも、大地母神の中でも好戦的な女神ミュールが。その姿は、山の神ら眷属達すら驚愕させた。
「ミュール。礼なら、ズマやノーヴェ達に言ってくれ。頑張ったのはあいつらで、俺達じゃねぇ」
「そうだよ、ミュール様。歯を食いしばって戦い抜いたのは、魔獣達だもんね。感謝してあげて下さいね」
「わかってるさ。それに、私らも考えを改めなきゃいけない。あの子達を見ると、良くわかるさ」
「子離れの時期なんですよ、きっと」
「ペスカ、上手く言ったつもりかい? でも、その通りかもしれないね」
女神ミュールは、ペスカの言葉に同意を示すと、一同から離れていった。
その後ろ姿を見送る様にする三柱の神々。そして、静かに山の神が口を開く。
「ペスカ、冬也。無理をするなとは言えん。それに儂らはこの通り弱っており、直接力を貸してやる事が出来ん。これから起きるのは、全て儂等の尻拭いじゃ。それでも、この世界の為に力を貸してくれるかのぅ?」
重々しく言葉を紡ぐ、山の神。しかし冬也は、そんな山の神に近づき、肩を軽く叩いた。
「山さん! 今更、馬鹿な事を言ってんじゃねぇよ! たりめぇだろが!」
「そうだよ、山さん。みんなは、頑張って大陸を再生して。私達は、好きにやるからさ」
「あぁ、済まんのぅ。平和になったら、必ず遊びに来い! 必ずじゃぞ!」
「全部終わったらな」
「うん。その時は、ブルも連れてきてあげるね、山さん」
山の神は、ただ頭を下げた。
この神々が居て、ズマを始め魔獣達が居る。ドラグスメリア大陸は、もう心配することはないだろう。
そしてペスカと冬也は、安堵した。
優しく送り出そうとする山の神、心配そうな表情を浮かべる風の女神、膨れっ面が治まらない水の女神。三柱の神に見送られ、ペスカと冬也は転移した。
行先は、未だ混乱の収まらないアンドロケイン大陸。最悪の事態を防ぐ為、世界を守る為、二人は世界を賭ける。
三つ子の魂百まで
この言葉は、性格は大人になっても変わらない、そんな意味ではありません。
主人公のみつこさんは、残機システムが採用されています。
そして、残機は百です。
その為、九十九回までは死んでも生き返ります。
ただし、百回目に死んだら、ゲームオーバーです。
出典:USOゲームズ、みつこ・ざ・おりんぴあ、キャラクター説明
2021年にUSOゲームズが、みつこ・ざ・おりんぴあというゲームを発売しました。
オリンピックの影響を受けて、開発に至ったというのは有名な話です。
そして、みつこ・ざ・おりんぴあは、死にゲーとしても大変有名なゲームです。
まぁね、わかってると思いますが、これも嘘ですよ。
次回もお楽しみに。
2019.10.29校正。




