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210 倒れゆく仲間達

ご閲覧ありがとうございます。

楽しんで頂けたら、幸いです。

 大陸東部の中心へ向かうペスカ達とは、別に戦いは激化していた。

 山の神は、北側の海岸沿いでモンスターを倒し続ける。クロノスは、東側の海岸沿いでモンスターに囲まれていた。

 

 問題は大陸だけではない。汚された海からも、モンスターが発生し始める。周辺海域もまた、邪神の領域になりつつあった。

 

 南側は、風の女神と土地神の集団が、大陸南部にはモンスターを出さない様に、壁の様に並びモンスター侵出を阻んでいた。

 西側は、水の女神が土地神を率いて、同様にモンスターの侵出を阻む。


 しかし、水の女神が率いる神々の集団は、風の女神達よりも数が少なく、カバー出来る範囲も限られる。水の女神達が守る範囲から漏れ出た間から、ダムが放流を行う様に、モンスターが流れていく。

 その溢れたモンスターに対峙していたのは、魔獣軍団であった。浄化魔法を吸収して、より強力になったモンスターを討伐する。

 それは、神に比べて遥かに力の弱い魔獣達には、至難の業であった。

 

 それでも、戦うと決めた。

 大陸を仲間を守る、そんな意思の下で魔獣軍団は抗い続けた。しかし、倒しても減る気配の無い戦いは、魔獣軍団の首をじわじわと締め上げる。

 特に前線で戦う四大魔獣の働きは、顕著であった。


 エンシェントドラゴンや眷属ドラゴン達が、多少なりとも数を減らす。だが、凄まじい勢いで攻勢をかけるモンスター達を、前線で受け止める。

 それは並大抵の事ではない。

 

 大陸で随一の巨体を誇るベヒモスは、その体で壁となる。

 どれだけ傷がついても、揺るがない壁。そして広範囲の魔法を放ち、前方のモンスターに攻撃を続ける。

 しかし、傷は増え続けおびただしい血が流れる。それはベヒモスを体力を、著しく奪う。


 広範囲の魔法を連続して使ったベヒモスは、マナの枯渇も早い。

 酷い傷とマナの枯渇、やがてベヒモスは膝をつく。蹲るだけでも、小高い山の様なベヒモスの体躯。

 例えこのまま死しても、足止めになるなら。ベヒモスは、その場を動かずにただじっと耐えた。


 ベヒモスの体に守られながら、フェンリルとグリフォンは鋭い爪を振るっていた。

 ベヒモスが己を犠牲にしても守ろうとした覚悟を、痛いほどに感じていたフェンリルとグリフォンは、慟哭にも似た咆哮を上げて爪を振るう。

 ヒュドラは、自身の生命力を削る様に、全力以上のブレスを放った。

 

 ベヒモスが膝を突いた時点で、前線が瓦解するのはわかっていた。ミューモとノーヴェは、全軍の撤退を命じる。

 しかし、誰も撤退の命令に従う者はいなかった。


「早く撤退だ! このままでは全滅するぞ! フェンリル、グリフォン、ヒュドラ。お前らでベヒモスを支えて逃げろ。時間は俺が稼ぐ」


 ミューモの怒声に、決して首を縦に振らない四大魔獣。そして、倒れて意識が朦朧としていたベヒモスが静かに口を開く。


「駄目だミューモ。我らは誇り高きドラグスメリアの魔獣。敵に背を向ける位なら死を選ぶ! それに、我らはあなたに牙を剥いた。これは償いだ」

「何を言っているベヒモス! 馬鹿を言うな! お前らを死なせるわけにはいかんのだ!」


 ベヒモスを説得しようと、声を荒げるミューモ。しかし、ベヒモスは頑として首を縦に振らない。そして、フェンリル、グリフォン、ヒュドラがそれぞれの決意を口にする。


「くどいぞミューモ! 我らの誇りを踏みにじるな! 我らは禁忌を犯した身。その償いはここで果たす!」

「元より捨てた命、最後は仲間の為に使えるなら本望だ!」

「頼むミューモ。最後まで戦わせてくれ! あのお二方や女神様方は、今も戦っておられるのだろう? 何故、我らが引かねばならぬ。頼むミューモ、この命が尽きるまで仲間を守らせてくれ!」


 力が及ばない状況で、ミューモの内には忸怩たる思いが満ちていた。

 ここでも失うのか。なぜ、こんなにも高潔な奴らが命を落とさねばならない。冬也に言われた通り、これでは自分は足手纏いのままだ。

 ミューモは激しく咆哮する。


「くそぉぉぉぉぉぉぉ! ぐあぁぁぁぁぁぁ!」


 ミューモは、ベヒモス達の気持ちが、痛い程に理解出来た。

 操られて大地を穢した。ベヒモス達が、決して望まぬ事を、邪悪はさせたのだ。そして、自分はそれを止める事が出来なかった。

 悔いる必要は無い。だけど、悔恨の想いが、彼らの心を縛る。


 だからといって、命を賭ける必要が何処にある。

 禁忌を犯す、罪を償う、馬鹿な事を考えるな。償いなら、俺がする。その為に必要な事は、何でもやる。

 お前達が仲間を守ろうとするのと同じ。俺は、お前達を失いたくない。落として良い命など、これっぽっちも無い。

 

「ミューモ、誰も死なせんよ」

「我らの命はペスカ様と冬也様に託した。しかしお二方の意思は、命を捨てろなんて生易しいものではない」


 咆哮を上げるミューモに声をかけたのは、テュホンとユミル。そして、巨人族のリーダーである二体が、巨人達を連れて最前線へ出た。


 魔攻砲を放ち続け、あっという間にマナが枯渇し始めた巨人達は、一部の巨人を除き魔攻砲を撃てなくなっていた。

 テュホンはサイクロプス達に、ベヒモスの治療に取り掛狩る様に指示をする。ベヒモスの背後で、サイクロプスの集団が、僅かに残ったマナを振り絞り、治療魔法をかける。


 マナが枯渇した巨人達にとって、魔攻砲は鉄の筒となり果てる。それでも巨大な鉄の武器だ。テュホンとユミル、それにアルゴスが魔攻砲を振り回して、モンスターを倒す。

 魔獣軍団の前線では、乱戦状態になっていた。

 

 四大魔獣と巨人達が入り乱れて戦う中、ミューモはこれまで以上に、激しいブレスを吐く。触発される様にノーヴェや眷属ドラゴンが、限界を超えようと力を行使し続けた。

 

 そこまでしても、モンスターの数を減らす事が出来ない。

 

 最前線で炎の剣レーヴァテインを振るっていたスルトが、深い傷を受けて膝を突く。それでも、スルトは襲いかかるモンスターを切り飛ばす。

 しかし、限界は訪れる。いや、限界はとっくに訪れていた。スルトは、最前線で武器を構えたまま、意識を失った。


 複数の目を持つアルゴスでも、腕は二本しかない。全方位を囲まれて攻撃を受ければ、耐えきる事は出来ない。

 激しいモンスターの攻撃を受け続けて、倒れて意識を失う。


 四大魔獣が止められないモンスターを、力の劣る巨人達が止められるはずがない。スルト、アルゴスに続いて、巨人の守護者アトラスが倒れる。

  

 前線が崩れ始める。

 均衡はモンスター側の優勢に傾き、凶悪なモンスター達が魔獣達を更に苦しめる。テュホンとユミルは、手分けをして倒れた巨人達を、ベヒモスの背後に隠す。

 しかし、この戦場で安全な場所は、どこにもない。テュホンとユミルは懸命に、治療を続けるサイクロプスや、倒れた巨人達を守る。

 

 誰もが全力だった。誰もが命がけだった。

 それでも届かないものがあった。


 やがてフェンリルが倒れ、グリフォンが血を吐き、ヒュドラが意識を失う。魔の手は巨人達にも迫る。テュホンは膨大な血を流し、ユミルは四肢を失う。

 サイクロプス達は、一体、また一体とモンスターの前に、倒れていった。


 ミューモやノーヴェのブレスでも、支えきれない。魔獣軍団の前線は、完全に瓦解した。

本当に申し訳ありません。

珠さんが、こんなにぶっ壊れてなければ、更新頻度を上げられたのに。

それと、校正のペースも上げられた。


珠さんの活動限界は、一日数時間って所です。

一時間にも満たない日も有ります。

言い訳がましくて、すみません。

温かい目で、見守って頂けると助かります。


次回もお楽しみに。

2019.9.17校正。


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