表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹と歩く、異世界探訪記  作者: 東郷 珠(サークル珠道)
混乱のドラゴンとゴブリンの進撃
187/418

183 魔獣軍団と総司令官ペスカ

ご閲覧ありがとうございます。

楽しんで頂けたら、幸いです。

「じゃあ行くんだな」

「気を付けるんじゃぞブル」

「わかってるんだな。山さんこそ、油断は禁物なんだな」

「わかっとるよ。必ず帰って来るんじゃぞ」

「大丈夫なんだな。寂しがらずに待っていると良いんだな」


 ブルと山の神は、笑顔で挨拶を交わした。

 ブルは争う事を好まない。短い付き合いではあるが、山の神は純粋で心優しいブルに親愛の情を抱いていた。それ故に、ブルを憂いた。


 どうか、この優しき子に災い無きことを。

 

 対するブルは、山の神が隣に居る生活が、当たり前の様に感じていた。ここが自分の帰る場所。そして山の神を、家族の様に想っていた。


 僅かな会話の中に籠められた哀愁は、死地へ赴く子供を送り出す親の如く、親を置いて旅立つ子供の如く。確かめ合う様に重ね合う視線は、互いの想いを伝えあう。

 そんな別れの時を、無粋に叩き割る様な声が響く。


「いつまでそうしている。急ぐぞ貴様のせいで荷物が増えたのだ。運ぶ我が身も考えよ!」

「焦っちゃ駄目なんだな」

「何を言っておる! それにこの山の様な荷物は何だ!」


 怒鳴る様に、声を荒げるドラゴン。その脇には大きな木桶が三つと、中には山の様に積まれた果物があった。

 

「絶対に必要なんだな。貴重な果物だから、落としたら駄目なんだな」


 木桶には運搬用の幅広のベルトらしき物が取り付けられている。ドラゴンは、木桶と魔攻砲を十門、加えて巨体のブルをどう運ぼうか思案していた。

 一度引き受けた任務をやり遂げられなくては、スールの眷属としての沽券に関わる。思案の末、ブルが魔攻砲を全て抱え、そのブルを背に乗せた上、ベルトを掴んで運ぶ事に決めた。


 ブルだけでもかなりの重量なのだ。その上、大量の荷物を抱えた飛行である。ドラゴンは、大きく息を吐きマナを集中させる。

 そして、慎重に空中での姿勢を制御しながら、ゆっくりと浮かんでいく。


「遅いんだな」

「うるさい! 喋るな、動くな!」


 ブルを黙らせつつ、ドラゴンは飛んだ。ペスカ達の待つ大陸西部へ。


 ☆ ☆ ☆


 一方、ズマ率いるゴブリン軍団は、エレナと共にドラゴンの谷へ辿り着いた。

 道中での度重なる戦い、そして期限を守る為の強行軍で、皆は疲れ果てていた。その為ズマは、全軍を休ませる。

 しかし、皆が腰を下ろし休息を取り始めた所に、大きな翼をはためかせて、ドラゴンがゴブリン軍団が降り立った。

   

「休んでいる暇は無いぞ。お前達は、これから北へ向かうのだ」


 現れたのは、谷を守っていたスールの眷属である。そして、威圧する様に言い放つ。しかしその言葉に異を唱え、敢然と立ち向かったのはエレナであった。


「ふざけんニャ! みんな頑張って疲れてるニャ! それでも冬也との約束を守ったニャ! お前らなんて、もう怖くないニャ! 舐めた事を言ってると、痛い目にあわすニャ!」

「矮小な存在よ。我が主の意志を妨げるなら、死して償え」

「上から抑えつけるだけで、誰もが言う事を聞くと思うニャ! お前らみたいな役立たずより、こいつ等の方が偉いニャ! 私はこいつ等を守るニャ!」


 睨み合うドラゴンとエレナ。少し前までドラゴンに怯えていたエレナとは、明らかに異なっていた。

 エレナはこれまでの日々で、ゴブリン達に友誼の様な感情を抱いていた。共に苦難を乗り越えた仲間達が、蔑まれ顎で使われる事に我慢が出来なかった。


「至高なるドラゴンよ。我らはペスカ殿と冬也殿のご意志の下で、ここまで辿り着いた。ここまでの戦いで皆、疲れ果てている。大陸の異常には、我らとて気が付いている。しかし、全力が出せずにこれからの戦いが生き残れようか。ペスカ殿ならこう言うであろう。急いで足元が揺らいでは、本懐は果たせないと」


 エレナに続いて、ズマも立ち上がり、ドラゴンに言い放つ。

 ズマは既に一軍の将である。これから死地に向かう仲間達を、むざむざ殺させる訳にはいかない。

 ズマの意地が、ドラゴンへの恐怖を克服した。


「そう言う事ニャ! お前も冬也の命令で動いているのは、感づいてるニャ。だから、私達にご飯を寄こすニャ! 肉が良いニャ!」


 フンとばかりに小さい胸を張るエレナ。その姿に、流石のズマも目を見開いて、エレナを見やる。ドラゴンは、まさかの要求に唖然とし、口を開いたままで固まった。


「聞こえて無いのかニャ? 肉を寄こせって言ってるニャ。肉だニャ、肉。肉が食べたいニャ!」


 ズマの言葉は尤もである。それには返す言葉も無い。しかも、冬也とペスカの名前を出されれば、引き下がるしかない。しかし、エレナの要求は腹に据えかねる。


「猫の分際で生意気な!」


 ドラゴンが怒りを露わにした瞬間、腰を下ろしていた魔獣達が一斉に立ち上がり、エレナとズマの周囲を固めた。命がけでボスを守ろうとするかの様に。


 ドラゴンは驚きを感じていた。

 大陸南部で起きている事態を、スールから聞いていた。しかし、たかが亜人の小娘と最弱の魔獣が、本当に南部の魔獣達を統率すると、信じてはいなかった


 主の命令である、しかも主の命を救い、眷属とした神の意向もある。目の前の連中を、無下に扱う事は出来ない。

 プライドを傷つけられ、腹立たしく感じながらも、使命故に手が出せない。そんな葛藤をするドラゴンに対し、ズマは諫める様に、静かに言葉を紡いだ。


「だが食料は戦略上、最も重要である。おわかりでしょう? 我らは強行軍故、補給が出来ていない。申し訳ないが、分けては頂け無いでしょうか。至高のドラゴンよ」


 ズマの言葉に、ドラゴンは大きな溜息をつく。そして要求に同意し、備蓄の食糧を分け与え、休息を取る場所を提供した。


 また、ドラゴンの谷の少し北では、大陸北部と西部から逃げ出した魔獣達が、ノーヴェの眷属とスールの眷属の指示で、隊の編成を行っていた。

 逃走中に傷を負った魔獣の手当ては、終了している。後は、ゴブリン軍団が北上するのを待ち、合流した後に進軍するだけである。


 南部の魔獣統率に成功したゴブリン軍団。更に北部や西部の魔獣を加えれば、ドラグスメリア大陸でも類を見ない一大勢力となる。

 大陸北部を解放する為の戦力は、着々と整いつつあった。


 ☆ ☆ ☆

 

 そして、本隊となるだろうペスカ達は、作戦会議を開いていた。

 ペスカと冬也を中心に、スール、ミューモ、テュホンが囲む。そして風の女神は、ペスカ達と少し離れた場所に腰を下ろし、話しを聞いていた。


「あのね。大陸北部には、黒いスライムが溢れてる。黒いスライムには、原初のドラゴンでもブレスが利かないらしいの」


 ドラゴンのブレスが利かない。それは、ミューモにとって、最大の武器を奪われたのと同義。その言葉を聞いて、ミューモは漏らす様に呟いた。


「そうでしたか。だから冬也様はあれだけ」

「あぁ? 何か言ったか糞ドラゴン?」

「いえ冬也様。それでペスカ様、如何されるのですか? 我らのブレスが利かないなら、他の魔獣では打つ手が有りません」

「この戦いの鍵になるのは、ゴブリン軍団とあんた達巨人よ」

「我々ですか?」

 

 テュホンは少し驚いた様な声を上げた。


「サイクロプスのブルって知ってる?」

「えぇ。南へ旅立った我が同胞です。あいつが何か?」

「ブルが対抗できる武器を、ここまで運んでくれるはずなの」

「あいつがですか?」

「そう。それが届き次第、巨人達に持たせて進軍を開始する。予定通りならドラゴンの谷に、ゴブリンの軍団が集まっているはず。進軍は南側と同時に行う。ミューモ、あんたの眷属は動ける?」


 ペスカはミューモに視線を向ける。そしてミューモは、軽く頷いてペスカに答えた。


「そろそろ目を覚ましても良い頃かと」

「なら、あんたの眷属を連絡係に使うからね」

「畏まりました、ペスカ様」

「この作戦は、西と南で同時に行うのが重要なんだよ。だから迅速な連絡が大事。期待してるよミューモ」

「お任せください、ペスカ様」

「出来たら何体か、ブルを迎えに行ってもらえる?」

「直ぐに手配いたします」


 ミューモは自分の眷属を目覚めさせるために、自分の住処に向い飛び立つ。続いてペスカはスールに視線を向けた。


「スール、あんたはこれから直ぐに飛んで、ノーヴェと合流する事。あんたの眷属も回収して来なさい」

「承知しましたペスカ様。西と同じ状況なら、いま水の女神を目覚めさせるのは、厄介な事になりますしな」

「そう言う事。姐さんと同じ様な結界を、水の女神が張っているなら、あんたの眷属は結界に干渉出来ないはず。一応は万が一の事も考えて、退避するのがベターだよ」

「回収の後は、私もスライム達を浄化って事ですな」

「良くわかってるね。頼むね、スール」

「お任せくださいペスカ様。では主、行って参ります」

「おう、気をつけてな」


 スールはペスカと冬也に頭を下げた後に、飛び立っていった。

 最後にペスカは、風の女神に視線を向けた。


「姐さん。一連の騒動が、全て反フィアーナ派の仕業。新たに生まれた邪神が、ロメリアの残滓から生まれたとすれば、必ず過去を踏襲するはずだよ」


 風の女神は、メルドマリューネで起きた出来事を思い出した。そして、少しぞっとする様な感覚を覚えた。

 ペスカが示唆しているのは、モンスターの大量発生、死んだ魔獣のゾンビ化であろう。

 大陸の東は、既に邪神の領域となっている。大陸の北は、黒いスライムで溢れている。大量の魔獣が既に命を落としている状況でゾンビ化が行われたら、幾ら戦い慣れたドラグスメリア大陸の魔獣達でも、ひとたまりも有るまい。

 それこそ大陸の終わりだ。


「そうならない為の、秩序ある軍隊なんだよ。本番は、黒いスライムの浄化以降。姐さんは、山さんと一緒にいつでも戦える様に、神気を溜めといて!」

「山さん? 誰だい?」

「あれ? 通じない? 山さんは、山の神の事だよ」

「あぁ、ベオログの事かい。わかったよ。にしても、あんたは神に仇名を付けるなんて」


 少し溜息を突きながらも、風の神は頷いた。

 こうして、大陸北部の解放をかけたペスカ達の戦いが、いま始まろうとしていた。

糞ぼろな、珠さんの体。

悪い所を数えれば、きりが無いです。

生活上、すっごく困るのはさておき、地味に困る事が有ります。


それは耳鳴りです。

歯医者のドリル音が、常時鳴っているので、人の声が聞き取り辛い時があります。

その半面で助かるのは、歯医者に行っても、ドリル音が気にならない事でしょうね。

聞きなれてますから。


普通のデスクでは、電話は左側に設置してあります。

私の場合、耳鳴りのせいで左耳が聞き取り辛いので、電話を右側に設置します。

私は右利きですから、受話器を右手で取ると、メモが取れない。

仕方ないから、受話器を左手で取って右耳に当てる、不格好ですがね。

それと、左側から声を掛けられると、反応出来ない時が有る。


甲高い音は、長年付き合ってると慣れるんです。

だけど、その弊害による小さな問題が、うっとおしかったりします。


それと、耳鳴りでお困りの方に、悲しいお知らせです。

耳鳴りは治らない。私は、何人もの医者に言われました。

それと加齢によって、耳鳴りは酷くなるらしいです。

これも、医者曰くですけど。


そして、私の個人的な感想は、悩むより受け入れる。

だって、その方が建設的でしょ?

簡単に言いましたけど、実はすっごく大変です。

24時間、甲高いドリル音が鳴っていたら、眠れるはず無いですし、気が狂いそうになりますからね。


次回もお楽しみに。

2019.8.17校正。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ