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別冊 当て馬ならし  作者: 糸以聿伽
裏話し
2/11

第二話 Infinity mana stom towards honey

「ものすごい剣幕だったんですよ」

ハトナがニッコリしながら言った。


パーティーの準備はベルの支度はタシーが担当して、私をハトナがしてくれている。


タシーとハトナは、早速意気投合して連携が凄い。


なんにも考えないでも事が運んでいく。

ベルが『もう、みんなおねぇちゃんを甘やかし過ぎ』と膨れてた。


ラルと思いを交わした事をハトナに伝える。

ハトナは『あれ見た後に今更…』という感じで苦笑していたけど、私の髪をストレートに伸ばしながら


「以前からこうなってくださったらいいなと思っておりました」

と言ってくれた。


これまた涙腺にダイレクトにくる…嬉しくてうるうるしちゃって…

メイクまえだから目元をこすりすぎないように涙をふく。


私は、自分の気持ちに気が付くのが遅かったけど、もしかして態度に出てたのかな?と思って聞いてみたら、


「いえいえ、ラル様のお気持ちが叶えばいいなと、そう思っておりました」


おいおいおーーーい、ハトナさん結構な大暴露ですがぁ?

ラルに悪い…けど…聞きたいからごめん!!

「というと?」

目がキラキラしちゃう。


あのクール眼鏡背後取るのダイスキー王子がどんな状態だったのか聞きたいぃききたーーい♪


ハトナは基礎化粧をして私の顔をマッサージしながら話し出した。


「体調不良でクラァス様がお休みになっていた時、朝稽古の丘にこっそりいらっしゃってました」

ハトナは、ラルと朝稽古した私の話を聞いていたので、朝稽古の丘に行って誰かいたら説明しようと思ったらしい。


そこには誰もいなかったのだけど、帰り際、あの夜色のローブが書庫に引き上げていくのを見たという。

「あれは、クラァス様が来たときに、こっそり警護するつもりだったのだと思います」

あっ、あの一睡もできなかったあの時か。

…そっか…顔合わせづらかったのに…優しいな。


でも…あの時は、まだこんなになるなんて思わなくて…

にやにや…あとでお礼言っておこう♪


「あとは、夕食後、すこし御酔いになられて早めにお席を立たれた日がありましたでしょ?」

おう、『俺はあんた達を信用していない』って言われた日だ…


「後を追って心配そうにそっと出て行かれてました。」

えええええ!心配してくれてたの?

あぁ…心配してくれてたのに…裏切ってたのかぁ…申し訳ない。


そんなこんなで、ラルはハトナ曰く"ものすごく私を意識していた"のだという。


やばい…顔がにやけちゃう。

そんな顔のマッサージがおわってメイクに入る。


ハトナはゆったりとした口調で真面目に語りだす。

「そして、私がラル様の想いが叶ったらいいと強く思ったのは…」

ジフェルに私が連れ去られた時の事だという。


手紙が功を奏してジフェルの容疑が固まった。

自室を探ると、研究所へのポータルが開いており、確実にジフェルが内密に大きな仕掛けをしている事が分かった。


結局、アンチマジックフィールドが展開していたため、こちらでも大規模な魔術を仕掛けてジフェルの出方待つことに決定した。


それをラルが私に直接伝えようとしてくれたらしい。


でも、部屋には私はいない、探し回って昼食のバスケットが魔術師塔の近くに落ちてるのを見つけたハトナが不安を抱えてラルに相談したという。


「お顔が真っ青になられて、至急、森の中の隠された洞窟へ兵を派遣するように王に掛け合っていらっしゃいました。」

それでも、他国の姫もいる中、大規模な兵を動かすわけにもいかない。

対応がなかなか決まらず、ラルはイライラしていた。


その時である、魔術師塔の中庭付近の地面が光に包まれた。


ラルとハトナは、兵の派遣の結果報告を魔術師塔でまっていたのでその異変をいち早く感知した。


「光る地面を前に、ラル様が『竜が…飛んでいく』と言って空を見上げたんです」

それは、ファルゴアの竜が私を助けてくれた時の事だ。

ベルと目を合わせてうなずきあう。


「光が消えた後、ラル様はすごい勢いで魔法陣を展開されました。」


中庭全体に広がる魔法陣の数は大小合わせて10個を超えていたらしい。

いろんな魔法を一気に展開し、私の場所をさぐり、そこに空間移動するための術式を完成させる。


魔法陣の同時展開の魔力消費は尋常ではない。

ラルでなければ、即座に昏倒する量の魔力があたりを包む。


一気に流れ込む情報量も半端ではい。

でもそれをラルはやってのけた。


さらに彼は無茶をした。

空間移動は記憶に由来する。記憶された場所を正確に思い描くことでその場に移動する。目視できれば簡単であるが、


それを、ラルは人物を目標に飛ぶ最も高度な空間移動をしようとしていた。


それは相手の事を強く想い、正確にその人物を思い描き、自分をその人物のいる空間に着地しなければ時空に飲まれる。


のまれれば、さすがにラルと言えど生きてはいられない。


危険な副作用を待つ術式だった。


そんな中、異常に気が付いたアル王子が中庭に駆けつけた。


兵を今すぐ手配したから、危険を冒すなという忠告にラルが切れた。

「兄貴や親父がこの国を守るなら、俺はアイツを守る!」

そう、叫んで魔法陣の光の中に消えていった。


「ものすごい剣幕だったんです。必死で…」

話終わったハトナはにっこり笑った。

そして私の顔を鏡越しに見て

「泣かれてはメイクがおちてしまいます。」

優しく言ってティッシュで涙を吸い取ってくれる。


私…そんなに深く思ってもらえてたんだ…

あの時、背中に感じた温もりが蘇って幸せに包まれた。


私は、ラルに見つけてもらえた。

どんなに離れてもいても…貴方は私の傍に命の危険を冒してでも来てくれる…


時が来たんだね。お母様…


メイクも終わり今夜のドレスに身を包む。


さらに、今日のラルは、深い青のシャツに黒の燕尾服だという情報をハトナが教えてくれる。

「色物のシャツを着る時にいつも文句を言われるんですが、今日は上機嫌で文句ひとつ言わずメイドに支度させてるそうです。」

好き勝手に着飾らせてくれるラルは珍しいらしく、メイドたちが浮足立ってるという。


そんなラルに合わせるように私も深い青のロングドレスを纏う。


胸が隠れるホルタネックで鎖骨部分までしっかり布が来ている。

ラインもセクシーより落ち着いたプリンセスライン。

これに、黒のオーガンジーストールを合わせる。

これには黒と青のストーンがちりばめられてる。


そして仕上げに、ストレートの下ろした銀の髪に、青い宝石と黒い羽で翼を模した形のカチューシャを頭に飾る。

「王妃様が是非にということで、こちらをセットさせていただきます」

と、丁寧につけてくれる。


王妃様の瞳の色でもあり、愛しいラルの瞳の色でもある。

そんな宝石を冠することを王妃様が薦めてくれた。

うれしい…


「おねぇちゃんすごい綺麗だよ♪」


ピンクの下地の透け感が可愛いAラインの白のシフォンドレスをきて髪の毛はふわふわにまいてアップしているベルが声をかけてくる。


「ベルもかわいいよ。」

えへへ♪と笑うベルは御人形さんの様だった。


準備完了である!

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